檸檬読書記録 『蜜蜂と遠雷』 『祝祭と予感』
今日の本は
恩田陸『蜜蜂と遠雷』(上・下巻)
亡くなってしまったホフマンは、世界中の音楽家に尊敬されていたが、決して弟子を取ろうとしなかった。
にも拘わらず、ピアノのオーディションに現れた無名の風間塵という少年は、ホフマンの推薦状をもっていた。
その演奏は衝撃的なもので、爆弾。
彼はピアノ界のギフトなのか災厄なのか…。
風間塵が挑むのは芳ヶ江国際ピアノコンクール。
その中には、かつて天才少女と言われていた栄伝亜夜。楽器店に務める高島明石。優勝候補のマサル。そして他の天才たちがいて、争う。
果たして優勝するのは…。
といった内容で、いやー面白かった!終始ワクワクさせられた。
風間塵の登場、つまりは最初の段階から既に物語に惹き込まれて、最後の最後まで引っ張られた。
基本的に本は2冊読みで、もう1冊違う本と交互読みしていくのだが、もう1冊に移るのが後ろ髪引かれるほど、のめり込まされた。続きが気になって気になって仕方なかった。
その上予想していた展開とは違ったりと、え、まさか!と裏切られた。だけど最終的に良かったと思わせる秀逸さ!
なによりメイン4人どれも魅力的で、それぞれの視点から進んでいくから、全員を応援したくなる。
4人の他にも審査員や記者などの視点と、いろいろな角度から物語が進んでいくのも、映画を見ているようでよかった。
映画といえば、この本も映画化されていて、随分前に話題になっていたけれど、残念なことに自分は観ていない…。
その時は何故かあまり興味が持てなくて、スルーしていた。
そのことに、今更ながらに悔やんでいる。話題から随分経って今更ながらに読んだことも、悔やんで止まない。
うわー、見たかった…。
本だけでも、見ているだけで音楽が聞こえた。流れてくる感覚があって、きっと映画を観ていたらそれがもっと正確に流れたんだろうな…。
バッハもベートーヴェンもモーツァルトもからっきしなのに、聞こえると思ったくらいだから…。うーむ、悔しい。
(テレビでやらないかな…)
同じく、恩田陸『祝祭と予感』
『蜜蜂と遠雷』のその後や、コンクールで課題曲になった「春と修羅」のきっかけや、風間塵と師匠ホフマンとの出会いなど、全6編のエピソードが載っている。
個人的には、特に最初と最後の話が良かった。
最初のエピソードは『蜜蜂と遠雷』のその後をえがいたもので、コンクールで争った3人。風間塵、マサル、亜夜が、マサルと亜夜の恩師の墓参りしに行く、という話。
これからも3人はこうやって繋がっているんだろうなと思わせてくれる話で、微笑ましくなった。
最後は、天才で天真爛漫な風間塵をホフマンが見つける、という話。風間塵が特にお気に入りだったから、ファンにしては嬉しいエピソードだった。
『祝祭と予感』は、エピソードの他にも、恩田さんの音楽エッセイが少し載っている。
それもかなり見所で、個人的にはエントリーシートの話が興味深かった。
出来合いのものではないから、登場人物それぞれの曲を全て考えなくてはならないのだと、当たり前のことなのだが、読んで気付かされた。一層『蜜蜂と遠雷』の凄さを感じた。
何度も何度も膨大にある曲の中から選んで聴いて、決めたのだとか…脱帽だ。
自分は読んでる時はどんな曲か分からないまま終わらせてしまったけど、YouTubeなど曲を聴きながら読んだ人もいるのだとか。そんな方法もあったのかと、驚愕した。頭が悪すぎて、そんなこと思いつきもしなかった。次読む時は自分もそうしようと思った。
そしたらきっと、もっと物語が身近に感じられるかもしれない。もう一度読む楽しみができた。
それにしても名残惜しい。
『蜜蜂と遠雷』が読み終わった後も名残惜しくて、だが『祝祭と予感』があると知って嬉しくて読んだけれど、まだ名残惜しい。
もっと見たかった。彼ら、特に風間塵のこれからをもっと見たかった。
でも続編は考えてないのだとか…残念。
けれどそれほどまでに、楽しめた作品だった。
またこんな素晴らしい本と出会いたいなと願いつつ、今回は閉じようと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
ではでは。
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