夕闇の漂う頃(詩集 薔薇と夜光杯)
夕闇の漂う頃 秋の深まりに街は濃い影を落し
ふたり たそがれを歩いている 静かな夕べに
ささやかなよろこびのとき ふたり歩いている
誰も通り過ぎるひともいない ふたりとりとめのない話に胸うたれながら
しみじみとひろがる このやすらけた落日の時称にしっかりと包まれて
ふたりでいる そのことのかけがえのなさに生きているふたり生きてともに生きていることを
深く心に感じて そのことは黙っていても ふたりには分かっていたから
夕闇の漂う頃 ふたりどこまでも歩いている
もし かなしみがやがてふたりを分かつことがあろうと
ふたりでなら ふたたび会える そのことは誰も口にはしないが
ふたりには分かっている そのとき たそがれを染める落日の赤と青
不思議な形をした雲のいくつか それらの聖なる配置の彼方から
不思議な声を聞いたのは ただの幻だったのか
(以下略)
全文は、詩集 薔薇と夜光杯(有料分)に所収
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