マガジンのカバー画像

詩の暦

19
詩や短歌などを掲載しています。
運営しているクリエイター

#詩

夏日記 Ⅱ

ひとは嫌いな土地になどいてはならない 時間は何も保護しない 偉大であることは欠乏の戦慄に…

浮島 漣
4年前
2

薔薇の方程式 3

    夜 海岸通りを歩く  海の零度を確かめる  冷たい季節の配列が続いていた  ワイエ…

浮島 漣
4年前
5

わたしの夏、夕べには愛を語る……(詩集 薔薇と夜光杯)

 わたしの夏――ひとりの男とその女のために必要とされた時刻  夕べには愛を語る 習慣の美…

浮島 漣
4年前
5

夕闇の漂う頃(詩集 薔薇と夜光杯)

 夕闇の漂う頃 秋の深まりに街は濃い影を落し  ふたり たそがれを歩いている 静かな夕べ…

浮島 漣
4年前
13

変奏 第6章

 永遠は一瞬のうちにしか棲息しない  美しい季節は確かめる  失明する夜明け前の  海に …

浮島 漣
3年前
3

異境にて(詩集 虹と鉛管)

 異境にて  誰も待たない  わたくしを棄てた苛政の軋轢も底知れぬ圧政も  そこまでは待て…

浮島 漣
3年前
5

苦い水(詩集 虹と鉛管)

 きのうからの風が  わたしの砂丘のかたわらを過ぎていく  思えば人間ほど殺人を犯したものはないと  荷揚げ場で腰を低くかがめた女が言う  風のようにわたしは去つていつた  あのひとは蜃気楼の港から時折ひびく  遠雷の音にひどく怯えて  冬の始まりを知ることもなく去つていつたわたしを  苦い珈琲を呑み干すときのように  すこし憂いのある表情で見つめていた  曇り硝子の窓には細かな雪の破片がついて  聖週間が近いことを告げるいるみなしおん  あのひとの神々しい裸身のしるえ

美しい帆(詩集 晩夏香)

 彼女は美しい帆を立てた  わたしは白いさざなみになり  五月の海を滑つていく  わたしは…

浮島 漣
3年前
6

かんせいど(詩集 晩夏香)

 秋霖前線てやつが終る頃  別れた彼女が戻ってきた。  木の葉一枚の差で乗り遅れた季節のバ…

浮島 漣
3年前
7

アニュス・デイ(詩集 晩夏香)

 アニュス・デイ  彼女のことは忘れよう  そして五月の木漏れ日に包まれて  優しい動物に…

浮島 漣
3年前
4

詩集 薔薇と夜光杯

第1部  リラの花、五月の誰彼に……  リラの花―――五月の誰彼に似合いの  映画のよ…

200
浮島 漣
8か月前
17

詩集 届かない手紙

          美しい五階  他者の悲しみ 朝のおとない  こころはここにはありませ…

200
浮島 漣
6か月前
9

砂の記憶(詩集 届かない手紙)

 わたしはどこから来てどこへ行くのか。  そのような問いかけは数限りなくあの青い夜の空に…

浮島 漣
6か月前
4

砂の王(詩集 届かない手紙)

 別れてからあなたは砂になる  わたしは砂漠の王になり  月の明るい夜は  ひとり  呪われた夢に魘され続ける  なぜまだ生きて召命にあずかることもなくみわざのかけらうつくしいものただしいものきよらかなるものをさし示すこともなくなぜここにこのままで永遠のごときこのすがたこのこころこのたましいをしばられてつながれてここにつながれたままそのとき死すべき器を抱いてすこしも祈りたくないいやされてはならないつぐなふべきにはあらずとうそぶいてゐるひとりのをとこをつづけねばならぬのか