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都農をくるくる

8月、夏休み。
大阪に住む私は6歳と3歳の娘を連れて、地元九州に帰省した。
3週間ほどの長い滞在。子どもたちはいとこに会ったり、盆踊りに参加したり、海や花火と楽しんでいるようだが、私は少し退屈し
「たまにはちょっと遠出でもしようか」
と思い始めたある日の夕方、テレビでぶどう狩りの紹介をしていた。

そばで一緒にテレビを見ていた母親と
「いいね、行ってみる?」
「よし、ここへ行こう」
と、そのままの勢いで私の両親分も含めた人数で2日後にぶどう狩りの予約をした。
…してしまった。
その日が雨でいつもより少し涼しかったのがいけなかったのかもしれない。
実家でゴロゴロ過ごし、すっかり脳みその力がゼロになった私は夏の暑さを素早く忘れていた。


当日。
猛暑、酷暑、灼熱、サンタナ、全ての言葉を束にして積んでも足りないくらいの日の光を受けて、もうすぐ70代に突入する私の両親と幼い娘を連れた私たち一行はその地、宮崎県都農つの町に降り立った。
どうか、みんな無事に帰ろうね。

いざ!

もう暑くて、味見なのかウェルカムフルーツなのか説明のないまま出された冷たいぶどうと梨を喜んで頂く。

すべてが完璧に甘い

口に残る優しい甘さの果物に
「これから狩りに行くんだ!」
というワクワクを取り戻した私たち一行は案内役のおじいちゃんに連れられて農園へ向かった。

平日だったからか、それが通常なのか私たち一組にひとじいちゃんが丁寧に果物の狩り方とコツ、種類、金額設定などを農園クイズを交えながら教えてくれる。

「このぶどうから作られるものは何でしょう?」

今日狩るのはシャインマスカット、ニューピオーネ、梨(幸水か豊水か忘却)

入園料は無料、時間無制限、狩ったグラムで料金が変わる、というシステムらしく
「シャインマスカットは少し黄色がかかってる方が甘いかいね」
「ピオーネは袋の下が汚れちょるやつは実がダメになっちょっから取らん方がいいわ」
「梨は被せてある袋がパンッパンのやつがやっぱ大きいわね」
というアドバイスを胸に私たちはいよいよ狩りへ出た。

暑い

子どもたちが楽しそうなのが救いだが、とにかく暑い。

青い袋がシャインマスカットの証

暑いのだけど子どもははしゃぎ、大人は背を屈ませながら少しでも良い果実を探そうとぶどうを見る。
時折、枝にとまっていたらしいアブラゼミが「ミミミミッ」
と言いながら飛び立ち、私たちを驚かせる。
蚊はみんなそうだけど「野生の蚊」と言うにふさわしい逞しい蚊がチラチラと飛ぶ。

過酷。
果物を育て、売りに出すということはなんと大変なことなのだろうか。
まさしく滝のような汗をかきながら働く人々に思いを馳せ、梨エリアへ。

輝く太陽、もう日陰すらなし

見てこの光。
DIOも無惨様も殺られるんだもんな…
と陽の光の前に立ち尽くし体力の限界、どころか持参した麦茶を飲んでも飲んでも汗と出ていくこの現象に脱水の危機を感じた大人たちは
「まだまだ居たいよー」
という子どもたちを説得し半ば引きずるように梨エリアを早々に去り、会計に向かった。

冷たい麦茶に迎えられながら計量の結果を待つとシャインマスカット3房、ニューピオーネ2房、梨3個で7千円ちょっとだった。
もはや安いとか高いとかじゃない、6歳の子よこの経験を忘れず幼稚園の絵日記にしっかり記してくれ!


そうして、よたよたと車に戻った我々は
「せっかくの都農なので」
と農園から車で10分ほどのところにあるここへ

ジャーーーン!!

都農ワイナリーです。
ついでに寄った様に言うけれど、都農に行くと決まった日から私の本当の目的はここであったといっても過言ではない。
マイワンダーランド。
夢の国。

遠くに海


ワインに
肴に
試飲コーナー

カラッカラに乾いた体が引き寄せられるように試飲コーナーへ。
運転の予定もないのでクイッといっておく。
たまんないね。
先ほどの果物とはまた違うあとに残らないスッキリとした大人の甘みがここに。
試飲したロゼのキャンベル・アーリードライと香りが好きなソーヴィニヨン・ブランを購入。

今すぐ、ゴクゴクいきたい


こうして、美味しそうすぎるパンも買ってソフトクリームを食べ先程までの暑さを思い出として語れるようになった頃、私たち一行はお昼ごはんを食べるべく都農の道の駅へ出発した。

窓の外はテラス席。行かないけど。


ワイナリーから車で5分ほどの道の駅はとっても盛況で、どこを撮ろうにも見知らぬ人が入り込んでしまうので、残念ながら何の画像もないけど、トマトを使ったお菓子や麺、冷凍のピザなどが人気なのだと道の駅マニアの母に解説を受け、近くの立派な都農神社にあやかって、そこで売られていた宝くじを買った。ハズレた。
もちろん神社に責はなく、ちょっと通りがかっただけでどうにかこうにかお願いします、という私の心がいけないのだ。


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暑さも喉元を過ぎ去り、家のクーラーの下涼む今残るのは皆での狩りの賑やかさと果物の美味しさ、ワインとパンの幸せと道の駅で買った限定のお菓子などの楽しみ。
移動には車を使ったので、農園、ワイナリー、道の駅をくるっと移動時間少なく回ることができた。



どうね、行ってみらんけ都農町。
私はまた行きます。
今はもうあの暑さすら楽しい記憶となっているので。

気に掛けてもらって、ありがとうございます。 たぶん、面白そうな本か美味しいお酒になります。