クラスの嫌われ者
学校のクラスとは不思議なもので、どのクラスに行っても同じような奴は存在する。
スポーツが得意で健康的に日焼けしているクラスのイケメン、一軍的存在で、いつも授業では先生からいじられるクラスのムードメーカー、クラス中に響き渡る大きな声で笑う女子、一番クラスで可愛い長い黒髪の女の子、女子とも普通に仲がいい、目立つわけでも、目立たないわけでもない男子、クラスの隅っこで小さく固まって話してるクラスの陰気な男子達、そしてクラスの嫌われ者だ。
クラスの嫌われ者は、みんなから避けられていて、時にはいじめられることもある。
もちろんこのクラスも例外ではない。
このクラスでの嫌われ者のそいつは、目にかかる前髪は重く、話してもボソボソと話すだけで、みんなから気味悪がられている。
この前、席替えでそいつと隣になった女子は「さいあくー」と友達に大きな声で言っていた。
昼休みはいつも一人でご飯を黙々と食べ、それ以外はずっと机に突っ伏して寝ている。
最初はみんなから、無視されて、避けられているだけだったが、
ある日から、そいつは一軍の奴らに目をつけられたようだった。
「お前、いつも気持ちわりいんだよ」
受験期でストレスが溜まっていたのか、髪は短髪でカッターシャツの下には赤色のTシャツが透けているサッカー部の男子が、そいつに絡み始めた。
そいつは怯えているように肩を震わせ、顔を上げない。
いじめが始まった。
最初は、サッカー部の男子は仲間とそいつの持ち物を隠したりして、そいつが困って探しているところを見て、仲間とともに「ギャハハハハ」と笑いあっていた。
そいつは見つかりもしない物を必死で探している。
授業が終わると、そいつはゴミ箱の中に手を入れガサゴソと何かを探していた。
多分、体操服を捨てられたのだろう。
次第にいじめはエスカレートしていき、暴力に移る。
昼休みには数人の男子に囲まれ、学校の裏に連れてかれ、ストレス発散の道具にされる。
帰ってきたそいつの体にはいつもどこかしらに、赤黒い痣ができていた。
完全に外から見ていじめられているとわかっていたが、他の奴らは自分がいじめの標的にされるのが怖くて、何も言えない。
先生もいじめに気づいてるようだったが、面倒ごとに関わりたくなかったのか見て見ぬ振りをしていた。
スクールカーストは残酷だ。
一軍がやったことは、それが善いことでも、悪いことでも、自動的に正しいことになる。
時には先生でさえ、一軍のやったことなら容認する。
でも、それは学校のクラスに限ったことではないのかもしれない。
ある集団の中に所属すると、力を持っている人が正義になる。
会社に入ってもそうだ、社長のやることが会社としての正義になり、それに部長、課長、社員などが従って働く。
集団とはそうやって、一定の方向に進んでいくのだ。
「もう、疲れたな」
嫌われ者である僕は学校の屋上に行くと、フェンスをよじ登り、誰もいない校庭を見下ろしながら、つま先がはみ出すほどの狭い幅に足を下ろした。
生暖かい風が頬を吹き付ける。
沈みかけの夕日のオレンジ色の光が、空に染み込んでいた。
カラスが三羽夕日に向かって飛んでいる。
結局、僕はクラスだけではなく、どこに行っても嫌われ者だった。
いじめのことを話しても、めんどくさそうな顔をしながら、「あんたの気にしすぎ」と吐き捨てる親も、この残酷な世界に僕を作った神様からも。
誰も僕を助けてくれる人はいなかった。
体を空中に投げ込むと、体が風でフワッと浮き上がる感覚になる。
そこでふっと意識が途切れた。
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