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Design&Art|デザインの眺め〈02.Lauttasaari(ラウッタ島)での暮らし〉

アアルト大学でデザインを学ぶため、2年間のフィンランド生活を経験した優さん。帰国後もデザインリサーチャーとして、さらに活躍の場を広げています。「デザインの眺め」では、フィンランドのデザイン・建築についてさまざまな切り口で語っていただきます。今回は、海に囲まれた自然豊かな島、ラウッタサーリの美しい光景から得たインスピレーションがテーマです。

東京が好きです。フィンランドの暮らしを楽しみつつも、何度も東京を恋しく思っていました。そして東京に戻ってきて思ったのは、フィンランドの自然が恋しいなあということ。はじめはないものねだりだなと思っていたのですが、ないと思いこんでいただけだったかもしれないと最近よく考えています。フラットな気持ちで散歩をしてみたら、美しい自然は東京の身近な場所にもたくさんありました。結局のところ、なにがあるかではなく、なにをどんな風に見ているかが大切で、ついそのことを忘れがちになってしまっています。思い返すと、フィンランドでいいなと感じていたことは、置かれた環境への不足を嘆くのではなく、当たり前の日々の中から美しさを見出そうとしていたこと。それはつまり、幸せの感度が高い状態ともいえるのかもしれません。

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私は2018年8月より2年間、フィンランドの首都ヘルシンキで暮らしていました。ヘルシンキは首都ではあるものの、森・海・湖との距離が近く、自然は日常の一部であるような、日々の暮らしとシームレスにつながっているものでした。私が暮らしていたのは、Lauttasaari(ラウッタサーリ)という島です。ラウッタはフィンランド語でフェリー、サーリが島という意味です。提示された物件の候補には、徒歩圏内でなんでも揃う市街地の真ん中と、海に囲まれた自然豊かな島=ラウッタサーリのふたつがありましたが、島に住むことなど人生でそうそうないと考え後者を選びました。島といってもメトロも通っていて、ヘルシンキ中央駅から3駅でラウッタサーリ駅に到着します。観光ガイドブックに載るような特別な何かがあったわけではありませんが、アパートメントのすぐそばに森が広がっていて、その森を抜けると海が広がっていたラウッタサーリでの日常は、今東京で暮らす私にとって特別で非日常な時間だったなあと思い出されます。


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森のバードウォッチング台からみた朝の景色。フィンランドは高い山がないので空を広く見渡すことができます。


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犬の散歩をしている人びとをよく見かけました。森には大きなドッグランスペースも。


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多くの住宅にガラスバルコニーがついており、ダイニングテーブルやソファが置かれて第2のリビングのように使われています。


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ガラスバルコニーを通して日の移ろいを感じ、空がきれいに色づきそうだなと感じたときは森に出かけ、多彩な空色を観察することが生活の一部となっていきました。


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月が沈み日が昇ろうとしている早朝の時間帯、淡い空の色と月明かりが海に反射して、波のゆらめきとともに幻想的な雰囲気をつくり出します。


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紅葉のことをフィンランド語で「ルスカ(ruska)」といいます。木の葉が秋に美しく色づくことを意味する単語を持っているのは、世界中で日本とフィンランドだけだそうです。


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ある雪の日、自宅の窓から撮影した写真です。木々に降り注ぐ雪と静寂に心うばわれて、いつまでも眺めていられました。


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真冬は気温がぐっと下がり、海が凍ります。寒さも忘れる美しさです。


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森で摘んだ草花。フィンランドでは、「自然享受権」によって誰でも広大な森を自由に散策し、植物やベリーを採集することができます。


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幸福度が高いといわれているフィンランド。もしかすると、その理由はマインドセット(心の持ちよう)にあるのかもしれません。不足を嘆くのではなく、日常にひそむ美に目を向けてみる...たとえば部屋の中に枝木や花を飾ることで自分だけの小さくも特別な自然を感じることだってできるはず。こうしたものごとの捉えかたとちょっとした工夫が、穏やかな心で充足感を得ることにつながっていくのだと思います。

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