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【イベントレポート】LivingAnywhere Commons 遠野 / KICK OFF MEETS プロジェクト発表会&交流会

LivingAnywhere Commons(以下、LAC)は現在、会津磐梯と伊豆下田の2か所の拠点に加え、岩手県遠野市に新拠点『LivingAnywhere Commons 遠野(以下、LAC遠野)』をOPENすることとなりました!それに先立ち、2020年1月28日にキックオフイベントを開催しました。

イベントに登壇したのは、コミュニティマネージャーとしてLAC遠野を運営する、一般社団法人Next Commons Lab(以下、NCL)の代表・林 篤志氏と、スタッフの家冨万里氏、そしてLAC事業責任者の小池克典。
LACのプロデューサー宮部 誠二郎がモデレーターとなり、今回のプロジェクトと遠野の魅力について、熱く語り合いました。

人が集い、チャレンジやコラボが生まれる「Co-living」の実現へ

宮部 誠二郎氏(以下、宮部):
今回は小池さん、林さん、家冨さんの3人に、LACとNCLのコラボで生まれる遠野の新拠点で、どんなことができるのかを聞きたいと思います。また今回は、質問や移住先のアイディアを、随時ネットサービスの「Sli.do (スライドゥ)」に投稿いただきながら進行します。ぜひこういうことをやってみたいと思ったら、どんどん書き込んでいってください。

まず小池さんから、LACの概要を教えてください。

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小池 克典(以下、小池):
私は現在36歳で、東京に住みながら株式会社LIFULLのLAC事業責任者をしています。LIFULLは現在、働くママや地方創生など、社会課題をビジネスで解決しようというプロジェクトを立ち上げています。私が担当しているのは、地方創生や空き家問題です。東京への一極集中が進む日本では、13年後、3軒に1件が空き家になるという「大空き家時代」の危機を迎えています。

このピンチを、私たちはチャンスに変えたい。ヒト・モノ・カネ・知恵をローカルにインストールしたい。こうした思いから、7つの地域と包括連携協定を結び、空き家を通じた地域活性にコミットしているところです。

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LivingAnywhereは、もともと孫正義さんの弟・孫泰蔵さんが立ち上げた一般社団法人です。彼自身は現在シンガポールに住んでいます。グローバルの視点に立つと、今はネット活用でどこにいても働くことができます。しかし東京では、一生懸命満員電車で出社している。もっと自由に、ライフスタイルを選べるようにしたいという思いで、プロジェクトがスタートしました。自由な働き方を実現するために、スタートアップ支援や、体験イベントの開催を北海道から沖縄までしてきました。

こうした活動の中で、自由なライフスタイルにはコミュニティが必要という結論に至ったんです。そこで生まれた事業がLACでした。LACは端的にいうと、「定額の多拠点リビング」のサービスです。ここでいうリビングは、働く環境、寝泊まりする環境、コミュニティという3つの要件を満たしていることを意味します。人が集い、チャレンジやコラボが生まれる。こうした「Co-living」の環境を実現したいということで、現在拠点の拡大をしています。

言葉だけで伝えるのは難しいので、動画にしてみました。出演者は全員LACの会員さんです(笑)。

小池:
LACは会員型で、月額25,000円で全国各地全ての施設をいつでも利用できます。これだけ料金を抑えられるのは、遊休不動産を再利用しているからです。福島の会津磐梯の拠点は、もともと企業の保養所でしたが、企業が撤退して5年間放置されていました。自分たちで原状回復を行い、交流する場に再設計します。今回は第3弾ということで、NCLと遠野に拠点を作ることになりました。拠点には住環境などハード面も必要ですが、同時に現地の方々との交流など、ソフト面の充実も欠かせません。

LAC遠野では現地のコミュニティマネージャーとして、NCLの方々と連携することになりました。このイベントは、その拠点を一緒に作りませんか?というお誘いの意味も込めています。そこに行くとどんな人に会えて、どんなコラボができて、どんなチャレンジができるのか。自分に合ったテーマがないか探るような気持ちで、この先のお話も聴いていただけると幸いです。

コーディネーターと共に、遠野で「コラボとクリエーション」を生み出す

宮部:
次にNCLの活動についてもおうかがいしたいと思います。ちなみに小池さんと林さんはいつ出会ったんですか?

小池:
3年くらい前?ですかね。LAの構想、仕組みができていない時に、同じ話をしている人がいるよっていうので会ったのがきっかけです。一緒にやりたいねと話して、ようやく実現しましたね。

林 篤志氏(以下、林):
そうですね。僕はローカルに関わる仕事を始めて、約10年になります。始まりは20代前半で、渋谷で仕事をしていました。ちょうど東日本大震災の年で、急に思い立って3月末には渋谷の事務所を全部閉めちゃったんです。その後高知の人口1,000人規模の村に移住して、地域創生などのプロジェクトを始めました。

僕が高知の山奥に移り住んだ時の感覚と、LACのビジョンはとても似ていると思っていて。実は東京って、できることが非常に限定されているんです。街もビジネスも無数に存在して、隙間がない。一方で遠野の様な地方では、空き家問題などから利活用できる空間が余っていて、自分を表現できる余白がたくさん残されています。ダイナミックに新しいことに挑戦できる、そんなフィールドで皆さんの様な方々に活躍いただきたいと思い、LACとのコラボを決めました。

NCLは「ポスト資本主義社会の具現化」をビジョンに掲げています。まずは遠野の資源を活かして、事業・プロジェクトを立ち上げたい人を全国から募集しました。そして2016年、メンバーと遠野に移住しました。メンバーのほとんどが元サラリーマンで、20代後半〜30代が中心です。

NCLの特徴は、現地に「専任のコーディネーター」がいるという点です。地方の可能性やワクワクは感じ取れるけど、何を始めればいいのかわからない。そう悩む人は少なくありません。地域のディープな情報は、Google検索ではヒットしないしアクセスのしかたも分からない。我々コーディネーターは、こうした問題に直面する方と地域の架け橋となって、課題やビジネスのシードを見つける支援をしてきました。

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東京のビジネスは「私はこんなことができます」と実績を見せ、提案・見積もりをするスタイルですよね。地元は全くの逆。そもそも「お前誰だよ」みたいな、人間同士で知り合ってはじめてビジネスが発展します。こうした認識のズレを、コーディネーターが修正する役割もあります。

プロジェクトは総務省の「地域おこし協力隊制度」を活用し、プロジェクトを立ち上げるメンバーは3年間現地でフルコミットして事業に専念します。こうした体制を台湾も含め全国13か所に設け、現在も約90のプロジェクトが走っている感じです。その一方で、「3年フルコミット」と言うハードルの高さが懸念でした。LACとコラボすることで、もっとライトな感覚で地域と関われるようになると思います。

遠野の事例ですが、まずクラフトビールのブルワリーを立ち上げる起業家の募集を行いました。遠野は長年キリンさんとの契約栽培を行いホップの生産量が日本一だったんですが、4年前に移り住んだ頃、生産量が最盛期の1/4まで落ちていたんです。これまではホップの生産だけだったけど、今後は遠野を日本一のクラフトビールが楽しめる場所にしようとビジョンを新たに描きなおし、キリンさんとも協業する形で事業を立ちあげるに至りました。

他にも遠野は、柳田国男の「遠野物語」のように、民俗学のメッカ的な場所でも知られています。広告代理店でプロデューサーとして働いていたメンバーがここに着目し、単なる観光ではなく、民俗学の面白さを掘り下げたディープなツーリズムを実践しています。

自分のやりたいことと地域にあるものをうまく掛け合わせて、新たなクリエーションにチャレンジする。LACが大事にしている「コラボとクリエーション」を、遠野の地でもチャレンジできればと思います。

家冨:
現地には5名のメンバーが、コーディネーターとして在籍している状態です。取り組みを始めて約4年になりますが、進学や就職を機に遠野を離れた子がUターンして、スタッフとしてジョインしてくれたんです。「地元で面白いことをやっているんだ」とネットで見かけたって。これは大きな成果だと思います。地元に縁がある人・縁がなかった人それぞれの視点がミックスされて、知見を交えながらコーディネーターとして活躍しています。

遠野の魅力と現地で進行中のプロジェクト

宮部:
家冨さんからも、遠野のことや活動内容について説明してもらっていいですか?

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家冨:
遠野は地理的に、ちょうど岩手の内陸と沿岸をつなぐ場所に位置しています。東日本大地震でも、自衛隊やボランティアの方々が駐屯して、沿岸の釜石や陸前高田に派遣されていきました。四方が山に囲まれて、すり鉢状の景色が広がる街です。ちょうど東京23区がまるっと入る大きさに、27,000人の人々が住んでいます。私は遠野の拠点が立ち上がるずっと前の2012年に、一人で移住をしました。

当時は知人も少なかったので賃貸できる物件情報を得るのがなかなか難しくて、様々な行事に参加をして知り合いを増やすことで泥臭く情報を得ていました。NCLが一時期シェアハウスとしてお借りしていた物件は、由緒正しいお家の物で8LDKと巨大な物件で。そんな物件でも月額家賃が1万円以下だったり。現在私が住んでいる家は年間でもそのくらいです…(笑)

会場:
えー!

家冨:
NCL遠野の現地法人は、のちに夫になるスタッフと、他3名で立ち上げました。遠野に限らず、東北の方ってちょっとシャイで最初は距離感があるものの、一度打ち解けると家族のように接してくれる温かい方ばかり。私たちの結婚式も通っていた集落の方々から「おらい(私たちの)の集落でやれ」とお誘いいただき、30世帯未満の集落に当日は約150人が集まる大盛況な結婚式になりました。馬も引き連れたりして。その温かさがとても嬉しかったですね。

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家冨:
ちなみに私は、NCLの活動とは別に個人でスナックを経営をしていて、週4日ほど開いています。始めた理由は、情報や人のハブになる場所や、それらがコラボレーションできる機能が必要だなと思ったからです。

遠野に移住をした時は24歳と若かったのもあって、地域の目上の方々になかなか自分の本心を話せる場がなくて、どうしたらカジュアルかつフラットに意見交換ができるだろうか?という問いから生まれたアイディアがスナックという業態でした。カウンター4席とボックス席2つの小さなお店ですが、時にはNCLのメンバーが常連のおじさんと隣り同士一緒に楽しく飲んだりする場面があったりして、数年前に描いていた理想の空間が実際に作れたなと思っています。

家冨:
現在は林が説明した以外に、NCL遠野が運営する各拠点をキャンパスに市民大学の「つくる大学」というプロジェクトを展開しています。地元のジビエをやっている猟師さんを招いてクマ油をつくる体験など、誰しもが知恵や技術を気軽に学び合える仕組みとして、様々なコンテンツを企画しています。

カフェスペース・会議室・自由に使えるスペースなど、キャンパスとして目的別に使える空間がいくつかあるので、何か地域でやってみたい人達の多様なニーズに合わせて「つくる大学」が機会提供と運営協力をさせてもらい、関わってくれる人たちとともにコミュニティを作っていっている様な感じになっています。

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林:
カフェの隣は、下の階がコミュニティスペース、上がレジデンスで泊まれるようになっているんです。雑多な感じで入る敷居が低く、下校時間の夕方になると子供達が遊びに来て、寝転んだり、youtubeを見たり、宿題をしたりそれぞれ過ごしたい様に使っています。小上がりの空間に畳のマットを敷いているので、日中は子育て世代のお母さんの憩いの場にもなっていて。一方、先に立ち上げたカフェは洗礼されたデザインの空間にしたので、地域の方から「入りづらい」と言われたこともありました(笑)。様々な質の空間を作ったことで関われる間口が増えたのはよかったことです。

地方で「パン屋」は穴場?地方には東京にない速度感とチャンスの広がりがある

宮部:
ここからは、皆さんでトークセッションにしたいと思います。遠野でどんなことにチャレンジしたいのか。ぜひSli.doに自由に書き込んで投稿してください。

小池:
「質より量」「否定厳禁」「大いに便乗」のブレストの3大原則なので、自由に妄想をしてくれると嬉しいです。

宮部:
5分ほど、周りの人と話しながら、ぜひシェアしてください。

〜5分後〜

宮部:
どんどん上がってきましたね。1つずつ見てみますか。

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林:
全部いいですよね。「とりあえずやってみよう」と思えるものばかりだ。というより、ほとんど全部やれると思います。

小池:
パンいいですね!実は美味しいパン屋って、意外とローカルにないんですよ。

林:
マジでないです。うまいパンを作れたら、絶対食っていけると思いますよ。27,000人の人口って少なく思いますが、もし遠野に美味しいパン屋ができて広がれば、周辺の自治体も含めて20万人くらいは商圏になりますよ。

いやー、都心では売ってる硬めのハードパンとか扱うパン屋さんが欲しいですね!

会場:
(笑)

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林:
皆さんがやっていること・思っていることの延長戦で取り組んでみるだけで、思いがけずビジネスにつながることって多いんです。都内でパン屋って発想は、レッドオーシャンに飛び込む様に感じますよね。

でも地方では、そういう心配はありません。固定費はかなり抑えられるから、とりあえず作ってみて道の駅で売るとか、NCL遠野のカフェで出すことくらいは余裕でできちゃいます。それが地方の面白さだと思うんですよね。

実は大手企業も、地方のフィールドに注目しています。最近大企業から、新規事業の可能性を特定地域に広めたいという相談が多いです。個人だけじゃなくて、企業でも地方への関わり方の幅が広がっているんですよね。もしかしたら、これからは地方で活動する方が、挑戦したい業界の中でポジションを得やすいかもしれません。家冨さんの旦那さんもそうだよね?

家冨:
そうですね。夫は多額のお金をかけつつも短期間で終了してしまう広告業界の消費スピードに疑問を持って、今は次世代や次の時代まで長く続いていく事に自分の経験を活かしたいと考え活動しています。それで着目したのが「遠野物語」でした。遠野で出会った75歳の「師匠」に学ぶうちに、遠野物語の中にある普遍性に感銘を受けて、どうそれを今の時代を生きる世代に伝えていくか、考え企画にすることにのめり込んでいます。

林:
僕も高知に移る時は、「一体、林はどうしたんだ」と言われました。でも地方は、自分の価値を表現しやすい場所でもあります。そこで力を発揮し出せると、東京にいた時にはアクセスできなかったポジションに、かなりショートカットでたどり着けるかもしれません。地方ってスローで人生の選択肢が狭くなると思われがちだけど、実は加速度的に人生の幅が広がる。現場にいると痛感するんですが、これがなかなか伝わらないんですよね。

小池:
下田の事例で、3か月のローカルチャレンジをした後、現地に移住した子がいます。彼は28歳で、都内でWebメディアの編集者をしていました。今では自分で仕事を企画して、個人で行政の仕事を受託しています。最初の面接ではとても寡黙で、決してアクティブではない印象でした。

しかし、ローカルチャレンジをしたら人が変わった様に、「もう、ここに住んでいいですか」となりました。コミュニティで仲間ができ、周りに認められ、貢献できる喜びを知ったことで、特別な人じゃなくても一歩踏み出せるんだと実感しましたね。ローカルの魅力の1つを、再発見できた気分でした。

林:
NCLも全国各地のメンバーが、東京ではできないチャレンジをしたいという思いとは別に、潜在的に「仲間が欲しい」という気持ちで集まっている気がします。自然災害や経済問題など、世の中的に不確定要素が増えていますよね。家族や会社の同僚という既存の関係を越えて、大変な時に支え合える仲間を作りたい。

LAC×NCLで提供していく事は、ただの多拠点居住だけではないんです。衣食住をともに過ごしたり、ともにチャレンジをする事を通じて、共通の価値観を持った仲間でありコミュニティを作っていく仕組みである事を、ここでは伝えたいなと思っています。

まとめ

トークセッションの後は遠野の「佐々木酒店」様から提供いただいた、どぶろくや地ビール、ソフトドリンクを用意。おつまみも遠野を中心に岩手の特産品を囲い、ざっくばらんなコミュニケーションを楽しむ交流会が行われました。

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また今回は初の取り組みとして、ビデオ通話で遠野のコーディネーターと接続。PCモニターを挟みながら、現地スタッフの皆さんのコミュニケーションも盛んに行われました。

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新たな拠点スタートに先だち、LACとNCLは2020年2月29日~3月1日にかけてLAC遠野プレオープンイベントを企画しています。LAのメンバーはもちろん、少しでも現地での取り組みに興味を感じたら、ぜひ一緒に遠野を体験しに行きましょう!

<ライター サトートモロー>


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