天狗党の乱、三好十郎『斬られの仙太』、映画劇『天狗党』
常陸国と公武の接近
徳川時代の日本は諸国の上位にある江戸の公儀(将軍)と京都の禁裏(天皇)の二重権力体制だった。
1825年4月頃(文政8年3月)、常陸国の統治者、28歳の徳川斉脩(とくがわ・なりのぶ、1797年4月12日~1829年10月31日)に献上するため、42歳の会沢正志斎(あいざわ・せいしさい、1782年7月5日~1863年8月27日)が、天皇崇拝の公共道徳と日本民族界の軍事防衛を説く『新論』を述作した。
同書を教科書として、常陸国の一部の武士を中心に、日本全国を統一民界とみなす考え方が広まり始めた。
1857年(安政4年)、江戸で、正志會津先生著『新論』全二冊(玉山堂)が刊行された。
1936年(昭和11)年3月15日発行、日本弘道會有志青年部編『國體明徴國民讀本』(文英社、1円)の「國體」に従って、冒頭の一節を読み下す。
1862年9月24日(文久2年閏8月1日)、会津国統治者の26歳の松平容保(まつだいら・かたもり、1836年2月15日~1893年12月5日)が、大阪城代、京都所司代、京都・大阪・奈良・伏見の各奉行の上位にあり、非常時は京阪神の軍事指揮権をもつ京都守護職に就任した。
1863年4月21日(文久3年3月4日)、将軍として230年ぶりに、16歳の徳川家茂(とくがわ・いえもち、1846年7月17日~1866年8月29日)が上洛し、徳川一門の公儀の老中(将軍後見職)、25歳の一橋慶喜(ひとつばし・よしのぶ、1837年10月28日~1913年11月22日)と、31歳の天皇(1831年7月22日~1867年1月30日)と共に、京都鎮護の神を祀る賀茂(かも)神社を参拝した。
将軍が上洛したのは230年ぶり、天皇が公式に御所を出たのも237年ぶりのことだった。
1863年9月30日(文久3年8月18日)、薩摩国(さつまのくに)の武士は陸奥国(むつのくに)の武士らと連合して、急進的な王政復古・開戦派の公家、長門国(ながとのくに)の武士らを京都の朝廷から一掃した。
陸奥国の武士の下で京都市中の治安維持にあたっていた壬生浪士(みぶろうし)組は御所の警備を担当し、新撰組(しんせんぐみ)と改称した。
1863年の日本の推計人口は約3,300万で、15歳~64歳の人口は約2,100万、15歳未満の子供の人口は約1,000万人、65歳以上の人口は約200万だった。
1964年3月18日(元治元年2月11日)、長門国征伐のため、28歳の松平容保が京都守護職を辞し、陸軍総裁に任じられた。
1864年4月30日(元治元年3月25日)、26歳の一橋慶喜が朝命により、将軍後見職を辞し、禁裏守衛総督に加え、摂海(せっかい)(大阪湾)防御指揮に任じられ、京阪神の軍事司令の最高責任者となった。
1864年5月2日(元治元年3月27日)から1865年1月17日(元治元年12月20日)にかけて、公儀に敵対する常陸国の武士の王政復古・開戦派のうちの急進派が常陸(茨城県)、下野(栃木県)、下総(千葉県北部と茨城県の南部)に各地の農民を率いて関東各地また中山道に転戦した事件は「天狗党の乱」と呼ばれる。
天保(1830年~1844年)の頃から常陸国改革派の武士を天狗と呼ぶ習慣があった。
1864年5月2日(元治元年3月27日)、常陸国の急進的な王政復古・開戦派(天狗党)が「尊王攘夷(そんのうじょうい)」(天皇を唯一の最高権力者と死、通商を迫る外国を武力で追い払う政策)を旗印に筑波山に挙兵すると、郷士、神官、博徒、農民ら約1000人がこれに加わった。
1964年5月12日(元治元年4月7日)、28歳の松平容保が京都守護職に復職した。
1864年5月16日(元治元年4月11日)、公儀は京都市中の取締りを担う所司代(しょしだい)に、28歳の松平容保の弟、17歳の松平定敬(まつだいら・さだあき、1847年1月18日~1908年7月21日)を任じた。
1864年5月25日(元治元年4月20日)、26歳の一橋慶喜の構想に基づき、32歳の天皇が18歳の将軍・家茂に政務を委任した。
ただし「国家之大政大義」は例外で、朝廷に伺いを立てるものとされた。
1864年8月8日(元治元年7月7日)、諸国連合軍と天狗党との戦闘が始まった。
1864年11月15日(元治元年10月16日)~12月22日(11月24日)、アメリカ連合国の大内戦終盤、北軍の44歳のウィリアム・シャーマン(William Sherman、1820年2月8日 ~1891年2月14日)将軍がアメリカ同盟国(Confederate States of America)(南軍)の早期降伏を目的として、南部同盟国の中心ジョージア国(State of Georgia )のアトゥランタ(Atlanta)から南東約400キロ先の港町サヴァナ(Savannah)までの主要部を、50キロから100キロ幅で破壊進撃した。
1865年2月(元治2年1月)、天狗党に加わった罪で、上総(千葉県)久留里に禁固中の常陸国の武士・林忠左衛門(1840年~1865年)が病死し、20歳の妻・中島歌子(1845年1月21日~1903年1月30日)も連座して2か月間投獄された。
山内昌之、中村彰彦『黒船以降:政治家と官僚の条件』
2006年(平成18年)1月10日、58歳の山内昌之(1947年8月30日~)、56歳の中村彰彦(1949年6月23日~)著『黒船以降:政治家と官僚の条件』(中央公論新社、本体1,800円)が刊行された。
2009年(平成21年)1月25日、「中公文庫」、中村彰彦、山内昌之著『黒船以降:政治家と官僚の条件』(中央公論新社、本体762円)が刊行された。
同書の第二章「徳川斉昭と水戸学」より引用する(117~118頁)。
朝井まかて『恋歌』
2013年(平成25年)8月21日、中島歌子の生涯を描く、53歳の朝井まかて(1959年8月15日~)著『恋歌(れんか)』(講談社、本体1,600円)が刊行された。
装幀は川上成夫(?~2017年12月25日)だ。
2014年(平成26年)1月16日、第150回平成25年/2013年下半期直木賞の受賞作が、朝井まかて著『恋歌』、2013年(平成25年)9月10日発行、55歳の姫野カオルコ(1958年8月27日~)著『昭和の犬』(幻冬舎、本体1,600円)に決定したことが発表された。
2015年(平成27年)1月5日、21:00より23:24まで、フジテレビで『SMAP×SMAP』『バカ殿様も杏も東出昌大も斎藤工もめでたい新春SP!』が放映された。
SMAPメンバーが調理中、読書家として知られる28歳の杏(1986年4月14日~)が昨年刊行された本の中からおススメベスト3を紹介した。
3位は犬の目線で幕末・明治を描いたノンフィクション、2014年(平成26年)7月25日発行、仁科邦男(にしな・くにお、1948年~)著『犬たちの明治維新:ポチの誕生』(草思社、本体1,600円)、2位は2011年3月11日の東日本大震災後に赴任した教師と子どもたちの交流を描いた、2014年(平成26年)3月11日発行、51歳の真山仁(1962年7月4日~)著『そして、星の輝く夜がくる』(講談社、本体1,500円)、1位は『恋歌』だった。
2015年(平成27年)10月15日、「講談社文庫」、朝井まかて著『恋歌』(講談社、本体720円)が刊行された。
帯表紙に29歳の杏の「彼女の恋を追いかけるのに、立ち止まる必要は無かった」の推薦文が掲載された。
三好十郎『斬られの仙太』
1934年(昭和9年)4月21日、31歳の三好十郎(みよし・じゅうろう、1902年4月23日~1958年12月16日) 著『天狗外傳:斬られの仙太』(ナウカ社 、1円)が刊行された。
装幀は24歳の島公靖(1909年6月13日~1992年7月25日)だ。
常陸国の真壁の荒地沼地開墾の新田の百姓・仙太郎が、偶然にも水戸浪士・加多源次郎と長州藩士・兵藤治之と出会い、天狗党に入党する。
1934年(昭和9年)5月12日から31日まで、築地小劇場で、中央劇場、三好十郎作、36歳の佐々木孝丸(1898年1月30日~1986年12月28日)演出『斬られの仙太』が初演された。
1949年(昭和24年)4月5日、森田信義プロダクションの第一回作、三好十郎原作、46歳の瀧澤英輔(1902年9月6日~1965年11月29日)脚色・演出、37歳の藤田進(1912年1月8日~1990年3月23日)、30歳の花井蘭子(1918年7月15日~1961年5月21日)主演の映画劇『斬られの仙太』(95分)が公開された。
1967年(昭和42年)は、慶応3年10月15日(1867年11月10日)の大政奉還から100年目の年だった。
1967年(昭和42年)1月1日から1973年(昭和48年)4月25日まで『朝日新聞』朝刊に大佛次郎(おさらぎ・じろう、1897年10月9日 ~1973年4月30日)の歴史小説『天皇の世紀』が1,555回連載された。
1968年(昭和43年)8月31日から9月26日まで、東横劇場で、劇団民藝、三好十郎作、53歳の宇野重吉(1914年9月27日~1988年1月9日)演出『斬られの仙太』が公演された。
第四場と1884年(明治17年)8月末に設定された最後の第十場を削除したものだった。
1968年(昭和43年)10月1日から9日まで、名古屋・名鉄ホール、10月11日から13日まで、神戸・国際会館、10月15日から26日まで、大阪・毎日ホール、10月27日から11月2日まで、京都会館第二ホール、11月3日、京都・ヤサカ会館、11月5日、福井市文化会館でも公演がおこなわれた。
1969年(昭和44年)2月25日、大佛次郎著『天皇の世紀』第1巻「黒船」(朝日新聞社、1,300円)が刊行された。
映画劇『天狗党』
1969年(昭和44年)11月15日、三好十郎『斬られの仙太』原作、59歳の山本薩夫(1910年7月15日~1983年8月11日)監督、36歳の仲代達矢(なかだい・たつや、1932年12月13日~)、31歳の加藤剛(かとう・ごう、1938年2月4日~2018年6月18日)、35歳の若尾文子(わかお・あやこ、1933年11月8日~)共演[のカラー映画劇『天狗党』(105分)が公開された。
併映は、37歳の石松愛弘(1932年6月1日~)脚本、43歳の井上芳夫(1926年9月8日~?)監督、27歳の江波杏子(1942年10月15日~2018年10月27日)主演、「女賭博師」シリーズ第十五作『女賭博師花の切り札』(85分)だった。
1969年(昭和44年)12月、大映レコードから、大映映画「女賭博師シリーズ」主題歌、江波杏子(歌)、大映レコーディング・オーケストラ「銀子の唄」(4分06秒)、大映映画「女賭博師シリーズ」主題歌、「いのち花ブルース」(3分17秒)のシングル盤(D-103、370円)が発売された。
作詩は丹古晴己(たんご・はるき、1923年11月11日~2012年9月7日)、作曲は鈴木淳(1934年2月7日~ 2021年12月9日)、編曲は湯野カオル(1939年6月30日~)だ。
テレビ劇『天皇の世紀』第一部・第13話「壊滅」
1970年(昭和45年)8月15日、大佛次郎著『天皇の世紀』第5巻「長州」(朝日新聞社、1,300円)が刊行された。天狗党の乱の話が収められた。
1971年(昭和46年)9月4日から11月27日まで、朝日放送開局20周年記念番組として、22:00~23:00、TBSで、大佛次郎原作、1話完結、全13話のテレビ劇『天皇の世紀』が放映された。
音楽は40歳の武満徹(1930年10月8日~1996年2月20日)だ。
1971年(昭和46年)11月27日、TBSで、『天皇の世紀』第一部・第13話、59歳の新藤兼人(1912年4月22日~2012年5月29日)は脚本、60歳の吉村公三郎(よしむら・こうざぶろう、1911年9月9日~ 2000年11月7日)監督「壊滅」が放映された。
20世紀以後にすたれた用語が用いられている上、歴史・地理上の固有名詞の説明が不足気味で、関連する歴史や地理に疎い者には、叙述の細部や人間関係、地理関係がわかりにくい。
64歳の滝沢修(1906年11月13日~2000年6月22日)のナレーションには、地名などの読み間違いと思われる箇所もあるし、聞き取りづらい箇所も多い。
武田耕雲斉を加藤嘉(かとう・よし、1913年1月12日~1988年3月1日)が演じた。
松平頼徳を入江正徳(1927年3月13日~)が演じた。
山国兵部を香川良介(1896年10月10日~1987年4月17日)が演じた。
2021年(令和3年)5月25日、「新潮選書」、57歳の片山杜秀(かたやま・もりひで、1963年8月29日~)著『尊王攘夷:水戸学の四百年』(新潮社、本体2,000円)が刊行された。
『新潮45』(新潮社)2015年(平成27年)8月号~2018年(平成30年)10月号、『新潮』(新潮社)2019年(令和元年)7月号~2020年(令和2年)8月号に連載された『水戸学の世界地図』を加筆・改題した。
同書の第七章「「最後の将軍」とともに滅びぬ」、四「三島由紀夫の曾祖母の兄の切腹」より引用する(440頁)。
田沼意尊・玄蕃頭を森幹太(もり・かんた、1924年1月19日~2000年11月15日)が演じた。
元治元年10月5日(1864年11月4日)、水戸藩の支族・松平頼遵邸にて、33歳の松平頼徳は切腹させられた。
元治元年10月16日(1864年11月15日)、20歳そこそこの田中原蔵が久慈川の河原で斬首された。
一橋慶喜を松橋登(1944年11月3日~)が演じた。
武田金次郎を村田則男(1948年6月14日~2013年7月5日)が演じた。
1974年(昭和49年)7月30日、作者の死後刊行となった、大佛次郎著『天皇の世紀』第10巻「金城自壊、総索引」(朝日新聞社、2,000円)が刊行された。
山田風太郎『魔群の通過』
1978年(昭和53年)1月30日、天狗党の乱を描く、56歳の山田風太郎(やまだ・ふうたろう、1922年1月4日~2001年7月28日)著『魔群の通過』(光文社、980円)が刊行された。
装幀は39歳の辰巳四郎(たつみ・しろう、1938年3月24日~2003年11月5日)だ。
劇団文化座『斬られの仙太』
1988年(昭和63年)2月4日から14日まで、サンシャイン劇場で、劇団創立45周年記念・三好十郎没後30周年記念、劇団文化座、53歳の秋浜悟史(あきはま・さとし、1934年3月20日~2005年7月31日)演出『斬られの仙太』が公演された。
吉村昭『天狗争乱』
1994年(平成6年)5月1日、天狗党の乱を描く、66歳の吉村昭(1927年5月1日~2006年7月31日)著『天狗争乱』(朝日新聞社、税込1,800円)が刊行された。
上村聡史演出『斬られの仙太』
2021年(令和3年)4月6日から24日まで、東京・初台の新国立劇場の小劇場で、「人を思うちから 其の壱」、三好十郎作、41歳の上村聡史(1979年7月18日~)演出『斬られの仙太』が公演された。
仙太を45歳の伊達暁(だて・さとる、1975年7月14日~)が演じた。加多源治郎を35歳の小泉将臣(1986年2月18日~)が演じた。
2021年(令和3年)6月6日、23:20より27:06まで、NHK BSプレミアム「プレミアムステージ」で新国立劇場『斬られの仙太』の舞台公演録画が放送された。
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