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開店

開店間際のスナックは、マスターやママが開店準備をしつつお客さんを受け入れる。常連客は、いつものこととその様子を肴に注いでもらったアルコールを流し込む。

客入りのピーク時、店内はたばこの煙と流行の歌に包まれて喧々たるひと時が訪れる。それも数時間続くと終電が近づくにつれて客は一人、また一人帰っていく。

ウチは終電後のスナックが好きやった。

所謂「一般的な会社員」という所属の客はめっきり減り、忙しい時間を終え、ひと段落したマスターやママと酔いつぶれた客と特殊な仕事の客が多くなる時間帯。
落ち着いた、そして どこか世の中からはみ出した人達が集まる時間帯。

それから夜明けに近づくごとに一段とディープな世界になる。

定期的に連れている女性が変わる社長。
頑なにマスターやママ以外と話さないのに、毎日ずっと座って飲んでる歯医者。
いつも酔いつぶれて、知らない男の人と夜の街に消えていく看護婦。
会うと必ず同じ曲をウチにリクエストしては聴きながら泣いてる高級クラブの美人ママ。
長いお勤めから帰ってくる男性を迎えに行くべきか、このまま縁を断つべきか悩むホステス。

他愛のない恋愛話で終わる日もあれば、家族とのやるせない想いの丈を聞く時もある。
世知辛い世の中に嘆く日もあれば、昔過ごした輝けるときの話で盛り上がる時もある。
今を楽しんでいるようで何かを儚んでいるような。自分や世の中への戒めのような。懐古的なのに未来も見据えていて、気怠さの中に混沌とした気持ちを入り混ぜながら、ささやかな希望を期待するような。それでいて、どこかなにかを諦めてしまうような。
時間を追うごとに自分の知らない世界、自分ひとりでは経験し得ない話を聞き、いろんなことを教えてもらった。

そして大体始発が動き始める頃に「でも、まぁ 頑張っていこな」とか「そうかぁ。ホンマ良かったな」という閉店の挨拶みたいな一言と共に店を閉めて、皆でお寿司やラーメンを食べに行ってお開き。

夜の街の終わりを告げる朝焼けの中、皆と別れてフラフラしながら自転車で家へ帰りながら、その日の話を頭の中で思い返す。


そんな夜明けのスナックのように他愛もなくて、とりとめのないの想いの徒然を書いていきたいなぁと思って「夜明けのスナック」という名前にしました。
もし気に止まりましたら、どうぞ今後もご贔屓に。

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