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矢口れんと
2022年9月11日 19:15
陽光の螺旋ほどいて柳散るコスモスの花弁コスモの綻びか謂われなき罪過をどうぞ黒葡萄◇枯れ向日葵の一群のひとひらのイエローほどの不幸があるかと問い始めた子きみの朝顔どこにいったの◇無形の雲すら責め立てて雨下を追いかけ続ける男は先にある背と自らの背がかけ離れるごとにほくそ笑む殴る人は失せ可愛らしげに 裾を掴む人もいなくなったその歩みを止める
2022年9月8日 14:56
そこにさざめく葉の一群にかの詩集を読ませてあげたいあなた方もわたしと同じで哀しみを言葉にできないのだから余計なお世話だと言わんばかりに狼の声が月にこだましたひと吠え にも 遠く及ばない 虚しさ大いなるものよ なぜ わたしには哀しみの声を宿してくださらなかったのか濡れた葉は朝になれば 煌めかされて写真家が切り取り美の額縁に飾る老夫婦が散歩の途中 朗らかな顔で露の先
2022年9月7日 06:33
心の奥深くに潜る。深度を増すごとに光が届かなくなり、深海のごとく暗くなっていく。闇に三つの白い物体が浮かんでいた。揺蕩うことなく、貼り付けられているかのように、じっと。喜びの仮面、怒りの仮面、哀しみの仮面……なのだろう、きっと。逆三角形に配置され、時折消えては無作為に入れ替わっていた。そうだ、感情とはこうして目まぐるしく入れ替わるものだった。闇が意地悪そうに問いかけてきた。──
2022年9月2日 05:16
黒雲の帯が銀河でしたきらめきなどは見えません下手くそな比喩は時世のせいです飾りつけのない誰もそれを望まなかった無欲な強欲だけが夜ごと流れていきましたからどうしようもなく夢中で雲を抱いたのです透明な巨人の腹に這いつくばるようにして隆起と陰影だけを頼りにかろうじて許された仮初めのアートを隠れて何度もなぞった日々明朝には戦地に赴く歩兵部隊のテントの内で盗み見た愚鈍に剣