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吉田翠さん/淑女プレアデス姉妹【神話部一周年企画 No.2】

note神話部一周年記念祭2日目です。
note神話部一周年記念企画では部員の作品を読み合い、それぞれの記事に対して鑑賞文を書いて頂きました。エントリーは6名。1人ずつ作家・作品を紹介させて頂きます。部員の鑑賞文と共にお楽しみ頂ければ嬉しいです。

【部員紹介】

第二回は吉田翠さんです。神話部発足以前から神話・伝承に基づいた詩作品を書かれていました。ハワイ、日本などに共通する多神教的世界観、自然への畏敬の念が、詩文はもとより行間にまで浸透しています。日本詩歌に造詣が深く、言葉の美しさも魅力のひとつです。卓越した文学観・文学史観、ほとばしる探究心は部内で随一!

【エントリー作品】
淑女プレアデス姉妹

【鑑賞文】

すーさん

プレアデスの乙女たちが、オリオンのことを心底嫌がっているのかと思いきや、意外にそうして求められていることをまんざらでもなさそうに受け止めている乙女らの女ごころがとてもコミカルというか何と言うか。面白かったです。

矢口れんと

哀れなオリオン。アルテミスの美しい侍女たちをモノにできず、虚しく追い回すだけでなく、容赦ない陰口の数々。小気味好い姉妹の会話には、淑女にまじって少しませた少女の姿も見えます。七つ星にもそれぞれ個性があることでしょう。星はドレスやマントで度々隠され、それぞれの瞬きは弁舌巧みに男を煙に巻いているようです。
四行詩があることで歌物語になる。そういえば『伊勢物語』の初段も、美しくもつれない姉妹に恋をした狩人の話でした。そんな物語同士の対話も含めて楽しく読ませて頂きました。
「それとも第二幕を待つ芝居の幕あいか」
もし神話に続きがあるとしたら、乱暴者の狩人は徹底的に懲らしめられてしまうことでしょう。諸伝が散逸したのだとしたら、おそらく大神ゼウスが同族のオリオンに同情したからかと(男ってコレだから……)

悠凛さん

これぞ、王道ギリシャ神話!とギリシャ神話全盛世代をくすぐります。
蠍座が東から昇ると、慌てて西に逃げると言われているオリオン座ですが、その合間に美しい7人姉妹の貴婦人たちを追いかけ回していたとは!
いやいや、一説では、蠍をオリオンに仕掛けたのは、7人の貴婦人たちの主・アルテミスと言う話も……?
もしかして、貴婦人を追いかけ回して自分に見向きもしないオリオンへの、女神のし返しだったのでは?……な〜んて妄想が止まらなくなるお話でした。

旅野そよかぜさん

プレアデスにせよオリオンにせよ、どちらかといえば、星座の名前やプレアデス星団のほうがイメージが強いのですが、元はといえば古代ギリシャの神々の物語。乱暴をするオリオンを避けるということですが、それぞれの姉妹が会話しているシーンはひとときの休憩をしているようです。いずれも冬の季節に輝く星空。この時期とも一致していて、読むと思わず夜空を眺めたくなります。それから最後にはテーマを記した短歌のようなものがついているのが良いですね。そして星座を考えた人、古代ギリシャと夜空に浮かぶ星団や星々を比定して意味を持たせた人の偉大さを改めて感じることができる作品でした。

笹塚心琴さん

プレアデス姉妹たちのささやき声に色があったら、きっと薔薇色だろうなと想像しました。追われると引いてしまう、そんな女心のささやきはまるで歌のよう。しんと冷えた冬の夜空をあでやかに彩る淑女たちの会話に、思わずため息が漏れました。ツンデレなところがアクセントになっていてかわいい一面も素敵です。それから、「すばる」の名前の由来を初めて知りました。「統べる」が変化しての「すばる」、日本語の美しさを再認識しました。

ヘッダー画像は吉田翠さんの作。
まことにありがとうございます!

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ご支援頂いたお気持ちの分、作品に昇華したいと思います!