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季節いろいろ〜肩を張らずにフランス30

今は夏。だから暑い。

新学期が始まると秋の空気が流れ込み始める。10月に入ってしばらくするとセントラルヒーティングにも火を入れる。

冬は寒い。

寒くて暗い冬が終わると緑の春がやってくる。



季節は地球が傾いた状態で太陽の周りを回っている限り間違いなく変わる。日本もフランスも例外ではない。

フランスは日本よりも緯度が高く位置している。大雑把に言って北海道の高さくらいだと思えばいい。ただ大西洋の暖流の影響で北海道ほど寒くはならない。

緯度が高いと何がどう違うの?

季節によって昼と夜の時間の差が日本よりある。例えば夏至の頃は日の出が5時半頃、日没が22時半頃になる。夜は7時間しかないことになる。当然冬至はその逆で昼が7時間しかない。今は夏。昼間の太陽は感覚的に頭の真上にある。冬場は目を上げた程度の高さにしか上がらない。

ノルウェーの北部まで行くと陽が沈まない/夜が明けない状態になる。フランスはそこまで極端ではない。


日本からフランスに来て何年か経って気づいたのは、日本の「四季」はこちらと比べてずっと明確に分かれているということだった。

『夏のカンカン照り。ジッとしていても汗がダラダラ出てくる亜熱帯的な暑さ。昔の日本家屋は風通しも考えて建てられていた。夏ほどそれを実感する季節はない。

台風がいくつか通り過ぎ、残暑を乗り越えると紅葉の季節が始まる。秋は日本の四季の中で一番好きな季節。それと同時に一気に空気の温度が下がり始める。

木々の葉が散りぐっと寒くなると日本の冬の到来だ。湿度だけは一年を通して高いので冬はキッチリ身支度をしないと寒気が体に滑り込む。こたつに暖まり、ストーブで餅を焼いた子供の頃の記憶は懐かしい。

氷が溶け空気が肌に刺さらなくなると、新芽が出始め春の息吹が感じられるようになる。桜が咲くと春真っ盛り。「北風と太陽」の寓話を思い出す。

そうこうするうちに梅雨に入る。蒸し暑さが増し春が終わり、厳しい夏までもうすぐそこという時期になる。』

大阪箕面の紅葉

フランスではここまで季節の区切りを感じることはない。

『夏真っ盛り。炎天下だと35度はあっても家に入るとひんやりする。汗は出ない。時々雷と雨がやってくる。平地だからか「ドンガラガッシャーン!」と肝を冷やすほどの雷は滅多にない。台風のような熱帯性低気圧もやってこない。

日本では「ひと雨ごとに」季節が移るというが、フランスでは雨で天気が移ろうことはあってもそれで季節が進んだという実感はない。少しずつ秋に入っていることはさっきも言ったセントラルヒーティングで明らかなのだが、夏がなかなか手を離してくれない。じわじわと暑さが抜けていく。

秋だからといって日本のような紅葉もない。いくつかの木々が黄色かオレンジに変わる程度で、あの絵の具をぶちまけたような風景になるでもなく、なんとなく冬の様相を呈し始める。木々が活動を休止する過程はこちらの方がよくみてとれるかもしれない。ゆっくりと時間が静止に向かっていく。

フランスは気候の違う地方のカタログのよう。一通り揃っている。雪に埋もれる山岳地方も、海の湿気に悩まされる地方も、年中太陽に恵まれる地方もある。うちの地方では雪は降ってもほとんど積もらない。氷点下5度以下の寒さが1週間、冬の間に何度かやってくる。季節は意識しないところでじわじわ進んでいく。

春は日本にない「嵐」が吹くことが多い。台風並みの大風が吹く。瞬間最大風速25mになることもある。「嵐」がくる頃には木々に新芽が膨らみ始まるので春が近いとわかる。けれども5月に入るまでは氷点下になることもあるので、畑に野菜を植えるのも控えないと凍ってダメにする可能性がある。スッキリ春になってくれない。

短い春が訪れたと思ったら、もう太陽が熱く感じられる時期になっている。梅雨のような季節雨もない。夏はもうすぐそこまで来ている。』

tempête 嵐

季節の移り変わりをざっと追ってみた。地方によってかなり違いのあるところだが、平地であればどこも大方こんな感じだろうと思う。

正直を言うと、いつかもう一度日本の春と晩秋を見たい。今は学校生徒のリズムで働いているので、日本に帰るのは夏と冬と初秋に限られている。

あと何年かしたら定年。先のことは極力考えないようにしているが、その時が来たらゆっくりとあの季節に再会したいと思う。

箕面の滝

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