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ポエム・エッセイ

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ポエムのまとめです。わたしの頭の中は、こんな感じです。
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空模様

空が包んでいるのか、空と一緒に浮かんでいるのか分からないけど、勝手に僕らはその中にいる。 そして、好きなうたを歌って、美味しいものを食べて、誰かを好きになった。 その日の空はとびきり良くて、自分とセットで一日が造られる気さえするんだ。 でも空はいつでも、誰かにとってはとびきり良くて、もっとも悪くて。 勝手に僕らはその中にいる。 雲が動いて、僕らが動いて。 誰かの空を、今は見てる。

言い訳する相手にバイバイ

 煙草を辞めたからベンチに座らなくなったけど、十年前にキミの隣が空いたから、また座る理由ができた。  「ねえ、わたし思うんだけどさ」そんな前置きをしてから、いつだったか君が言っていた。バイバイを言うのは、また会いたいと思ってくれている人で、そういう人ほど「死んでくるわ」みたいなことを笑った顔で言いながらそこに向かって行くから、怖いと。  そのときのボクは分かったような顔をして、分からないのを隠していた。  今日、キミは知らない街へ行く。  ボクは煙草に火を点けた。ベンチに

泣くのは、だいたい後回し

涙袋を指でなぞるように押す ゆっくり でも ある程度しっかりと目元から目尻の方まで押してやる 素人ながらにスッキリする そんなことをしたって 夜になれば眠たくなるのだけれど 涙を巻き戻してやることで なんとか 昼間にやらないといけないことをひとつでも多くやりたいんだ 野菜を切ってみたり 布を洗ったりしているうちに 季節は廻ってゆくのだけれど そんな間にも 涙を巻き戻してばかりいるもんだから 最近はいつ泣いたか思い出せない 多分 動物図鑑のぼくらのページには

リフレッシュ

明日のことを書く すこし前向きになる様に 一日分のたのしいをしないで明日が終わらないように 今日 想像する明日はまだ 何にもならないかもしれないけど とりあえず 前を向いてる だって明日のことなんだから クタクタになった今日を コインランドリーに コインを入れて まわってる もうすぐ綺麗になって戻ってくるから 今日を乾かせば 明日になる 濡れたままは気持ち悪いから 明日を想像しよう 大丈夫 雨降りだって 乾燥機に入れちゃおう 乾かせば 明日になるんだか

献血できなかった日

 29日に5度目の献血に行った。  スマホに入れてある献血アプリから時間を選んで予約するだけ、簡単だ。あとは献血予約日当日に、注意事項をチェックして予約したセンターに向かう。献血は車で行くのだが、周辺に大型ショッピング施設があるのと献血すると結構余裕をもった時間分の駐車無料チケットがもらえるので、その後のブラブラ買い物時間に気がいく。メガネケースがほしい。    献血センターに到着すると、体重を計測して受付をする。ポイント(献血するとポイントが貯まります)がある程度貯まってい

ポトフは野菜を焼いてから作る

 フライパンに少量の油を垂らし、玉ねぎ、にんじん、ウィンナーを焼く。水を入れて煮る前にこれをするだけで、ボクの好きなポトフになる。一人暮らしだと、どうしても同じメニューを食べきるまで連続することが多いから、飽きない汁ものが好きだ。シチューやカレーは、最初の1杯の食べたさに騙されて多めに作ると後悔する。冷凍すればいいのだろうが、そんなに丁寧な生活はできそうにない。確実に面倒臭いが勝ってしまう。だから、ポトフを作ることが多い。  ポトフが好きな理由は他にもあって、まず、わたしは幸

帆のない船

水に浮かぶ舟 すこし水の交じった空の下で 誰かに会うために動き出して 泳ぐ 雨が降ると息苦しいから すこし水の交じった空を見て 何も無い空に見惚れて 泳ぐ 雨からぽっかり顔を出す 真っ暗な宇宙には星が集まってる だから一番息苦しい 息苦しい理由が分かったから 船に戻って 一眠りする 地球が水を引っ張るから たぶん あなたと会った 地球が水を引っ張るから 涙がこぼれ落ちた 水が無いと息ができない わたしが泳ぐ あなたが わたしを引っ張るから

枯れ木

涙が枯れない 何度泣けばいいの 涙のグスが住んでいる部屋 そのドアの前に立ってノックする 昔はよく出てきてくれたのに それは大人になったから それは楽になったから それはキライになったから それは悲しくないから それは苦しくないから それは弱くないから よく似た顔のクスとスス 二人はたまに顔を見せている 映画を見たり 本を読んだり 誰かの悲しい話を聞いたりすると 二人は現れる 似ているけれど グスじゃない 友人が亡くなったとき 久しぶりにグスと会った でもまた それ

羨むことは卑しい時だけじゃない

 いつもの通勤途中に小学校がある。この辺はわたしが育った地域では無いので、詳しいことは分からない。ただ、綺麗で大きな学校。わたしが知っているのは、通学用のバスが出入りしていることくらいだ。それでも、大人になってみると昔は大きく感じたものが小さく見えるものなのに、その感覚からしても“大きな学校”と感じるということは、実際に大きいのだろう。  その学校の校門の前には毎朝、男性が立っている。そして彼は、学校の前を通過する車にお辞儀をしている。にこやかでキチッとした服装だが、威圧感の

誰のものでもない

 夏と冬が行ったり来たりする空と、それを鬱陶しく感じ始めた4月の朝。「雪以外なら、なんでもいいよ」と言った日が、こんなにも恨めしくなるとは思ってもみなかった。今日は30℃、昨日は17℃。エアコンでも、そんな極端な設定にしない。  休日出勤を終えたら何をしよう。映画館に行きたいなと、朝から1日の終わりを楽しみにするのが習慣になってしまっている。もうすぐゴールデンウィークだけど、暦通りの飛び石連休。特に予定を入れることもない。ニュースで見る楽しそうな人間活動は、あくまでもテレビの

いい加減なことが好ましいときもある

 熱しやすく冷めやすいのは相変わらずだから、カフェインレスのコーヒーを飲んで気分だけでも整える。コーヒーカップを唇に当てながら、カフェインレスとデカフェの違いはなんだ? と、たいして興味のない疑問が浮かぶ。ノンカフェインもあるな、と。  まあ、どれかが日本の造語で、あとは英語なんだろうと適当に納得する。  奇心旺盛な人はすぐに調べるんだろうか? と、ズボラな私の頭はすでに別のところにフラフラ歩き出していた。このままにしておくのは気持ち悪いのだろうかと思うと、余計にそのままにし

身体を意識して動かすのは難しい

 寝る前にヨガマットを広げて、硬くなった体を曲げる。気持ちいい。  運動は苦手な方だけけど、柔軟性があるということがその劣等感のようなものを和らげていたけど、それは昔のこと。つっぱる身体の裏側と関節付近の筋たちの泣き顔が手に取るようにわかる。  なるべく、今見ている動画のインストラクターが言うカウントで呼吸をしようとしても、膨らむお腹の皮すら抵抗してくるから上手くいかない。さらには筋が吊りそうな感覚の手前でなんとか姿勢をキープしようとすると、身体が力み、動画から聞こえる「ゆ

疎遠

 少し離れたところから私が見る葉桜は、セピア色に見える。  新しい環境になってから数週間、気分転換と安心を求めて顔を見せ合う。でも、まだ忙しさの中にいて余裕なんて無いのに、共に笑った。  花と葉が並んでいるほうが植物として普通の姿なのに、花咲くときばかりを祝うから、花が散る姿が寂しくなる。  並んで歩く。  いつもしていたように、これからも会って歩こう。たまにはさ。

不毛な思いは、夢うつつで。

 タイムマシンができたとしても、未来には行けるが、過去には戻れないんだって。それから、人間が想像したことは、必ず実現できるんだってさ。そして、この2つは矛盾に満ちているようでそんなことは無い。みんな未来に本気で行きたいけど、過去に行くことに本気になれる人の数が少い、それだけなんだ。  時間を移動することは、ある時間を構成する成分を限りなく同じ状態で、他の時間で再現すること。この時間というものだって、誰かが思いついた考え方に過ぎない不確かなものだけど、その時間があるものとして