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檸檬読書記録 『怪盗フラヌールの巡回』 『影の縫製機』

今日の本は
西尾維新『怪盗フラヌールの巡回』

有名だった怪盗フラヌールの正体は、父親だったと知った主人公・あるき野道足は、父亡き今、父親が盗んだ品物たちを返却しようと意気込む。
何度目かの標的に選んだのは『玉手箱』という品物で、竜宮城もとい海底大学に返却しようとする。
だが事はそう上手くは運ばす、怪盗フラヌールの専門家の刑事や、ウルトラな癖強めの名探偵などが立ちはだかり…。その上思わぬことが起こり…。

といった内容で、ただ品物を返却するだけではなく、名探偵には必須のミステリーも含まれている。


個人的に西尾維新作品は、刺さる作品と刺さらない作品がはっきりしていているのだけれど、今回の本は刺さった。好みだった。
相変わらずの個性豊かなキャラクターに、独特の言葉遊びが盛りだくさんの文章。現実離れした能力。
それら西尾さんの魅力が最大限に生かされた作品だった。
トリックは西尾さんの作品をある程度読んでいると、大体分かってしまうような、西尾さんらしいものだった。
けれど勿論驚かされる箇所も所々にあって、伏線も散りばめられていて、油断できない。
傍にはずっと刑事と名探偵がいて、正体がいつバレるのかと怪盗側目線でドキドキした。最後まで楽しめる作品だった。
無論、西尾さんを知らなくて免疫がなくても(奇抜さに少し驚くかもしれないけれど)楽しめ作品だと思う。


怪盗フラヌールは、シリーズ物になるらしく、2作は出ることが確定してるとか。
次が出るのが楽しみだ。


もう1冊
ミヒャエル・エンデ『影の縫製機』

『モモ』や『はてしない物語』で知られる作家の、詩集。
詩集を出しているのを知らなかったし、読んでみて驚いた。『モモ』や『はてしない物語』や『ジム・ボタンの機関車大旅行』を読んだ時に感じたイメージとは違った。子供が読むというよりかは、大人が読むようなダークな雰囲気。

中身は詩集だけでなく、モノクロな挿絵もついている。それがまたほの暗さを醸し出しているのだ。
どことなくエドワード・ゴーリーに似ていて、彼の作品が好きな人にはきっと刺さると思う。

個人的に気に入ったのは『透明人間』

「そのむかし、ひとりのおとこがいた
なやみの種は 目に見えないこと
だけどむかしから 見えなかったわけじゃない
じわじわと 消えていったんだ
だけども まほうや のろいの せいじゃない
事態はもっと深刻!

ずっとまえはそれでも
すこしは姿が見えたのさ!
それじゃ どうして消えたかって?
ひとりもいなかったのさ
しんそこ愛してくれる
心ゆるせる 友が

だれからも好かれない人は
町の中でもひとりぼっち
だれでもない人なのさ!
(略)

うんざりした そのおとこ
ある日 芸術家たずねて
仮面をほってもらった
(略)

仮面ができると
昼も 夜も かぶったさ
みんな 仮面にうっとり
けれども しょせんは仮面
おとこはけっきょく 透明人間
だれひとり おことを気にとめなかった

おとこは死ぬまで仮面をかぶりつづけた
ここでひとつ 子どもにもわかる
だいじなことを 書いておこう
愛してくれる人には 感謝しよう
愛をあたえる人になろう
姿が消えないために!」


ストレートに刺さってくる。
子どもの時に読んだら、えもいえぬ怖さを感じていたかもしれない。
最後にポツンと仮面だけが残る絵も、恐怖を増長させる。
けれど、そのほんの少しの不気味さがいい。

後、タイトルにもなっている

『影の縫製機』

『消えゆく淑女』

もいい。
他の作品も少しダークで、癖になる。
短いながらに惹き込まれる作品だった。


幻想的で少し不思議な気分に浸りつつ、今回は閉じようと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
ではでは。



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