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Design&Art|北欧デザインのとびら 〈09. HIAPアーティストレジデンスのオープンスタジオ〉

ラプアン カンクリをはじめ、多くのブランドで活躍するフィンランド在住のテキスタイルデザイナー、吉澤葵さん。このコラムでは、葵さんのヘルシンキでの日々の暮らし・ライフスタイルから垣間見る、北欧デザインのヒントを探ります。

ラプアンカンクリのテキスタイルデザインをはじめ、デザイナーとしての活動は今年で7年目になります。その間には、デザインのお仕事に並行して、アーティストとしての作品出展も行なってきました。大学院卒業後はデザインのお仕事を中心に活動していましたが、昨年あたりからアーティストとしての活動機会が以前に増して多くなっています。そして、今年の2022年2月からはスオメンリンナにあるHIAPアーティストレジデンシーに滞在し、アート作品の制作をはじめました。

HIAPとは、「Helsinki International Artist Program(ヘルシンキ・インターナショナル・アーティスト・プログラム)」の略で、このレジデンシーには制作のためのスタジオと生活のためのアパートがあり、応募選考を通過した様々なフィールドで活躍するアーティストが世界中から集まって滞在しています。3ヶ月間の滞在が多いのですが、私も含めてフィンランド出身のアーティストは10ヶ月間滞在することもあります。今シーズン(スプリングシーズン)は2月中旬から5月中旬まで、11人のアーティストがここで活動してきました。今回は、このHIAPアーティストレジデンシーにて先日開催したオープンスタジオについてお話したいと思います。


HIAPレジデンシーではシーズンが終わる頃に、オープンスタジオとしてアーティストのスタジオを一般公開しています。今回は5月6日、7日の2日間で行われました。展示会のように作品を並べたり、制作プロセスを見せたり、パフォーマンスやコンサートをしたり。それぞれのアーティストが様々な方法で、これまでのレジデンシー滞在中に何をしてきたかをお披露目します。

私のスタジオでは、滞在中に作ってきたロープと織りの作品の制作プロセスを公開しました。まだ作品は完成していないので、私が今までどのようにロープ作りや織りを行なってきたのかを訪れた人に説明しながら会話を楽しむという、フランクな雰囲気のオープンスタジオです。

展示会のようにスタジオを整えて作品を見せるのも素敵ですが、私としては作品のプロセスを見てもらいたいと思い、スタジオもいつもの少し散らかった状態で公開しました。意外にも、その散らかった感じのスタジオ風景がとてもリアルで良かったと、たくさんの方々にコメントしていただきました。


続いてここからは、オープンスタジオに参加した数名のアーティストや作品を写真でご紹介します。さらに詳しいアーティスト情報は、HIAP Open Studios Spring 2022のウェブサイトからご覧になれますので、ぜひこちらも見てみてください。

Open Studio by Eeva-Liisa Puhakka

Agar-agar (寒天)と天然染料を使った
バイオプラスティック制作プロセス。

Open Studio by Laura Cemin

発音矯正レッスンからの経験に基づいて、
インスタレーションとサウンドワークを展示。

Open studio by Timo Viialainen

19世期のカレリアとロシアを起源にする、
装飾品・玩具のKukkopilli (クッコピッロ)を
巨大にセラミックで作った作品。
エアコンプレッサーを使って笛のように音が鳴る仕組み。

Open studio by Alina Khorolska

手描きのドローイングを使ってアニメーションを制作。
キエフで録音したサイレンのサウンドが
とても強い印象を与えます。

Open studio by Mia Makela

人間と蜜蜂の関係について
ビデオインスタレーションを展示。


オープンスタジオの終盤には、2つのコンサートが行われました。まずは、Timo Viialainen(ティモ・ヴィイアライネン)のHur Hur(フル・フル)というコンサート。彼はhurdy gurdy(ハーディ・ガーディ)という弦楽器を自身で改良して、エレクトロ・アコースティックの楽器として奏でるパフォーマンスを行いました。

その後に、私が友人2人(Marika Maijala, Petra Vehviläinen)と一緒にやっているVelvet Ass(ベルベット・アス)というバンドのコンサートです。私たちのバンドはプロの完璧なバンドとは正反対で、楽しみながら下手でもいいから演奏するというコンセプトでやっています。とにかく楽しむことをモットーに演奏する私たちに、観客の人々も笑顔で楽しんでいる様子が垣間見えて嬉しくなりました。


オープンスタジオに訪れた人々には、アート活動をしている人はもちろん、スオメンリンナの島に住んでいる地元の人や通りすがりの観光客もいます。HIAPのオープンスタジオは、すべての人をウェルカムする、ちょっとしたアートのお祭りのような感じです。

フィンランドの現代アートシーンはとても国際的で、オープンマインド。アートのフィールドにもよりますが、一般的にはあまり硬くなく、誰でも気軽にアプローチできる印象です。9月上旬には、Konstrundan(コンストルンダン)というオープンスタジオのイベントもあります。フィンランドを訪れた際は、身近にアートを楽しめるオープンスタジオにぜひ立ち寄ってみてください!

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