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Trip|フィンランドの風景と音 〈01.ヘルシンキ中央駅周辺とトーロ湾〉

刻々と移り変わるフィンランドの季節と自然、街並み。このコラムでは、ヘルシンキ在住の音楽家・サウンドアーティストのSeiji Kokeguchiさんが、独自の感性で切り取った「風景と音」を通して、フィンランドの今をお届けします。

はじめまして。私は今、音楽活動の傍ら、ヘルシンキにあるシベリウス音楽院でサウンドアートを学んでいます。日本からフィンランドに足を運ぶことが困難な今、私の写真と音楽で、みなさまに少しでもフィンランドの「風景と音」を感じて頂けたらと願い、このコラムを書いています。

初回は自己紹介を兼ねて、私が日々を過ごしているヘルシンキ中央駅周辺のモダンな文化施設とトーロ湾岸をご紹介します。

このエリアは、近代的な建築と長閑な自然が互いに尊重しあい、絶妙な距離感で調和しています。そんな心地良い空間に集う人々が、それぞれのペースで豊かな時間を過ごしている様子を表現した音楽とともに、ひとときのフィンランド散歩をぜひお楽しみください。



Musiikkitalo(ムジーッキタロ)

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まずはご紹介するのがこちら、写真中央の翡翠色の建物が、2011年に開館したヘルシンキミュージックセンター・ムジーッキタロ。トゥルクに拠点を置くLPR設計事務所がデザインを、世界的な音響設計家である豊田泰久さんが大ホールの音響設計を手掛けています。フィンランドと日本の技術力が結集されていることに、フィンランド好きの日本人としては無条件に嬉しくなりますよね。

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ムジーッキタロ の設計テーマは、”A Mezza Voce” (音楽用語で「柔らかい音で」という意味)。「そっと、周囲の景観に溶け込むように」作られています。ホールの大部分を地下に置くことで建物の屋根を低く保ち、周囲の建物との統一性を持たせる工夫がされており、控えめでありながらも洗練された美しいデザインが実現しています。

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大きなガラス張りの部分はラウンジになっていて、私はこの窓際に座って太陽の光を浴びながらコーヒーを飲む時間がとても気に入っています。また、コンサートホール自体も一部がガラス張りになっていて、公演によっては、太陽の光が差し込む中で演奏を聴く事が出来ます。

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このムジーッキタロにはシベリウス音楽院の施設が併設されているので、私は多くの時間をこの建物で過ごしています。


Oodi(オーディ)

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ムジーッキタロの向かい側には、ヘルシンキ中央図書館・オーディが構えています。2018年12月にフィンランドの独立100周年を記念して建てられたオーディは、その圧倒的な蔵書や快適な読書スペースはもちろん、カフェ、映画館、音楽スタジオやワークショップのためのスペースなどもあり、図書館の粋を超えた実に贅沢な文化施設です。

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私は、集中して読書や書き物をしたい時には決まってオーディを訪れるのですが、音楽スタジオを使い楽器のレッスンをする友人もいれば、3Dプリンターを使う為にオーディを利用する友人もいて、使い方は無限大。3階のガラス張りの部分は大きなテラスになっていて、今回紹介しているエリアを一望することが出来ます。

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ここは本当に、文化や芸術を愛する国民へのこの上ない贈り物だと感じます。また、オーディが出来たことにより、周辺にさらに活気が溢れました。私は工事の様子を毎日のように見守ってきたこともあり、ムジーッキタロと同じように愛着を感じています。


kiasma(キアズマ

キアズマ美術館

そして、現在はリニューアル工事のためこのような外観ですが、2つの建物のすぐそばにある、ヘルシンキ現代美術館・キアズマもヘルシンキを訪れたらぜひチェックしてほしいおすすめスポットです。

「光の魔術師」と呼ばれるアメリカを代表する建築家の1人、スティーブン・ホールによって設計されたこの建物は、太陽の軌道を基に緩やかなカーブで全体が構成されています。館内では溢れる自然光の中、カーブに沿った緩やかなスロープを歩きながら、流れるようにアートを楽しむことが出来ます。

世界的な美術家の作品はもちろん、新進気鋭のアーティストの作品も積極的に採用していて、私は展示内容が変わる度にできるだけ足を運ぶようにしています。何しろ、ムジーッキタロから徒歩3分ですからね!2022年春のリニューアルオープンが楽しみです


トーロ湾

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さて、ムジーッキタロの位置を地図で確認してみると、すぐ真上に大きな湖のようなものが見えると思いますが、実はこれ、バルト海とも繋がっている立派な湾なのです。トーロ湾という名前が付いていて、外周は2キロ程。いつもたくさんの人がウォーキング、ランニング、サイクリングなどを楽しんでいます。私は心を落ち着かせたい時によくここを訪れています。

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以前、このトーロ湾外周ルートのエリアごとに楽曲を作る「サウンドウォーク」というプロジェクトに取り組みました。一周の間にも様々な景色があり、聞こえてくる音も場所によって全く違います。そしてこれらの風景と音は季節によっても変わります。冬になると水が凍り、湾の上を横断する事も出来るんですよ。


Sinisen Huvilan Kahvila(シニネン・ホゥヴィラン・カハヴィラ)

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最後に、トーロ湾沿いの一押しスポットをご紹介します。東側の丘の上にあるカフェ、シニネン・ホゥヴィラン・カハヴィラ。1896年開業の老舗カフェで「まるで家にいるかのようにくつろげる」というのがコンセプト。トーロ湾周辺を犬の散歩道にしている人が多いからか、ここでは毎回と言っても良い程、飼い主と一緒にくつろいでいる犬と触れ合う事が出来ます。

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可愛い外観のカフェですが、コーヒーの味は本格的。トーロ湾を眺めながら、プッラ(シナモンロール)を片手にコーヒーを飲んでいると、時間がゆっくりと流れているような感覚になります。

ここでは音楽を聞かずに、自然の音や野鳥の鳴き声に耳を傾けてみて下さい。そして、あなただけの「ヘルシンキの音」を見つけてみて下さいね。


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https://www.seijikokeguchi.com/
Youtube:Seiji Kokeguchi
Instagram:@seeeeeiji

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