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ポエム・エッセイ

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ポエムのまとめです。わたしの頭の中は、こんな感じです。
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2023年5月の記事一覧

一瞬の出来事。

軽症は、かしこくて治りも早い。 傷付いたことにも気が付かない。 簡単なことで跡も残らないだろう。 なにも残らないだろう。 重症になりたい。 何も残らないだろう。 簡単なことで跡も残らないだろう。 傷付いたことにも気が付かない。 もう、どっちかわからない。

寝るために起きて、夢見るために今日を過ごす。

寝るのが好きだ。 これをすごく恥ずかしいことのように感じてしまう。それでも、ひっそりと思う。眠たいときの瞼の重さも、起きたくないと考え出すよりも前のなんにも頭の中に入っていないリラックスした、悪く言えば、ぼーっとしてるだけの時間も。それから、意識は起きているけれど全然目を開ける気のない時間と、そのとき肌に当たるスベスベした感覚に足が熱くなったら少し出して感じるヒンヤリ感も好きだ。 ぐうたらしてることを優雅と言ってほしい。 決められた素材を華麗に刻んで調理するシェフの料理を味

高い電気代を払うか、それより高い旅行をするか。

水田がキラキラと反射して、緑が周りの風に色と匂いを広げている。その稲は、「クレヨンしんちゃん」でおなじみの野原ひろしのヒゲのように、ピンと立つ。まだ風に揺られるほどの長さはない。そんな青いひろしのヒゲは、等間隔で並んで青空を指す。 「クレヨンしんちゃん」には、夏のはじめをイメージさせられる。なんとなく、夏が似合う気がするのだ。映画の印象なのだろうが「家族旅行」をテーマとして感じるからだ。一見、SF的な流れが多く協力して悪を倒すことになるが、それこそが大きな括りでの「家族旅行

ぼくは冷たくて構わない。

人の努力を「運だ」と言いやがる輩らが近くにいる。本人は、世間話か優しさなんかだと思っている。だから、たいした理由もなく、よく分からないからとブレーキをかけたがる。そして、世間でよく行われているような「願掛け」をしてからなにかを始めさせようとしてくる。だから成功すれば願掛けが効いたことになり、失敗すれば貴方の努力が足りないか見込みが甘いなどと言ってくるのだ。 さらにこの手の輩は、人にやってもらったことも自分が達成してきたことのようにカウントして生きている事が多い。だから貴方がア

硝子の下に入る。

雨が降っている。 雨の柔らかさと硬さが同時にわかるから、ぼーっと眺めていられる。このパラパラとした音が良いのだろう。エンジンを切った車のラジオが流れていても雨の音は嫌にならない。 同じものの繰り返しでは無いのがわかる。音で、大きさと重さを感じる。フロントガラスに当たった破裂の形で、スピードと水量が見える。滴る液体が、硝子の傾斜と摩擦を教えている。 初めて硝子の下に潜った人は、遊びの天才だろう。好奇心を隠さない人は、なんだろう、格好いい。 それから、もう一つ。 雨の音がして

意識を集中するとき、無意識で呼吸する。

今日、ぼくは魂の半分を手放すつもりだった。 そのために、朝早くに出かけて段ボールを買ってきた。正直、まだ迷っていた。だって僕の魂なのだ。小さい頃からすこしづつ集めてきたて、今日まで、いや今日も大事に持っているものだ。それをこれから半分捨てようとしている。誰だって躊躇うさ。そう考えながら家に帰ってきた。 魂を取りに向かう。 場所なんて分かってるさ、僕の魂なんだから。当然さ。 片手に持てるだけ取り出して眺める。外側の色を見て随分と色あせたことに目が留まる。そこに書かれた模様にな

明日が来るまで遊んで待つ

夜風が何とかしてくれると思って部屋の窓を開けた。 あれこれ考えるのが嫌になって、この窓から外に出るんだ。 逃げるんじゃないんだよ。 すこし遊びに出るだけだから、そんなに心配しないで。 たまにやってることだから大丈夫。また帰ってこれるはずだよ。 イヤフォンを耳に入れる。Bluetoothは便利だ。 お気に入りでも誰かのプレイリストでもいいから、今日の声を探す。 ベースがブンブン震えてピアノがはじけ飛ぶ。ドラムが空気をへこませながら耳のなかを行進してくるから、そしたら目を閉じる

夏に向う春

下水の音すら涼しく聞こえる暑さが嫌になった。今年もこの調子なのかと午後の空を見る。 湿気はない。 近くの無人駅を出た列車が通り過ぎる。 風は気持ちいいから雀が求愛して飛び回るのを見ても目を瞑ることができた。気持ちよくは無い、そんな眠気がべっとりと目のまわりを覆う。 ぼくは寒いほうが好きだ。あの罪深い気持ちにさせるには十分なほど暖かい毛布が好きだ。 駄目だ、今は考えたくない。 自然と目が閉じる。このまま寝たら、確実に寝汗をかくだろう。そして、気分悪く目覚めるから眠りたくない。

幸せについて

ヒタヒタに、お湯を張る。 それだけで良いとも悪いとも、この時点では決められない。 幸せだってそれと同じはずで、その時点で決まるものではないというか、決める決めないじゃなくて。 小さい幸せにだって、たとえば足湯だったり無数のドクターフィッシュが角質をつつくのを上から見下ろす時間だったりで。 水が勿体ないって言われても関係なく後頭部を伝うシャワーの温度が大好きで、それが只々、排水溝にながれるからと周りから顔をしかめられたって、偉そうな学者や占い師が地球環境を訴えたってそれをや

目を瞑ってもわかる光景

渇きを癒す生き物はいつだってEroticに音を立てるから、それを聞いたオスたちは思考をやめる。逃げる水を吸い寄せる体と、だらしなく開いた口。その中心で好奇心だけで動き回る舌。でも一番いけないのは、音をさせている喉なんだ。 小さく何度も跳ねるような、高い音が繰り返し漏れ出ている。傍から見れば、力みの無い、ただ決められた道筋をなぞるように淡々と行われる行為でも、その道筋は視線だけで確認し合える二人だけが知る道だ。さらには浮き出た血管の感触まで利用して、張り巡らされた脈の位置まで互

いつか、選べるなら。

鬼になりたい。 ひとりが好きで無言に耐えられるというか、どちらかというと話しかけられる可能性を潰しておきたいほど静寂に憧れを感じてしまう。 風のこすり合うだけの夜の音に、月がうたた寝するような空が広がっている穏やかな時間を独り占めしたい。 ふらふらと声をかけてくる人間がいれば、馬鹿正直に怒鳴るだろう。 恐らく人間が嫌いなんだ。 五月蠅い鳴き声なんだ、虫や鳥のように静かにしゃべってほしい。 それでも何となく人間への未練を残したまま、怒りと悲しみとを区別できなくてあんな顔をして

実際よりも少し先にいたようです。

時計の針は、もっと重いものだと思っていた。 その時、そのタイミングだけ進むことが許されていて、それ以外は何かを壊してしまうほどの力が必要なんだと。時計に歯車が使われていることは知っていたから、その歯車たちが軋むほどに尋常じゃないパワーとなにか壊れてはいけないようなものが壊れてしまっても構わないという覚悟のような思いとで、放っておいても一秒後に進む未来を無理矢理こじ開けなければ持ち上がらないものなのだと錯覚していたらしい。 クッカカカッ。 聞き慣れない音。軽い。 音のする方に

世界は膨張し続ける

刃は形を変えたいときに、いつも使われる。 植木を剪定し、髪型を整え、生地から品物を生み出す。そして、相手を退かせ、心を傷付ける。 風通りをよくしたり丸みを出したりと、それが互いの納得の行くところに落ち着き喜びとして昇華されれば、まわりも大方良しとする。 問題は、そうならないときにある。 使い方、まずはこれを気を付けるのは当然だ。これは昔からそうなのだから、「刃」はそれ程に危ない物だということを気にしながら生活する必要がある。 それと同時に、向き合い方を忘れてしまっているように

太陽が笑ってるんじゃないんだ

影、光、影……光。 影なんていうとなんか陰気くさいけど、ただの木陰のことだ。 こんなに天気の良い朝は、日陰と日向のコントラストが美しい。寝起きの伸びをしている公園脇の緑たちが深呼吸をしている。心なしかシャンプーしたあとの少女の髪の毛のように、キラキラ光る。彼女たちのカラフルで無邪気なパワーの恩恵を受けて、一日が動く。こんな日は、ぼくの車もガソリンだけじゃ動かないだろう。 風が、美しい街路樹たちの髪とスカートと身体を通り抜けている。もとより鈍感なぼくには、彼女たちのフェロモンが