Recipe|ハーブで美味しい北欧料理 〈09.ベリーソースを添えたトナカイ肉の煮込み風〉
フィンランド料理に欠かせないハーブ。自然を身近に感じるライフスタイルを発信するMitsou(みつ)さんに、ハーブを使った北欧レシピを毎月教えていただきます。
北極圏内にあるラップランド。ヘルシンキの遥か北にあるこの土地は、サンタクロースの住む場所として、そして冬には美しいオーロラが舞う地域としても知られています。フィンランドでは先住民であるサーミ人の古い伝説に基づき、オーロラは「レヴォントレット(Revontulet)」=「狐火」と呼ばれます。
そのラップランドに住むサーミ人たちは、極寒の地でトナカイを育て、厳しい自然と共に生活を送ってきました。サーミの人々にとって、トナカイは生活には欠かせないもの。ソリを引かせて移動手段にしたり、肉や乳、毛皮・角・骨を活用して食事や防寒に役立てたりしてきました。
トナカイ肉「ポロンリハ(poronliha)」は脂肪が少なくヘルシーで、スープや煮込み料理、ステーキや串焼きなどにして食べられています。トナカイは、主にキノコや地衣類、草を主食としているため、他のジビエ肉のような臭みやクセが少なく、赤身の美味しさを堪能できるような柔らかい肉質です。
今回ご紹介するレシピは、トナカイ肉を使ったラップランドの伝統的な家庭料理、「ポロンカリストゥス(poronkäristys)」。残念ながら日本ではトナカイ肉を手に入れることは難しいので、今回のレシピでは脂身が少ない赤身の牛肉で代用します。牛肩肉もしくは牛もも肉を使うのがオススメです。
トナカイ肉の煮込みに添えられる定番は、たっぷりのマッシュポテト。そして甘酸っぱいリンゴンベリー(コケモモ)のソースと、ピクルスです。フィンランドでは豊富に取れるベリーをお肉料理に合わせることが多く、ビタミンの補給だけでなく、お肉の臭み消しの役割も果たします。
本日使用するハーブはマジョラム。柔らかい葉には爽やかな甘さがあり、なんとも言えない香りの良さを料理に添えてくれるハーブです。もしマジョラムが手に入らない場合は、葉の柔らかい他のフレッシュハーブで代用してみてください。
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●ベリーソースを添えたトナカイ肉の煮込み風
【材料】 2人分
牛肩肉(もしくはもも肉)薄切り 250g
バター 10g
塩 ひとつまみ
胡椒 小さじ1/4
黒ビール 350ml
水 400ml
マジョラム 適量
リンゴンベリージャム 70g
レモン汁 大さじ1
冷凍リンゴンベリー(なければレッドカラント等でも代用可)
マッシュポテト 350g
きゅうりのピクルス 適量
【作り方】
1:
鍋を弱火にかけ、バターを焦がさないように溶かす。鍋に肉を入れ、バターを絡めながら火を通す。火が通って色が変わったら、塩と挽いた胡椒、黒ビールと水を鍋に加える。
2:
灰汁が出たら取り除きながら、弱火で煮る。
3:
水分量が半分ほどになったらビールのアルコール分は抜けているので、蓋をして更に弱火で30分ほど煮込む。(上の写真は、蓋をして煮込み始める状態)
4:
煮込んでいる間、ソースの準備をする。ジャムとレモン汁を小鍋に入れ、弱火で熱を加える。ふつふつして表面から気泡が出る状態になったら火から下ろす。
5:
上の写真くらいに煮込んだら、火を止めてマジョラムの葉を加える。お肉とマジョラムがよく混ざるように全体的にざっくりとかき混ぜる。
6:
器にマッシュポテトを広げた上にお肉をのせ、ソースをかける。飾り用のマジョラムとベリーを散らし、ピクルスを添えたら完成。
味付けはとてもシンプル。だからこそ、甘酸っぱいベリーのソースがよく合います。煮込むときに加える黒ビールは、お肉を柔らかくし旨味を引き出してくれます。煮ている間にアルコール分は飛んでしまうので、お子様にも安心ですよ。お肉とベリーソースの組み合わせは、とても北欧らしい味わい。寒い季節だからこそ、北の大地の人々の暮らしに想いを馳せながら味わってみるのも、なかなかいいものです。
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〈マジョラム〉シソ科 / 多年草
ヨーロッパでは香り付けによく使われ、マトンやホルモンなどのクセのある肉料理の臭み消しとしても活躍するハーブ。葉や茎に甘い芳香とほんのりした苦味があります。柔らかい葉に繊細な香りがあるので、長時間煮込むよりも仕上がりの直前にいれると、より良い香りを残すことができます。ハーブビネガーやハーブオイルを作ったり、乾燥させてハーブティーにしたり、葉から抽出された精油をアロマテラピーに使用したりなど、活用の幅が広いハーブでもあります。マジョラムの穏やかで甘くスパイシーな香りは、安眠やストレス解消にも効果があります。
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