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意識を集中するとき、無意識で呼吸する。

今日、ぼくは魂の半分を手放すつもりだった。
そのために、朝早くに出かけて段ボールを買ってきた。正直、まだ迷っていた。だって僕の魂なのだ。小さい頃からすこしづつ集めてきたて、今日まで、いや今日も大事に持っているものだ。それをこれから半分捨てようとしている。誰だって躊躇うさ。そう考えながら家に帰ってきた。

魂を取りに向かう。
場所なんて分かってるさ、僕の魂なんだから。当然さ。
片手に持てるだけ取り出して眺める。外側の色を見て随分と色あせたことに目が留まる。そこに書かれた模様になるべく満遍なく思いを巡らせてから、随分と年月のたったことを感じる。ホコリ臭くて、手触りもそんなに良くないけれども内容はどれも本物のままだ。
手放さなくてもいいのかもしれない。今までのまま、収まるところに収まっているのだから、そっとして置くこともできる。それでも手放すことにしたのは、そうすることに意味があるように感じたからだ。どうなるかは分からない。大して変化もないと思う。
とりあえず、少しづつ塊にして紐で縛る。紐の先が、なんだか未練たらしくもあるが、お構いなしに予定の分だけ準備する。

掴んだ力を緩めるとスルスルと手元は離れていくと思ったけれど、そうじゃなかった。痛みはなく、くっついていたセロファンが剝がれるみたいに静かに分かれていく。
そして気が付く。
手放しても無くなるわけじゃないんだ。ぼくは覚えているから、それが収まっていた場所も、形も、セロファンの感触さえも。

この魂の跡地には、これから何が入るのだろう。
なんだか凄く喉が渇く。


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