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My-Mythology〜新しく綴りあげる神話の世界〜

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#玉と石の神話

〘新話de神話〙異聞でも何でもないやつ11

〘新話de神話〙異聞でも何でもないやつ11

 
 
 
(お題de)困った時の神頼み的なアレとして、あの部員たちをキャラ化しておくことにしました。

これで今後一度も出番がなかったら、むしろ私を褒めて戴きたい。 ←

※彼らを使わずにお題宿題を消化出来たということですから。



〖帳友学園ダベリ部/登場人物〗

⦿太日向陽久
 顧問。通称・太陽先生。熱血と言うより暑苦しくてまぶしい。
 
⦿月夜野明里
 副顧問。普段は静かなのに時折強烈

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『玉と石の神話83』
見上げると、波が激しく渦巻いていた。
この海底に影響が及ぶ事はなかったが、地上も大気も荒れている事は予想出来る。
無事でいられる保証などない。
それでも、約束を果たす為、自らも安息の地を求め、金剛は綱を手離した。

いつかの世での、再会を確信しながら。  終

『玉と石の神話82』
辿り着いた場所で、仲間達も永の眠りにつくだろう。いつの日か、自ら目覚める時、何かに目覚めさせられる時まで。
金剛は揺り籠を引いて海底に泳ぎ出した。静かな場所を見つけて安置する。
「次にご尊顔を拝する時には、きっと白く輝く真玉の如く生い立たれている事でしょう」

『玉と石の神話81』
初めて拝謁した折に室内を見、ここだけが真っ先に浸水する事はわかっていた。
災禍の後、本宮は朽ちて廃墟となる事、この地の幾分かは海から出で、大地の一部に戻るだろう事も。
何より、御子達が眠るにあたり、海底でなければならないのだと言う事にも、金剛は気づいていた。

『玉と石の神話80』
水の気配を感じ、金剛は御子達の揺り籠を開けた。
王妃に託されたものを御子達に抱えさせると、再度上部を閉じ、少々の事では開かぬようにする。
「再びお目通り叶うは、完全なお姿にてお目覚めになられた後でございましょう」
やがて、隙間から静かに海水が流れ込んで来た。

『玉と石の神話79』
どれくらいの時が経ったのか。
気がつくと、いつの間にか激しい揺れは鳴りを潜めていた。影響が届かぬ所まで沈んだのだと、金剛も安堵の息を洩らす。程なく宮は底に到達し、内部に水が侵入して来るだろう。
その時こそ王の力を借り、眠るに相応しい場所を求めてゆくのである。

『玉と石の神話78』
宮が粉々になるのではないかと言うほど激しい揺れ。それでも王達が極めて制御しているが故、何とか中にいる者達も耐え得る程度で済んでいるのだった。
少なくとも天地が入れ替わる事はなく、皆、互いに支え、また自らを括り付けて耐えた。
その間も、宮は静かに下降していた。

『玉と石の神話77』
御子達についていた金剛は、周囲の音が変わった事に気づいた。浮力が働き、だが、それに逆らうように下降している事にも。
(水の中に入ったか)
だが、静かに漂っていたその時、突然激しく揺れた。傾いた室内で、天井、壁、床が軋む。
「…!」
災禍が襲って来たのだった。

『玉と石の神話76』
本宮に大きな損傷を与えぬよう、地は少しずつ動いていた。
(少しずつ下がっている…)
揺り籠を押さえ振動に耐えながら、金剛は潮の香と波音が近づいているのを感じていた。
王達の力が及ばぬ離宮はトパーズの火に焼かれ、恐らくそのまま波に飲まれ、粉々に流されただろう。

『玉と石の神話75』
二人が本宮の扉を閉めたとほぼ同時に、振動が地の底から突き上げた。
「…!」
息を止め、身体が強ばる一瞬、金剛は揺り籠の上部を覆い、自らの身体と繋いで括り付けた綱を握った。
小刻みに来る小さな振動は、王妃が大地を制御し、静かに動かしているのだと金剛は気づいた。

『玉と石の神話74』
同じ頃、王達も火が放たれた事に気づいていた。
「…どちらが早い方が良い、という訳ではありませんが…」
王妃の言葉に、王はただ目を瞑った。
「琥珀…トパーズ…急いで…どうか無事に本宮へ…」
その願いが通じたのか、見事二人は敵を火で封じ込め、本宮へと飛び込んだ。

『玉と石の神話73』
「…!」
金剛は、トパーズが火を立てた事に気づいた。
(やはり敵の方が早かったか…)
だが、二人への信頼が揺らぐはずもない。必ず、時が来るまで食い止めてくれると。
「お前たちは、最強の組み合わせだ」
共に生きて来た二人への、それは金剛なりの労いの言葉だった。

『玉と石の神話72』
「お前も金剛と同じでわかりにくい」
トパーズの反論に、琥珀が可笑しげに口角をゆるめた。
「…だが、理由などどうでも良い」
小さく言い、琥珀の手を取る。
「同じ処で目覚めを迎えられるか怪しいものだが、必ず見つけにゆく」
琥珀は指の力を強め、返事の代わりとした。

『玉と石の神話71』
「どうした?」
珍しくはにかんだ顔のトパーズに、琥珀が不思議そうに訊ねる。
「…驚きもする。お前から手を差し出してくれるなど初めてではないか…いや、私が金剛とやり合ったあの時以来か」
「そのように思うていたのか?なれば、私の心付は報われておらぬという事だな」