みつい

町の不動産屋で10年程働いていました。 お酒を愛し、何でもよく呑みます。 繰り返し読む…

みつい

町の不動産屋で10年程働いていました。 お酒を愛し、何でもよく呑みます。 繰り返し読むのは漫画なら「ジョジョ」と「スラムダンク」本なら「黒い家」と「白壁の緑の扉」 出てくる人名は大体仮名です。

最近の記事

12歳の頃、愛読していた本を売った話

実家を出て随分経つ。 結婚もしたし子どもも産んだ。 なのに実家の私の部屋は暮らしていた頃とあまり変わらず私の趣味の物で溢れていて帰省するたびに 「いつかなんとかしなければ」 と見て見ぬふりをしているとあっという間に何年も過ぎてしまった。 よし、今こそ。 そう思い、まずは趣味でやっていたベリーダンスの衣装をメルカリで売ることにした。 もうベリーダンスをすることはないだろうし元が高かったので捨てるには惜しすぎる。 ベリーダンスの衣装はキラキラビーズやピカピカラメの飾りが沢山

    • 私だって欲しいもの

      町の不動産屋に勤めていた。 サザエさんでいう花沢不動産みたいな。 大地主、憧れの称号。 私の町にも大地主がいた。 吉田一郎、吉田二郎、吉田三郎の吉田家の人々だ。 吉田家の誰がどの代で財を成し、どう相続されたのか詳しくは知らないがこの吉田家の人々は皆この町のあちこちに広く土地を持ちその上に貸家を建て家主業をしていた。 みな70代もしくは80代の老人で、顔が似ているので私は最後まで誰が誰だか区別がつかなず、たまに事務所にやってきて話す吉田氏がどの吉田か、前回の吉田と今回の吉

      • 贅沢な遊び

        春はいつも花粉症が酷く、杉と檜を大量に植えよ育てよとした者はどこのどいつか個人名まで特定しなければ、と毎年怒りに燃えていたのだが今年は出してもらった薬がよく合っているのか症状がほとんどない。 もしかしてもう花粉は飛んでいないのかもしれない。遂に百合子知事が長年の(私の)悲願である『花粉ゼロ』公約を成し遂げたものかもしれない。 とまで思っているけど、そんなヤフーニュースは見かけていないので医療の進化の賜物であると思う。 とにかく、おかげで私はまだ幼い子どもたちを連れて、例年

        • 他人に本を貸しましょう〜私では辿り着けないレシピ〜

          私は断然ホームズ派。 なにがと言われたらジャンル説明に困るがルパンやポアロ、金田一や右京さん界隈の話である。 小学生の頃、図書室でシャーロック・ホームズを読んだあの日、その風貌(描写と挿絵による)、クールな性格、推理力に胸撃ち抜かれ恋をした。 まだその言葉はなかったが、彼が私の最初の『推し』であることは間違いない。 集団下校中、友と一言も喋らず 「この折られた木の枝…折れ目が荒い。 ということは道具を使わず素手で…」 「私では背が届かない位置」 「犯人は幼稚な行動からこど

        12歳の頃、愛読していた本を売った話

          犯人を探せ!

          町の不動産屋に勤めていた。 サザエさんでいう花沢不動産みたいな。 「警察まで呼んじょったわ」 そう言って上司の木下がウンザリ、って顔で出先から戻ってきた。 家主の秋田さんに呼ばれている、と出て行ったっきりなかなか戻ってこないとは思っていたが警察とは物騒な。 仲が良いわけではないのにこういう風に話を振ってくるときは、聞いて欲しいとき。 そして私もそういう話は嫌いじゃないですよ、と 「なんだったんですか?」 と話に乗ってみた。 警察沙汰とか自分の担当だと胃の痛みしかないが他人

          犯人を探せ!

          星の輝き

          家の外から怒号が聞こえる。 夜の11時。 少し前にサイレンを鳴らしながらやって来たパトカーがあったな、とベランダに続く窓から外を見るとオレンジのシャツを着た男性が一人、制服の警察官が二人見える。 オレンジシャツの男性はうちのベランダから斜め下に見える居酒屋ともスナックともつかない赤い提灯がかかる飲み屋から連れ出されて来たようだ。 「俺は間違っていない」 「近所のみなさんは被害届を出して下さい」 と元気に謎の言葉を叫ぶオレンジさんに警察官たちは 「そんなに大声をださないで」

          星の輝き

          外しません、アゴまでは

          昨年末、並びの悪い歯の虫歯の治療からインプラントデビューをすることになった私。 お正月は美味しいものを食べたいでしょう、という歯医者さんの優しさで本格的な作業は年明けに持ち越されることになった。 お正月は娘の幼稚園の冬休みに合わせてたっぷり地元に帰っていたので世間様より大分のんびりとした年末年始を過ごしたという自覚はあったが 「年明けに予約の電話をしますね!」 と歯医者さんと交わした約束は忘れるわけないのでそろそろ、と電話をすると 「あ、みついさん?!ちょうど今お手紙を用意

          外しません、アゴまでは

          せめて教訓を得たい

          町の不動産屋に勤めていた。 サザエさんでいう花沢不動産みたいな。 お昼を少し過ぎたくらいに来店されたその人はあまりに慣れた感じでズンズンと店内に入り、迷うことなくカウンターの横に置かれた椅子に腰を下ろしたので社長の友人かしら、とこちらもどうもどうもといった感じで近づいてしまったら 「部屋を探しに来た」 というので慌てて接客用の態度に切り替えた、つもりでいたけど最初がそんな感じだったのでいつもよりすこし砕けた感じの始まりになった。 60代のその女性は関本、と名乗りパーマのか

          せめて教訓を得たい

          コンロでイントロ

          曲のイントロを聞いたときそれが馴染みのものならば続きを歌いたくなってしまうもので、去年越してきたこの家に備え付けられている3口ガスコンロの一つはスイッチをオンすると 「チッチッチッチッチッチッチッチッ」 と点火への助走音が聞こえる。 この音が『ZARD』の『負けないで』のイントロのドラムかギターか分からないけどあれと同じリズムを刻むので私は大体朝ご飯の準備などで台所に立つと ふとした瞬間に とイントロに続け、と歌い出すことになる。 前の家のコンロは 「カチッチッチ

          コンロでイントロ

          いいお酒を飲みに

          お酒は飲むのもウンチクを聞くのも好きなのでサントリーの「山崎倶楽部」というものに登録していて不定期(個人の感覚です)にやってくるメールマガジンを夜、これまた飲みながらダラダラと読んだりしている。 そんなある夜。 メールマガジンを読んだ流れでなんの気無しに「山崎蒸留所(大阪)」の工場見学の予約ページを見ていた。人気と聞いているので予約の日にちの欄には定員に達し予約出来ません印の☓ばかりが並んでいる。 更になんの気無しにそれぞれの日にちをクリックして覗いてみると1時間毎の時間

          いいお酒を飲みに

          100万円ショック②〜スタンド使いでも無理な話〜

          うちに帰ると在宅勤務の夫が軽い感じで 「どうだった?」 と聞いてきたので 「最低でも50万だって」と超ヘビー級の返事をしてやった。 「…最低って、最高だと?」 と至極当たり前の質問をしてくるので 「100万」 と言うと黙った。 それはそうだろう、だれがまさか嫁が口内にそんな爆弾を抱えていると予想できようか。 それから何を見ても何をしても100万と歯のことが脳裏をよぎる。 横断歩道を急いで渡るとき テレビを見て笑うとき 幽遊白書の実写化の成功を願っても 料理をしていても 私

          100万円ショック②〜スタンド使いでも無理な話〜

          100万円ショック①〜歯は伸びます〜

          タイトルのポイント数(文字の大きさ)って上げられるんでしょうか?やり方が分からないんでこのまま行きますけど、心情としてはこの3倍の大きさで叫びたいところであります。 話せば長くなりますが私の歯左下、並びが悪い。虫歯になりやすいだろうな、と3ヶ月に1度歯のお掃除に歯医者さんに通う生活をしていたある日、独身だしお金も多少溜まったし、と清掃後「なにか気になるところはありますか」の先生の決まり文句の後すかさず 「矯正したい、左下をどうにかしたい」 と訴えた。 説明しよう。 私の左

          100万円ショック①〜歯は伸びます〜

          未解決事件

          真実はひとつ。 犯人はきみ。 私は口を噤む。 【20字小説】 【小牧幸助文学賞】

          未解決事件

          ありがとうは聞こえない

          町の不動産屋に勤めていた。 サザエさんでいう花沢不動産みたいな。 不意に事務所にやって来るお客様がお部屋を借りたい人なのか、お家を買いたい人なのかわからないのでとりあえず私が 「いらっしゃいませ」 と要件を聞く。 借りたい、というならばそのまま賃貸担当の私の出番だ。 自動ドアがウィーンと開き一人の女性が事務所に静かに入ってきた。 うつむき気味で70代くらいだろうか、藤色の毛糸の帽子をちょこんと被っている。 「こんにちは、いらっしゃいませ」 で座ってもらいカウンターを挟ん

          ありがとうは聞こえない

          目的地は、本屋さん

          私のスマホが 「これ興味あるでしょ」 とYahooなどのニュースを紹介する。 ブロッコリーの使い方 とか 川島明 とかなら検索履歴からか、と納得もできるが マンウィズアミッション と出てきたときには震えた。 マンウィズアミッションとはご存知、オオカミがやってるバンドグループなのだが検索したことはない。 ただその前日くらいの音楽番組に出演しており 「これはなんだ」 とテレビの前で騒然とする我が子どもたちに 「オオカミがやってるバンドだよ」 と教えた。 マンウィズアミ

          目的地は、本屋さん

          子どもたちへ私の精一杯のハロウィン

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