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小さな幸せを取り零さぬよう


今朝は恋人の腕の中で目が覚めた。起き上がろうとしたら、そうはさせまいとでも言わんばかりに腕に力を入れられて抜け出せなくなった。そんなことをされると、いつまでもその心地よい空間でまどろんでいたくなる。


お付き合いを始めたあの日から、少しずつ少しずつ、私の日常に恋人が溶け込むようになった。最近では2日に1度というなかなかの頻度でお泊りをしているものだから、ほとんど毎日顔を合わせている。そうとは言っても、時間にすれば僅かなひととき。仕事を終えて、20時頃に訪問する。まだ仕事に精を出している恋人の姿に感化され、私も一緒に22時頃まで仕事をする。そこから少しテレビを観ながらお話をして、一緒にベッドに入る。朝起きたら身支度を済ませて、各々仕事に向かう。そんな数時間。でもその束の間を共有したくて、恋人のもとへ向かう。



ある時、友人からこんな相談を受けたことがあった。

“私は少しの時間でも会いたいと思うのに、恋人はそうでもないみたいで寂しい”

と。


正直この想いを吐露されたとき、私の口から出る言葉たちは共感に満ちたものだったけれど、実際心の内はそうでもなかったことを覚えている。
その当時、私には遠距離恋愛をしている恋人がいた。私は社会人になりたてで、日夜仕事と勉強、そして始めたばかりの一人暮らしに圧倒される日々。時間的にも、心にも、余裕はほとほとなかった。そんな中で元恋人は、少しでも会えるなら会いたい、と何度も言ってきた。でも、もともと一人の時間も大切にしたい性格の私は、やるべきことに追われない僅かな時間を自分だけの時間に使いたくて、そんな彼の思いに応えることはできなかった。寧ろ、放っておいてほしいとさえ思ってしまっていた。看護師をしていた私は完全シフト制で連休なんてほとんどなかったから、会えるとしても半日とかで。そんな短時間のために無理して会わなくてもよくない?と、そう思っていた。
だから、寧ろ友人の恋人に同情してしまっていた。


そんな冷淡にも思われて当然な私だったはずなのに。今はその “恋人と過ごす束の間” が愛おしくて堪らなくなってしまっている。


それは、私が少し大人になったことや、あの当時より時間的にも精神的にも余裕があることも影響しているだろう。だが、私の考える最大の原因は恋人にあると思う。


今の恋人は、圧倒的な「安心感」を与えてくれるのだ。恋人の隣は、とても心地が良い。その理由を幾らか挙げてみる。


一つ目。自分がマイナスに感じる要素、例えば、コンプレックスや目を背けたい過去の話、看護師免許を取得していながら他の道で宙ぶらりんの状態にあることなど、これまでどんな話を打ち明けても、否定しないでくれるところ。寧ろ肯定して受け止めてくれた。無理に取り繕わなくてもいいんだな、と思った。これまで人並みに恋愛してきたけれど、初めていい意味で、頑張らなくてもいいんだな、って思えた。

二つ目。妙妙たる職に就いているけれど、対等に接してくれるところ。職種に貴賤なんてないと思う、どんなお仕事だって存在するのは需要ありきだし、人々から必要とされているのだから。でも悲しいかな、職業には世間体だとか、社会的地位だとかは、少なからずあるように思える。実際、社会的地位の高い職を全うする人の中には、そのプライド故に同じ目線に立ってくれなかったり、見下すような態度をとる人も多いように感じる。でも恋人は、私と同じ目線で話をしてくれる。これってきっと、当たり前のようで当たり前なんかじゃない。

三つ目。そんな恋人でも完璧じゃない部分もあるんだなって思わせてくれるところ。弱い部分も隠さず見せてくれるのだ。信頼してくれてるんだろうな、って思える。仕事がしんどいって寄りかかってくれたり、苦手なことも打ち明けてくれる。こんなことあったんだ、って過去の話をしてくれる。弱みって、そうそう誰にでも見せられるものではないよね。

そして、四つ目。時々、本当に私のこと好きなのかなって不安になったり、元恋人に対して嫉妬してしまうような、面倒くさい私が出てきて、拗ねたり泣いちゃったりしても、大丈夫になるまで、ハグしてあたたかい言葉をくれるところ。今好きなのはあなただよ、って安心させてくれる。


まだまだあるけれど、キリがないのでこのくらいにしよう。


寛大に、どんな私のことも受け止めてくれるから、私は私らしくいられるし、嫌いになりかけてた自分のことをちょっぴり好きになれた。その一方で、素直に弱みを見せてくれるから、そんな恋人の笑顔を守りたいと思える。恋人の顔を見ると、声を聞くと、ハグされると、本当に安心できる。心を完全に許しているのが分かる。


仕事に励むかっこいい姿。片付けが苦手なのに頑張って片付けたことが見てとれる部屋。一緒にご飯を作って食べるとき。晩酌しながらソファーに並び、テレビを観る小1時間。抱きしめられながら眠りにつくとき。


なんてことのない、些細な日常。だけど、そこに恋人がいると、ほんのり優しく色づく。日常に小さな幸せが溢れる。その幸せを取りこぼすことなく、優しく掌の中で受け止めたい。それらに気付けるだけの心の余裕を持ち続けたい。そして、その幸せを恋人と共有したい。決して見返りを求めることのない、あたたかな気持ちを日々くれる恋人には感謝しかない。



非日常にあるような、大きな幸せは勿論嬉しいけれど、日常に溢れる小さな幸せを感じられる日々が嬉しい。そして、それをもたらしてくれるのが恋人だということも。

明日は恋人の合格祝いをします!!喜んでくれるといいなあ〜〜!


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