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#17 「Apple PayからFelica系決済サービスが消える日」をよんで

話題になったこちらの記事について触れてみます。

すっごく簡単にいうと、現状Apple Payでカードを登録すると必ずiDかQUICPay(※カード会社による)が発行されるところ、これをAppleが任意化する方針だ、というものです。

Apple Payは始まったのは2016年で、一部の国際ブランドとiD/QUICPayから開始されたことやトークナイゼーションの技術が使われているのはこちらでも紹介しました。

日本のApple Payが始まる前から海外では国際ブランドの非接触EMV(Type A/Bのタッチ決済)が始まっていて当然Apple Payもこの方式で始まっていました。ところが日本にはSuicaを始めとするFelica仕様(Type F)の非接触決済が導入されていて、国際ブランドのタッチ決済が使える決済端末はありませんでした。

そのため、Appleは日本におけるApple PayにおいてはType Fを開放するという苦渋の選択をしてサービス開始したものと思われます。

そのため、AppleのWalletアプリからカード番号を見てみると、物理的カード(=実際のカード番号)に対して、Type Fのトークンと、Type A/Bのトークンが2つが発行されていることがわかります(下図②)。

Walletアプリのカード番号画面

また、トークンはカード発行会社(ISS)のTSPによって発行されることを説明しましたが、国際ブランド自身もTSPサービスをISS向けに提供しており、Apple Payの開始当初、

「自社ブランドのトークンは、自社が提供するTSPサービスで発行することしか認めない」

とした国際ブランドのトークンが発行されないこともあり、①のようにType Fのトークンしか発行されていない場合もあります。

よってApple Payは「Type Fのみ発行」もしくは「Type F & Type A/Bの二つを発行」のどちらか、という仕様になっています(Type Fは必須)。

Apple PayのType F対応の選択にはかなり驚いたことを覚えてますが、日本において国際ブランドのタッチ決済のインフラが整うのを待つよりもType Fに対応することのほうが早々のリリースが可能なことは明らかでした。

ただしこの選択は、おサイフケータイ陣営(Felica)にとってはかなりの追い風になって、国内に幅広くType Fを広めて、結果国際標準である国際ブランドのタッチ決済の普及を遅らせたという見方もあります。

私はそもそも現金主義のこの国で、いくら国際ブランドがタッチ決済の導入をルール上必須化してもいきなり普及させるのは難しかったんではと思っていて、まずはプリペイド方式のSuicaやポストペイ方式のiD/QUICPayなどの元々聴き馴染みのある国内電子マネーでキャッシュレスに触れさせたことで、タッチ決済がようやくここまで普及することができたのではと思ったりもします。

ちょっと回り道をして時間はかかったものの、国際ブランドはしたたかに国内のカード会社へISS向けにはカードへのタッチ決済の搭載と、ACQ向けには決済端末へのタッチ決済対応をサポートし、CMなどで広く啓蒙活動することでインフラを整えてきました。

※カード会社の二つの顔(ISS /ACQ)については以下で説明しました

こうしてAppleはやっと国内電子マネーに頼らず、国際標準のタッチ決済のみで決済サービスを展開できる、という本来あるべき姿だった判断に至ったものかと思います。時は満ちたとでも言うべきか。

国際ブランドのタッチ決済は、さらにインバウンド対応という追い風に乗り改札機での利用(Transit利用)の風穴を開けつつありさらなる普及が見込まれます。すぐに交通系電子マネーがなくなることはないでしょうが、今後の国内電子マネーのあり方は気になるところです。

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