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悠凛さん/〘異聞・古事記1〙スサくんとクシナダさんの場合【神話部一周年企画 No.5】

note神話部一周年記念祭5日目です。
note神話部一周年記念企画では部員の作品を読み合い、それぞれの記事に対して鑑賞文を書いて頂きました。エントリーは6名。1人ずつ作家・作品を紹介させて頂きます。部員の鑑賞文と共にお楽しみ頂ければ嬉しいです。

【部員紹介】

第五回は悠凛さん。副部長として共同運営をして頂いてます。「異聞」と称した作品群『新話de神話』 当人は「妄想を炸裂させているだけ」と謙遜されますが、伏線を張り巡らせた見事な物語構成の内に豊かな情景・心情が描かれており、飽きることなく楽しめます。それに加えて彼女の武器は神格の魅力的なキャラクター化。ぜひイラストも併せてお楽しみ下さい。

【エントリー作品】
〘異聞・古事記1〙スサくんとクシナダさんの場合

【鑑賞文】

旅野そよかぜさん

なじみのある日本の神話。古事記日本書記で登場する素戔嗚尊と櫛名田姫の物語ですが、ここで大胆に「スサくん」と気軽に書いてしまえるのは、非常にうらやましく思いました。わかりやすく説明するにはばっちりです。そして有名な大蛇を退治するエピソード。ただその紹介にとどまらず裏を紹介するのが良いです。スサノオが願ったのではなく、逆に懇願したという。でも無力に姉妹に殺されてしまうことを防ぐのであれば、このほうがより現実的ではないだろうかと思いました。他の神話エピソードでも裏にはいろいろありそうです。

笹塚心琴さん

かの有名なヤマタノオロチ討伐の神話……の裏側! 初めて読んだ時もそうですが、今回も爆笑させていただきました。クシナダさん、したたかすぎます、たくましいです。スサノオがクシナダの尻に敷かれ続けたのも納得です。神話を現代語風にアレンジしてくれているので、ポップなイメージで読めて楽しかったです。神さまといえど打算あり失敗あり下心ありと、とても人間味のある存在なんだと思うと、とても親しみが持てました。

吉田翠さん

エンタメ色豊かな悠凜さんのスサノオ…… いや、それよりもクシナダ伝と言いましょうか。
出雲系が高天原系と繋がった瞬間を、実に【人間】臭く語った異伝です。スサノオは持てる力をフル活用してオロチを退治し、有名な歌を残しました。これにより「出雲ここにあり」を歴史に宣言したのでしょう。
女は元々強くてしたたかなんです。あっぱれクシナダの姫。

すーさん

スサノオノミコトさまは、お嫁さんのクシナダヒメさまとその父母、アシナヅチさま、テナヅチさまに手のひらの上でうまいこと転がされていた!? 勇者が怪物退治を行うというよくある英雄譚の裏を考えると、こんなに面白い説が出てくるのかと思うと神話ってあらゆる意味で、インスピレーションの宝庫だな、と感じます。考えるストーリーが、ひとによって違ってくる。だからこそ素晴らしい物語の母胎になるんだなぁ、と。

矢口れんと

日本最古の和歌にまつわる伝承……の裏のお話。コミカルに粉飾された内容と、読者を飽きさせないリズムの良い文章とが相まって、とても楽しく読めました。
パロディは「なさそうでありそうなエピソード」じゃなければ没入しにくい。どちらかに偏っていると途端に冷めてしまう。このギリギリの線を突いている点において、非常に秀作だと思います。隠された神話、姫(女性)と家族の企み、意味深な和歌……どれもまさに「なさそうでありそう」なのです。「書かれてそうで書かれてない」とも言い換えられます。
スサノオとクシナダの伝承には人の興味を惹きつける可能性が散りばめられており、妄想を展開させる要件の揃った「場」と言えるでしょう。このような「場」を選び取れるのも、作者のセンスあってこそなのだと強く感じました。

ヘッダー画像は吉田翠さんの作。
まことにありがとうございます!

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ご支援頂いたお気持ちの分、作品に昇華したいと思います!