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夜明けのスナック

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夜明けのスナックのような混沌とした徒然
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サクラ、チル

サクラ、チル

お父ちゃんは桜が満開の時期にいなくなった。

あれ以来、桜を見る度に心が苦しくて、悲しくて、切なくて、ずっと花見になんて行けなかった。

お父ちゃんがいなくなって10年を機に一人で墓参りに行ってからは桜を見るのが辛くなくなったし、今ではすっかり桜を愛でるようになれた。

でも、やっぱりお父ちゃんのことは想い出すよ。
忘れられない。
お父ちゃんがいなくなって何年経ったかなんて忘れても、お父ちゃんのこ

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年賀状

年賀状

正月元旦。
朝風呂を済ませて、食事の用意をする前に、ポストから輪ゴム留めされた年賀状を取りだす。

お店のお客さんから。
業者さんから。
相方さんの身内やお友達。
私の友達。
といった具合に仕分けする。

純粋に私個人宛の年賀状は、今年いよいよ3枚になった。
(その後、チラホラ届いたので5枚にはなったけど)

送りたい人も居るけれど、今のご時世「個人情報」というものを聞くのも気を遣う。
相手が若い

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開店

開店

開店間際のスナックは、マスターやママが開店準備をしつつお客さんを受け入れる。常連客は、いつものこととその様子を肴に注いでもらったアルコールを流し込む。

客入りのピーク時、店内はたばこの煙と流行の歌に包まれて喧々たるひと時が訪れる。それも数時間続くと終電が近づくにつれて客は一人、また一人帰っていく。

ウチは終電後のスナックが好きやった。

所謂「一般的な会社員」という所属の客はめっきり減り、忙し

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