見出し画像

イノセント・デイズ/早見和真

出会ってしまった。私の人生においてこの作品はずっと心のどこかにあり続けるだろう。

画像1

読み始めたときは、家庭環境や友人、社会に恵まれない女性が元恋人を恨み事件を起こした。その女性の過去を綴っていく作品なんだなと思っていた。

裁判で死刑の判決を言い渡された内容が章になっており、その時関わった人物から当時の幸乃がどういう子供だったのか、家庭だったのか、性格だったのかが語られる。

ニュースで犯人の写真を観ると人はよく「犯罪起こしそうな顔だよね」という。しかし、それは犯罪を起こしたという情報と一緒にみた写真だから(もしくはメディアがそういう顔の写真を選んでいる)ではないかと日ごろ思っていた。

何が、誰が正しくて、どの証拠をもって人を判断するのか。表面上だけではまったく見えてこない真実にハラハラしながらも読み進めた。

個人的にキーポイントとなるのは、幸乃本人の視点で書かれていることが極端に少ないことだと思う。ミステリアスが増すし、本当はどう思っているのか、本当に犯人なの?救うことはできないの?というドキドキ感が読みすすめるごとに増す。

最後まであきらめない人達と自分の人生に幕を閉じたい幸乃。最後の方のシーンでは彼女が強い意志、根性を持って死に向かおうとする姿。

全てが衝撃的で読み終わった後のやるせなさや、穴が空いた感じがしたのは私だけではないと思う。

小さなすれ違い、ほんのちょっとの優しさ、手を伸ばすことができる勇気。日々見過ごしていることがこんなにも大ごとになってしまうという怖さを感じつつも、1人がほんのちょっと手を貸すことをみんながすれば防げる事件や孤独もたくさんあることを改めて教えていただいた気がした。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?