見出し画像

ラム&コーク/東山彰良

東山彰良さんの小説はたしかこれが3冊目。

初めて読んだのは「流」次は「ラブコメの法則」そして、今回は「ラム&コーク」を読み終えた。

私が読んだ3冊すべてに通じるのはバックサウンド。実際に自分が体験しないであろう出来事(殺人や闇との関わり)が起き、現実にありえないとわかりつつもシーンの一つ一つから情景、さらに音まで聞こえてくるのは何故だろう。

私は小説を読むと登場人物が勝手に頭の中で会話を繰り広げるタイプの読者であるが、音(生活音や扉の閉まる音、銃声までも)頭の中に何故か浮かぶのは東山さんの小説のみ。特別に擬音が入っているわけでもないのになぜか音が浮かぶ。そのため、読み切った後は達成感や爽快感を感じる。

画像1

さて、ラム&コークの文庫本を読み終えたのだが、キョーレツで爽快なアクション小説だった。登場人物が個性豊かなのはいつもだが、ヒロイン?である翔子の祖父の隠された趣味や礼が刑務所で過ごした時のこと、中国人2人組の母国に対しての描写、台湾人VS中国人(日本人VS中国人然り)など、読んでいてなんだか大丈夫なのかな?と心配になってしまうくらい切り口が大胆であった。けれども、嫌味や読んでいて嫌な気分にならない。なぜかはわからないけど、読んでいて爽快なのだ。

何気なく使われている言葉や登場人物それぞれの昔のエピソードがちゃんと後で効いてくるのは流石。例えばR&Cやショコラ、石に文字を刻むこと、シェルのガソリンスタンドなど。何気ないワンシーンだけれどもしっかりと後からもエピソードが付いてくることでなんだかクスリと笑ってしまう。

そして、こんなことを言うのもあれだが、文庫版の著者あとがきが一番面白かったかもしれない。小説を書くようになって一番良かったことをそれまで使い途のなかった記憶や経験が息を吹き返したことだと思うと始まるあとがきは例えを出した瞬間から様子がおかしく、声を出して笑った。まぁ、楽しんでくれ。と締めるあとがきも含めて豪快で爽快な作品!


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?