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ピアニストになるために必要なこと(2)

弟子にした、、とは言っても、もちろんその時点では、私は彼女のことをまだ何もわかっていませんでした。

彼女がピアノでどんなことが出来るのか、出来ないのか、ハンガリーで習ったこと、習っていないこと、つまり彼女の力量の長所も短所も出来るだけ詳しく知る必要がありました。

自分が一から教えた生徒でない限り、レッスンは【出来ないものは新しく教え、間違って習ってしまったことは修正し、、。】という作業になるのですが、彼女の今までの長所短所、ピアノ履歴が明らかにならないと、その作業が難しくなるのです。

それと同時に、彼女が何故ピアノから離れたのか、何故また弾きたいと思えたのか、、その疑問の深層にもだんだん近づいていかなくてはなりません。

辛い出来事とそこに隠された真実を掘り起こすのには、時間と信頼が必要です。
ですので、まずは待たないと、、なのですが、、。

レッスンが回を重ねるに連れ、彼女はハンガリー時代のことを少しずつ話してくれるようになりました。

彼女は、ピアノを弾きたくないという気持ちが高まると同時に、人前での演奏にも支障が現れ、最終的には人前で演奏が出来なくなったのだそう。

「弾かなきゃ、と思うと、身体も指も固まってしまって、間違うんです。そして最後には、最初の一音すら弾けなくなったんです。それでピアノを辞めようと思い、国家ピアニスト養成プログラムから外れました。」

先生としてではなくピアニストとしての私が聞くと、息を呑むほど壮絶な過去です。

そして辛い過去のトラウマを話してくれる時には、彼女の表情も暗くとても苦しそうでした。

私は「辛い過去を思い出すのって、ものすごく苦しいよね。ごめんね。でもありがとう!」と言った後、

「でもさ、、、あなたの経験を分析してみると、、。
あなたの【感情と無意識】が【意識】をコントロールして動作をブロックしたということじゃない?
ってことは、逆から考えれば【感情と無意識】を癒して修復すれば【意識下】のことも出来るようになるってことじゃないの!」

と言いました。

私は彼女の話を聞いて、本当に「あ、コレは解決の糸口になるぞ❗️」とピンっときたのです。

彼女は「そんな風に考えられるなんて!」と驚いていましたが、それはプロの音楽家にとっては特別なことではありません。

だって音楽家人生って、まー「問題だらけ‼️」なんですから、ずっと!(笑)

でも音楽家人生のベースには「問題は解決出来る!」という確信があり、「さ、問題解決の方法を見つけよう!」というのが【作業】ですので、一見、かなりの迷路に入り込んでしまったようなものでも「うんうん、今回もややこしそうだけど、でもなんとかなるぞ!」とわかっているのです。

ひょっとしたら、、、、【弾けなくなる】ということでしか、周りの人は彼女の本当の気持ちを理解してくれなかったのかもしれないな、、、なんて思いました。
精一杯の主張、彼女の心の叫びが【弾けなくなる】ということだったのかもしれないな、、と。

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