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Design&Art|デザインを覗く 〈07.春色の彩り〉
日本でも世代を超えて長く愛されている、フィンランドのデザイン。アアルト大学でデザインを学び、現在は日本とフィンランドを繋ぐデザイン活動を行っている、lumikka(ルミッカ)のおふたりが、フィンランドデザインをつくる様々な要素を探り、その魅力を紐解きます。
おどる春風、新たな季節の訪れに——。
多くの地域で桜が春を運んできてくれる頃。北の地域ではやっとこれから桜が咲き始める、そんな頃合いでしょうか。
夏から秋への移り変わりはセンチメンタルで、どこか切ない気持ちになりますが、冬から春へと向かうこの季節は朗らかで、エモーショナルなものです。それは、寒い冬を越してまた新たに花を咲かせる草木たちに、これからの自分の姿を重ねてしまうからでしょうか。卒業式の頃に咲き始め、入学式の頃に満開を迎える日本の桜の姿は、まるで私たちの出会いと別れに寄り添ってくれているかのようです。
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桜の花びらが日本の人々の頭上を春いっぱいに染め上げる頃、冬の空気が残るフィンランドに春の予感を届けてくれるのは足元の生命たち。溶けかけた雪の隙間からは、長い冬を耐え忍んだ草花の緑色が、力強く新たな季節の訪れを告げてくれます。くすんだ曇り空や雪の白から一転、雪の下に眠っていた植物の「色」たちが人々の心を揺さぶり、新鮮な感情を届けてくれるのです。
今回は、私たちがフィンランドに滞在していた時に出会った春の風景をお届けするとともに、そこに潜む美しき春色を覗いてみます。
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「色」とは互いに影響をし合うもので、その組み合わせによって見え方も様々です。淡い緑と白の組み合わせがやわらかな印象をつくりだす一方で、空の青と桜のピンクは補色(色相環の対向)の関係にあり、互いに引き立て合う性質があります。同じ桜でも曇りの日、雨の日、晴れの日で佇まいが変わって見えるのは、その背景となる空の色がそれぞれ異なるためです。
絵画の基本となるのもこの色の対比効果で、そのため美術館の照明や壁の色はとても緻密に計画されていたりもします。飾られた絵画や写真そのものだけでなく、それを囲う額縁や背景にも目を凝らしてみると、作品の見え方も少し変わってくるかもしれません。
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補色の関係でなくとも、特定の色が際立つことがあります。それは色の比率によるものです。いっぱいに広がる緑色に対して、小さな黄色や赤色が点々とする春の風景。広い空間にぽつんと置かれる差し色はかえって印象的に目に映るものです。詩的な姿はその名の通り詩や歌となり、言葉を通じて春の彩りを届けてくれています。
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逆もまた然りで、視界の隅々にまで広がる色彩は鮮烈な春の印象を与えてくれます。桜の並木道や赤いチューリップ畑、青いネモフィラ畑などが観光名所となるのもそのためでしょう。一面の色と花の香りを存分に味わうこと、それは春の特権ではないでしょうか。
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時には、自然物と人工物によるこんな風景も。偶然なのか意図したものかは不明のままです。そもそも古くからの絵の具は天然の鉱石からつくられていたり、布の着色に植物を使用することもあったりと、「色」そのものは本来自然によるものです。私たちが普段目にしているあらゆる人工物の色でさえも、元を辿れば自然の恩恵を大いに受けているとも言えるのです。
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そのような自然からの恩恵とインスピレーションを大いに受けながら、フィンランドの草花を描き続けた人がいました。かつてArabia社で画家・装飾デザイナーとして働いていたエステリ・トムラ(Esteri Tomula)です。彼女は、戦後間もない1947年から1984年まで数々の食器類に草花の姿を描き、そしてフィンランドの家庭に彩りを届けていました。描写の精密さや色使いの技術はもちろん、まるで押し花のようなその姿は、彼女の自然への敬意と愛の結晶によるものだと言えます。
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自然と共に生きるフィンランドのデザイナーたちにインスピレーションを与え続けていたのは日常的な風景に他ならず、彩り溢れる春の風景はたくさんのデザインへと形を変えて世界中に羽ばたいていったことでしょう。
冬の静寂の後に訪れるわずかばかりの暖かな季節。雪の白の美しさを知っているからこそ、カラフルな草花の風景にはいっそう心惹かれるものです。草花の写真を友人に送ってみたり、来客に備えて花を飾ってみたり、みんなで集まってお花見をしたりと春の楽しみ方は様々ですが、いずれにしても春の植物たちが人と人とのコミュニケーションのきっかけとなるのはなんだか素敵なことですよね。
誰かと共有したくなる風景が街のあちこちに広がる春。そんな季節に咲く色とりどりの花々は、春を待ち侘びていた人々をそっと祝福してくれていることでしょう。
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