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やっぱり難しい〈ペットボトル/プラスチック〉の微生物分解【2024.6.2更新

人々の豊かな生活を支えてきた一方で、ゴミ問題が大きくクローズアップされるようになった「プラスチック」。

  • 丈夫

  • 性質が安定している

というプラスチックのメリットが、なかなか海で自然に分解されにくく、そのまま残ってしまう、というデメリットとして現れているのが、なんとも皮肉なところです。

微生物の観点から、プラスチック込み問題は解決できる?

そんなプラスチックゴミ問題を、微生物の観点から解決できないか?ということで取り組んでいる研究グループがあります。

また、東京大学の伏信先生が、主に酵素学的観点から「ペットボトルの分解」に関して解説してくださっています。

基礎的な研究は進められているものの、いまだに「ペットボトル」の微生物分解が社会実装されていません。自動販売機の横にペットボトルを分解するコンポストが備え付け、なんていうのは、まだ未来の話のようです。

技術的に乗り越えるべきハードル

微生物の生存を考える上で、非常に大きな問題として「栄養」があります。

 微生物の立場になれば、「栄養源を独占」しつつ「ジャンジャン増えて競争相手を数で圧倒」できれば、生き残りに有利になります。

ペットボトル分解菌は、競争相手が利用できない「ペットボトル」を栄養源としているので、「栄養源の独占」は可能でしょう。

現状では、PET分解菌の増殖は非常に遅いことがわかっています。ペットボトルは安定な性質ということは、「エサ」という観点から見れば消化が悪い、ということ。

周りを見渡せば、消化の良いエサを使ってもりもり増えている競争相手がいるわけで、消化が悪いエサでもりもり増えるのは厳しいんです。

消化が悪いエサで増殖が遅い以上、「実用的な速さでペットボトルを分解できる」かどうかは、正直微妙なところだと思います。

とはいえ、生物では分解できない、とされてきたPETが分解できた、というのは重要な第一歩です。私が指摘した内容も「現状で可能性が小さいのでは」という話であり「ほぼ0%だったもののが、0%でなくなった」というのは私も多いに期待するところです。

蛸は身を食うエネルギー問題

今回は「化学と生物」に掲載された河合富佐子先生の総説から、話を進めたいと思います。こちらの総説は、プラスチックの種類とその性質、微生物/酵素分解の可能性について述べられています。

私が気になったのは、「プラスチックの分解には高い温度が必要だ」という点です。ペットボトルの分解なら75℃以上は必要なんだそうです。

ペットボトルの分解のために、石油や石炭を燃やして75℃の温度を維持したら本末転倒です。実用化を考える時には、「社会全体のエネルギーのサイクル」をよく考えないと「蛸は身を食う」状態になってしまう難しさがあります。



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