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CS×SaaS未経験スタートから1年、担当顧客のチャーン0・NRR成長率130%を達成する過程で得た学び

そもそもカスタマーサクセスって何でしょうか?

早速Gainsight社の定義を拝借します。

カスタマーサクセス=ビジネスの持続的成長のためのエンジン

引用:Gainsight

私自身この定義はしっくり来ていますし、日々お客様のビジネスを成長させるために邁進しています。
では、そもそも顧客のビジネスゴールを正しく把握できているでしょうか?
また、それを達成するための課題設定を、自身が担当させて頂いている顧客全てと擦り合わせることが出来ているでしょうか?
本noteは、丁度1年前の7月1日にCS業務未経験の中LeanerのCSとしてジョインし、この1年間で得たLeaner×エンタープライズCSの学びをまとめた記事となっています。

私は誰で、どんなことをしているか

自己紹介

サウナin韓国


はじめまして。Leaner TechnologiesのCSM兼専属熱波師の郷田光希です。
という自己紹介をした入社エントリーがあるので、お手すきでご覧下さい!
リクルートの人材領域でSMB~エンタープライズセールスを6年→Leaner CSを1年という経歴です。
昨年の7月1日に入社し、早いもので1年が経過しました。
上記の通り、CS経験は全くなかったので、例えば「ハイタッチ/テックタッチ」とか「リニューアルマネジメント」といったものは、1年前に初めて聞いたというレベルです。
そんな私でしたが、現在は既存顧客+トライアル顧客併せてARR8,000万を任せて頂き、トライアル→本契約へ移行するとARR1.2億となります。もう少し背伸びして、ARR3億を任せて頂くことが直近の目標です。
またこの1年間でお客様のチャーンもゼロに抑えることが出来ており、Leanerというプロダクト価値を適切に顧客に伝達させ、ビジネス成果を創出できていることが素直に嬉しいです。
このような成果を残すことができたのは、セールス経験だけがある中、いい意味で「世の中一般のCS常識」を知らないまま進めたことにより、「真摯に顧客のサクセスに向き合う」ことのみにフォーカスしてアクションをし続けたからだと思っています。

LeanerCSの業務内容

主に製造業のエンタープライズ顧客に対し、オンボーディングの実施・リニューアルマネジメント・Devへの開発要望接続、開発ロードマップの擦り合わせ等が具体業務として挙げられます。
業務としてはなんら特別なことはありません。
ただ、これらの業務を遂行するにあたって、何を念頭にそれぞれの業務を行うかがめちゃくちゃ大事だと感じているので、その内容を記載していきます。

エンタープライズCSとして意識している3つのこと

私は顧客と向き合うときには3つのポイントを意識しています。

①顧客の各ステークホルダーのAsis、Tobeを把握し、Tobeを実現するための運用を浸透させること
②顧客からの機能改善要望を受ける際は、その背景を深堀すること
③顧客のサクセスの増大とともに、自社のLTVも上げていくこと

カスタマーサクセス=顧客のビジネスゴールの達成を支援する担当、と考えるならば、どれも当たり前のことかもしれません。
CS未経験ながらに、この1年意識していたことを1つずつ詳しく説明します。

①顧客の各ステークホルダーのAsis、Tobeを把握し、Tobeを実現するための運用を浸透させること

「ドリルを買いにきた人が欲しいのはドリルではなく『穴』である」という有名なマーケティング用語があります。
これはCSの領域でも同じだと思っていて、顧客は「ビジネスゴール達成のための障壁になっていることを解決したい」のであって、「自社サービスの機能を隅から隅まで使ってみたい」わけではありません。あくまで自社サービスは、顧客の課題解決の手段として活用されるべきものです。
この前提に立つと、必要なアクションは勝手に決まると思っています。

営業資料から抜粋
  1. 顧客のあるべき姿(To-be)を正しく把握する

  2. あるべき姿の実現のために、障壁となっている問題点(As-is)を正確に把握する

  3. 障壁を取り除くためのサービスの運用方法を提案し、社内に浸透させていく

また、あるべき姿については、対面にいる推進担当者だけではなく、顧客内のあらゆるステークホルダーの観点から把握しておくことが非常に重要です。
いわゆるEconomic buyer(一般的には経営層にあたることが多い。以下EBと略)が考えていること、推進担当者(部課長クラス)が考えていること、実際にサービスを使う現場の方々が考えていることは、当然ながら違います。

  • EB:コストダウン・売上アップなどの経営的なメリットを出してほしい

  • 推進担当者:現場にシステムを浸透させて、業務効率化・標準化を図りたい

  • 現場:とにかく今行っているアナログな業務を楽に終わらせたい

例えばですけど、上記のように考えていることは顧客の立場によって大きく変わりますよね。
現場の実ユーザーの声だけに耳を傾けてSaaSを運用しても、実質的な経営インパクトにつながっていなければ、EBとしては導入後の更新に納得してくれないでしょうし、逆にEBの意見だけを聞いて、現場に一切意見を聞かなかったりすれば、運用が浸透せずまったくシステムが使われないということもあり得ます。
重要なのは、すべてのステークホルダーの考えているあるべき姿を正しく把握し、プロジェクトを進行させていくことだと考えています。
The modelで組織を分けている場合、当然AEやFS担当が上記を把握したうえで受注してきていると思いますが、CSは顧客と付き合う期間が相対的に長くなるので、「すべてのステークホルダーのやりたいことを理解していること」の重要性は、より高くなると思います。

特に、導入当初はある種半強制的にやっていくことになりますが、利用期間が長くなればなるほど、導入初期に接点があったレイヤーと疎遠になる可能性があります。どうしても日々接する機会が多いのは推進担当者であることが多いと思います。
ただ、現場の意見も取り入れないと「実は使いづらい部分があって、本来行うべき運用ができていない」可能性もありますし、EBへの成果報告などを怠っていると、「このプロジェクトって成果出てるの?本当に継続する必要あるの?」と指摘されることもあるかもしれません。
CSとして話しやすい人とだけ話すのではなく、お客様のビジネスゴール達成のために必要なステークホルダーとはちゃんと接点を作りに行くことが大事です。

毎回何かしらデータを確認してきっちり資料を作り、数時間のMTGの場をセットして…これだといくつ身体があっても足りないと思います。
各レイヤー毎に好ましいコミュニケーション手法・頻度を早期に掴み、粘着質に絡みに行くことをしています。
ログイン率がどうのこうの、この機能が使われている使われていないというデータを見て頭を悩ませるくらいなら、実ユーザーにサクッと電話して、「あなたの実現したい事は出来ていますか?出来ていないのであればそれはなぜですか?」と問うた方が早いケースも時にはありますよね。

②顧客からの機能改善要望を受ける際は、その背景を深堀すること

CSとして日々顧客と接していると、様々な要望を受け取ることが多いと思います。
「ここの機能ってもっと使いやすくならないの?」
「もっとこういう機能があれば、使いやすくなるのになあ」
などの要望は無限に出てくると思います。
顧客から要望を伝えられることは、それだけ自社サービスに期待いただいていることの裏返しなので、それ自体はポジティブなことだと思います。

その中で重要なのは、「その要望を機能実装すると、顧客に返す価値が増幅するのか?」というスタンスで要望を聞くことだと思います。
顧客のビジネスゴールの達成に必要不可欠であれば機能として実装するし、そうでなければ運用の改善で乗り越えられないかを考えるスタンスは重要だと思います。
これがないと、無限に受ける要望をすべて機能として実装し、結果として使いづらいプロダクトが出来上がる、ということにもつながりかねないです。エンジニアのリソースも無限ではないので、どんどん開発スピードも落ちてしまうでしょう。

顧客から「このような機能があったら嬉しい」といった要望を受けた場合、「分かりました!社内で検討します!」と簡単に持ち帰るのではなく、「その機能がなぜ必要なのか?」の背景を深堀することが重要です。
この背景の深堀がないと、開発チームと連携する際、要望の重要度や優先度がわからず、どの要望から機能実装を検討すべきなのか、の判断がつかなくなってしまいます。
なので、普段の顧客とのコミュニケーションの中で、「何か困っていることはないですか?使いづらい部分はないですか?」といった意見の聞き方は一切したことがありません。

あくまで顧客とディスカッションすることのメインは、「どのように課題を解決するか」であり、その中で「実は○○に困っていて・・・」という意見が出てきたら、その背景を深堀し、「顧客が欲しい機能」ではなく「実現したいこと」ベースで社内に共有するようにしています。
幸い、現職ではBizDevMixの考え方が浸透していて、エンジニアも「顧客の課題解決をする」ことを一番に考えているチームなので、連携がうまく行っていると感じます。
何か顧客から機能改善要望が出てきた際に、

CS:顧客が本来実現したいことは何か、ビジネスゴール達成のネックになっているのはどこか、の背景を整理する
Dev:上記背景を理解し、プロダクトとして最も良い解き方を考える

といった役割を分けています。お互いの専門領域を分けた上で、一緒に「顧客の課題解決をする」という1つのゴールに向かって連携しているのは、私自身も働きやすい環境だと感じています。

③顧客のサクセスの増大とともに、自社のLTVも上げていくこと

CSとして顧客のサクセスが増幅していれば、当然ビジネス的なインパクトにつながっているはずです。なので、自社のLTVも自然に上がっていってもおかしくないでしょう。
提供価値が増えているのであれば、対価としてサービスの提供価格をアップする提案を行っても問題はないはずです。顧客への提供価値が増えているのに、同じ提供価格でステイさせているのはビジネスとしてもおかしいですよね。ちゃんと返せている価値が増えているなら、自信をもって提案しましょう。

逆に、顧客に価値を返せている自信がないからアップセルの提案ができない、だとすると、ちゃんと顧客のサクセスに向き合うのが最優先だと思います。顧客に価値が返せているかどうかわからない状態で「テックタッチを導入して顧客の活用状況を知ろう!」という取り組みをやったとしても、あまりうまく行かないのではないでしょうか。
まずは顧客の生声をちゃんと聞きに行くこと。自社サービスのどこに価値を感じてもらっていて、どこに不満があるのかを正しく把握するのが第一歩だと思います。

繰り返しになりますが、「顧客のビジネスゴールを正しく把握し、その達成のために伴走すること」を心がけるのが、LTV向上のための王道であるし、これ以外の近道はないんじゃないかなと感じます。
常に顧客に価値を返し続けていれば、そもそもチャーンすることはあり得ません。提供価値が増幅していれば、NRRも向上していくはずです。
なので、極端なことを言うと、「チャーンレート」をCSのKPIとして設定するのは、そもそも間違っていると感じます。指標の1つとして、チャーンレートを見るのはいいかもしれませんが、KPIではないのかなと。あくまで向き合うべきは顧客のサクセス、それを証明する指標はNRRではないでしょうか。

さいごに

ここまで記事を読んでいただき、誠にありがとうございました!
色々書いてきましたが、私自身まだCS経験としては1年。悩んでいることも非常に多いです。
最近は、テックタッチ・ハイタッチ みたいな「こういう施策をやっています」という話ではなく、「顧客対応する時間が無限じゃない中で、どのような優先順位で時間を使っているか」に興味があります。
エンタープライズCSとして、担当する顧客数も増えていく中で、使う時間の優先度をどう考えているか、もし同じ悩みを持っている方がいらっしゃいましたら、ぜひ気軽にディスカッションできればと思います!
TwitterでリプかDMください!(ほとんど見る専ですが、きたメッセージはちゃんと確認してます笑)
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