就活と恋愛
就活と恋愛はよく似ている、という話ではない。わたしの就活と恋愛の話をする。
わたしは語れるほど、沢山の恋愛をしていない。大学1年の春に付き合った彼女が、そのまま今の妻だ。
就活がきっかけで別れるカップルは約3割いる、という。反対に就活がきっかけで付き合うカップルもまた、約3割いるという。
どちらもまぁ、なんとなくわかる。
多くの大企業では、入社するまで配属先もわからない、その後も転々と配置換えがあるかもしれない。
いまはとても近い距離で過ごしている2人も、それぞれの選んだ道、選びたい未来の仕事をするのに、ずっとその距離を維持することはできないかもしれない。
一方で、同じ道を志す仲間に出会う。同じ未来に向かって進むもの同士で、分かり合える喜びがある。自然と近しい間柄になっても、おかしくはない。
欲張りな私たちは2人のやりたいことも、一緒にいられることも、諦めたくなくて、必死で話し合って、考えて、それぞれの就職先を選んだ。
企業からしてみれば、ものすごく不純な動機かもしれないけれど、私たちにとってはとても純粋な気持ちに従った選択だった。
2人で東京に行き、それぞれが会社の寮に住まい、お金を貯めて、いろんな町を歩いて、2人で住める場所を探した。
そうやって、結婚して、いまはわたしが何故か主夫してる。
大学の名前のおかげで、就活自体はさほど苦労しなかったけど、2人の進む道を揃えて歩くための話し合いが、最も苦労したことだった。
というようなことを、就活の苦労話として話すと、みんな呆れたような感心したような反応を返してくれる。
たいていの男性は、そんなこと考えもしなかった、と話す。あるいは、私もそんな風に考えてほしかった、と泣く女性もいた。
本当は、すべての大学生のカップルに、特に男性に考えてほしい。
あなたのキャリアは、あなただけで築いていくものなのか、それともパートナーと一緒に歩んでいくものなのか。
頻繁に転勤させられるシステムに、私たちの人生が振り回されていていいのだろうか。
私たちはいまの恋愛を放り投げてまで、就活をしなければならないのか。
そして女性の側にだけ、キャリアを諦めることを押しつけてはいないだろうか。
いま私は主夫をしているから、家事も育児もまぁやるのだけれど、たまに「パパのスイッチが入ったのはいつ?」と訊かれることがある。
スイッチが入ったのは、就活をしていた大学3年生のときだった。あの頃1番ケンカして、ぶつかって、同じ方向を向く覚悟ができたから、今がある。
なかなか、ここまで話すのも恥ずかしいので、笑ってごまかすことも多いのだけれど。
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