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プロジェクトが立ち上がるコミュニティとは

コミュニティにおけるプロジェクトの立ち上げは、単に目的を共有するメンバーを集めるだけでは不十分です。真にプロジェクトが生まれるためには、多様性と自律性が許容され、メンバー一人ひとりの内発的な動機付けと共感が重視されるコミュニティづくりが不可欠です。本文では、プロジェクトマネジメントの手法をコミュニティ運営に応用し、協調的な探求活動を通じてプロジェクトが自然発生的に立ち上がる適応型のコミュニティのあり方を提案します。

なぜコミュニティの在り方が重要なのか

私たち地域共生実現屋は、地域社会の持続可能性を追求しています。そのためには、ローカルチェンジメーカーたちが取り組む社会課題解決プロジェクトを有機的に結びつけ、相乗効果を生み出すエコシステムの構築が不可欠です。しかし、従来のコミュニティ運営では、マネージャーやモデレーターが一方的に議題を設定し、メンバーの自主性を阻害してしまう傾向がありました。その結果、メンバーの内発的な動機付けが失われ、プロジェクトが立ち上がらないという課題に直面していました。

そこで、私たちは「SINIC理論」の考え方を参考に、コミュニティの運営方針を見直しました。SINIC理論は、2025年頃から「自律社会」への移行が始まり、個人の関心が「個から集団へ」、「物から心へ」と重点が移ると予測しています。つまり、これからのコミュニティでは、メンバー同士の共感と内発的な動機付けが重要になってくるのです。

共感を軸とした探求活動の促進

プロジェクトが立ち上がるコミュニティとは、メンバー間の共感を基盤とした対話と探求の場であると考えます。共感には、「根本的な違いを受け入れる」「コミットメントを受け入れる」「コミュニティを受け入れる」といった要素が含まれます。このような共感の姿勢があれば、メンバー同士が互いの経験や価値観を尊重し合い、創造的な対話が生まれやすくなります。

具体的には、月例の対面会合や非同期のオンラインコミュニケーションを通じて、メンバーそれぞれの関心事や探求テーマを共有します。そして、共通の興味関心を見出せば、自然発生的にプロジェクトチームが編成され、実践的な活動に移行できます。このプロセスでは、マネージャーによる一方的な議題設定は行わず、メンバー主導で進めることが重要です。

アジャイルな運営サイクルの導入

プロジェクトチームの運営においては、アジャイル的なプラクティスを取り入れることで、自律性と柔軟性を高めています。例えば、月例会ではスクラムのようなイテレーション型のサイクルを採用し、バックログの優先順位付けやふりかえり(レトロスペクティブ)を行っています。また、アドホックなスプリントのような短期集中型アクティビティも適宜取り入れ、メンバーの内発的な興味関心に沿った進め方ができるようにしています。

このように、一方的な指示ではなく、メンバー主導のアジャイルな運営を行うことで、プロジェクトへのメンバーのオーナーシップが醸成され、自律的な活動が促進されます。同時に、定期的なふりかえりを通じて運営そのものを改善し続けることで、コミュニティ全体が適応的に進化していくことができます。

地域に根ざしたアクションを

コミュニティ活動を通じて得られる気づきや知見は、地域社会に還元されなければなりません。例えば、環境問題に関するプロジェクトであれば、地域のイベントで成果を発表したり、企業や自治体に提言をしたりと、アウトリーチ活動に取り組むことが重要です。

また、対話とリフレクションの繰り返しによって洗練された解決策については、ビジネスモデルの構築や実証実験を行い、問題解決に向けた具体的なアクションにつなげていく必要があります。その際は、地域のリソースやプレイヤーを活用し、エコシステムを構築することで持続可能なインパクトを生み出すことができます。

まとめ

プロジェクトが立ち上がるコミュニティとは、メンバー一人ひとりの共感と内発的な動機付けを尊重し、自律的な探求活動を支援するものでなければなりません。地域共生実現屋は、このようなコミュニティのデザイン、エコシステムの構築を通じて、ローカルチェンジメーカーたちが主体的にプロジェクトを立ち上げ、持続可能な社会課題解決に向けた具体的なアクションにつなげていくことを目指しています。

【参考】
大西徹. (2023). 自律社会に向けたコミュニティ運営へのプロジェクトマネジメントの応用. プロジェクトマネジメント研究報告, 3(1), 86-91.

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