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第6章 科研費を獲得する−科研費はコンペである(2)科研費に採択されるための業績の作り方

科研費に採択される計画調書を書くために必要な項目として、「応募者の研究遂行能力及び研究環境」において「これまでの研究活動」を記入する欄があります。

「これまでの研究活動」には、研究代表者(研究分担者がいる場合は研究分担者)の研究論文リストを記載します。

ここで注意すべき点は、研究計画に関連のある論文かつなるべく新しい論文のタイトルを記載するということです。

研究分担者がいない場合は15点程度、研究分担者が2 人の場合は研究代表者7〜8点、研究分担者各3〜4点程度の研究論文のタイトルを記入します。

論文リストに記載する際、研究計画に関連する内容であることを最優先に、なるべく新しい論文を記入するようにします。

いずれにしても、採択される科研費計画調書に書くためには、研究計画に関連を持つ論文を一定本数持っていることが必要だと思います。

それでは、論文はどのように生み出せば良いのでしょうか。

第5章 「好きなことを仕事に」上級編−アカデミックポストを獲得する(1)大学院に進学して修士論文・博士論文を書く でも書きましたが、論文の書き方は基本的には、次のステップで進みます。

①仮説の設定(=想定される仮の答え)(零)「不採算路線の存続が実現した地域は、市民による存続運動が行われている」

②研究上の問い(リサーチクエスチョン)の設定:(例)「市民による存続運動が展開された地域での鉄道の存続率は?」

③文献収集・調査・読解:鉄道存続過程を研究した書籍や論文、報告書、新聞・雑誌記事などを収集・調査し、読み解く

④フィールド調査:現地視察、および鉄道存続が問題となっている地域を訪問し、鉄道事業者、その他の交通事業者、行政、地域住民、活動団体などに対するヒアリング調査を実施する

⑤仮説検証:③と④の結果を踏まえて、仮説の正しさを検証します。なお仮説検証の過程では、③と④に立ち返り、③と④は何度も往復します。

⑥結論の執筆:⑤の結果を踏まえて、結論を執筆します。

⑦序論の執筆:序論は本文の中で一番最後に執筆します。何もない状態で論文の内容を見通す機能を持つ序論は書けません。論文全体が固まってから書くのが普通です。

⑧参考文献リストの執筆:論文執筆に使用した参考文献の一覧を作成します。研究は先行研究(既往研究)の成果を踏まえて、新たな知見を付け加える作業です。他者の成果を借りたことを示すとともに、研究分野の文献を網羅的に踏まえていることの証明になります。

以上の手順で論文は執筆されますが、論文を発表(掲載)する場所は、様々です。

とは言え、掲載される場所は大きく次の2つです。

[1]学会の学術誌(学会誌)
[2]大学・大学院等の紀要(機関内学術誌)

上記の他にも、修士論文や博士論文がありますが、これらは学位論文と称され、基本的には大学の中で収蔵するだけです。

ただし、博士論文については国会図書館に収蔵されるとともに、その概要がホームページや紀要などで公開されます。博士論文を書籍として公刊するのは、学位論文が大学内の非公表論文であるからです。

学位論文では、学会誌や紀要に掲載された論文、および書き下ろしの論文が一つずつの章として組み入れられて、全体として学位論文を構成します。

特に、博士論文として認められるためには、博士論文の一部の章に組み入れることのできる、学会誌に掲載された査読付き論文を2〜3本持っていることが必要です。

そのため、文系では、博士後期課程に進学したら、院生は学会に入会することになります(近年では、学部や修士課程の時に入会するケースも増えています)。

博士後期課程の院生は「社会」に出る前の練習生と見なされますので、多くの学会で「院生セッション」と言う大学院生向けの発表の場を設けています。

院生セッションを見に来る先生方も、そのことを了解の上で聴講します。しかしながら、院生セッションには「光る原石」がたくさん転がっていますので、有望な若手研究者を見つけるために参加する先生方もおられます。

まるで、将来のプロ野球選手を見つけ出すために、高校野球や大学野球を観に来るスカウトのようですが、本質的には同じですね。

科研費採択を目指す上でも、学会報告と論文掲載が重要ですが、それ以上に大切なことは学会内で多くの研究者に自分の研究を認知してもらうことだと思います。

同じ分野の研究者同士、相手の研究内容は何となくわかります。科研費の審査員は学会の中の先生が何人も選ばれますので、多くの研究者に自分の研究を認知してもらうことは科研費の採択につながる可能性があります。

学会の中である程度注目してもらえるような研究発表や論文掲載が不可欠であり、できる限り多くの研究者と交流することを目指したいものです。

前著『週休平均4日・副収入10万円を叶える大学専任教員になる方法』の中で、科研費の審査がなかなか通らない場合は、応募分野を隣接分野へ変えてみるのも一つの方法であることを説明しました。

同書では、たとえ粗削りな研究であっても、将来性が期待されて採択される可能性があると考えていることや、私は応募分野を観光学に変えたことで展望が開けましたことを記しました。

元々私の専門分野は会計学でしたので、観光学分野への転身を図るために、その関連の学会に入会しました。

もしいまあなたがアカデミックポストに就いていて、科研費の応募分野の変更をお考えの場合は、変更先の分野の学会に入会しすることをオススメします。

そして、学会発表と論文投稿を行い、業績を増やしていきます。学会の全国大会や各地区の支部会にもなるべく顔を出して、発表会終了後の懇親会にも参加するようにしたいものです。

業績を作るとともに、懇親会に参加することで人脈を作ることを心掛けることで、教員公募や研究などの様々な有益な情報を得られます。

私はお酒を飲めませんが、懇親会にはなるべく参加するようにしています。コロナ禍で学会の多くがリモート形式となり、懇親会もほぼなくなりましたが、ウイズコロナ・アフターコロナの社会では必ず対面形式の学会や懇親会が復活することでしょう。

業績の生産と人脈づくりは、科研費採択の後押しになると考えています。なるべく多くの論文を世に送り出しつつ、多くの研究者とつながってコミュニティを作るくらいに自分自身を高めていくことが理想です。

ぜひ積極的に取り組みたいと思います。


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