~運動家_ヤスタの運動簿vol.7~
かつてはほとんど存在していなかったが、急速に世界に広まっている糖尿病。
高血圧(血圧の嘘)、コレステロール(脂肪悪玉説)と生活習慣病に関する内容が続きましたが、本稿では全糖尿病のうち95%以上といわれるⅡ型糖尿病を取り上げます。
糖尿病とは…
血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が多くなりすぎたまま下がらない病気
〔糖尿病の怖いところ〕
・自覚症状がない
・合併症(網膜症・腎症・神経障害)
詳細はこちら↓
糖尿病-e-ヘルスネット-厚生労働省
ものを食べたときの血糖濃度(血糖値)の状態を見ていきましょう。
血糖濃度調節の流れ
~脳(視床下部)から信号(副交感神経)を発して、ホルモン(インスリン)を分泌して各器官へ糖(グルコース)が取り込まれたら、血液中のブドウ糖濃度が下がる~
では、なぜブドウ糖濃度が多く下がらないのか?
前提として、
『インスリンは細胞膜を容易に通過できない』
といのがあります。
インスリンは非ステロイドホルモン
糖輸送担体
ブドウ糖を各細胞に取り込むためには、糖輸送担体(glucose transporter:グルコーストランスポーター)と呼ばれる乗り物に運んでもらわなければならない。
~GLUT4は主に脂肪細胞、骨格筋、心筋に認められ、インスリンがないとき細胞内に沈んでいるが、インスリンにより細胞膜上へと浮上してグルコースを取り込む~
その、
『乗り物(糖輸送担体)に仕事をしてもらうには、細胞膜上に移動してもらわなければならない』
移動してもらうには、鍵が鍵穴に差し込まれなければならない…。
『ホルモン(鍵)は受容体(鍵穴)と結合してはじめて機能(細胞内部への指令)する』
参照記事↓
ホルモンと受容体-細胞間チャット
糖取り込みの条件を要約すると…
・インスリンは細胞膜を容易に通過できないため、乗り物(糖輸送担体)に、細胞膜上へ移動してもらう必要がある。
・乗り物に移動してもらうにはホルモン(鍵)が受容体(鍵穴)と結合する必要がある。
〔糖取り込みまとめ〕
インスリンがインスリン受容体に結合
↓
糖輸送担体が細胞内部から細胞膜(表面)へ移動
↓
糖の取り込み
↓
血糖濃度低下
上記が正常に機能している状態
インスリン抵抗性
インスリン抵抗性とは…組織におけるインスリン感受性が低下し、インスリン作用が十分に発揮できない状態
インスリン感受性の低下とは、インスリン結合が起きないために細胞内部にシグナルを送れない状態
即ち、糖輸送担体が細胞膜表面へ移動してくれない=糖が取り込まれない
「鍵が合わないために扉が開かず、それにより糖が血管の中で溢れている状態!?」
インスリン抵抗性の要因として、
遺伝、肥満、運動不足などが挙げられておりますが、生化学的観点から説明すると…
・肥満になるから怠惰(運動不足)になる(エネルギー保存の法則)
・運動不足になるから肥満(内臓脂肪型)を助長する
卵が先か鶏が先か?のようですが…。
肥満では…
・過剰な血中遊離脂肪酸でインスリン抵抗性をもたらす
・慢性炎症状態になる
・過栄養状態で小胞体ストレスにさらされ、炎症やインスリン抵抗性を呈する
・酸化ストレスにさらされる
インスリン抵抗性の機序
元記事はこちら↓
脂肪組織機能異常とインスリン抵抗性
〔血糖値を上げるもの・こと〕
・糖質の過剰摂取
・ストレス(コルチゾールほか)
・飢餓(空腹)など
空腹時血糖値よりもHbA1c
日本糖尿病学会による糖尿病診断の指針
空腹時血糖値…126mg/dl以上
HbA1c…6.5%以上
ですが…
今回も、大櫛陽一氏による(70万人調査でわかった)年齢別、男女別の、
新基準値をご参考までに。
基準範囲…この範囲で特に他に異常がなければ、医師の治療を受ける必要はない
目標範囲…基準範囲であれば問題はないものの、できれば生活習慣を改善することによって、この範囲を目指すことが勧められる
投薬よりも食生活と運動習慣
それでは、どういったものを摂ればよいか?
〔食事療法〕
参照記事
~総エネルギー摂取量を制限せずに、炭水化物のみを極端に制限することによって減量を図ることは、その効果のみならず、長期的な食事療法としての遵守性や安全性など重要な点についてこれを担保するエビデンスが不足しており、現時点では勧められない~
上記は日本糖尿病学会のHP掲載の糖尿病ガイドライン内の食事療法の項の一文です。
http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/gl/GL2019-03.pdf
カロリーを制限してはならない
〔摂取エネルギー量〕
摂取カロリーを制限するということは相対的にタンパク質やビタミン、ミネラルの摂取比率が減ってしまうため、カロリーを下げないことをお奨めします。
なにを摂らないか?
これまで同様、優先順位は「なにを摂るか?」よりも「なにを摂らないか?」であります。
異性化糖とは…主にトウモロコシから作られる高フルクトース・コーンシロップのことで、含まれる果糖が、
50%未満…ブドウ糖果糖液糖
50%以上90%未満…果糖ブドウ糖液糖
90%以上…高果糖液糖
・砂糖
・異性化糖
・人工甘味料
・トランス脂肪酸
最も避けるべきは…果糖
〔糖質〕
目的:血糖値を安定させるため
食事摂取基準による糖質(炭水化物)摂取の目安量は…50~65%(総摂取エネルギー比)とありますが…活動量の少ない、若しくは糖取り込み能低下している方の場合は30~40%推奨(不足分はタンパク質&脂質で)
摂りすぎると…AGE(終末糖化産物)を生成、酸化(老化)の元となる
目安:食後に眠気が起きない量(血糖値の乱高下が起きない程度)を探す
〔タンパク質〕
インスリン(ペプチドホルモン)も糖輸送担体もタンパク質であるため、良質の高タンパク食材を推奨
〔脂質〕
EPA:炎症抑制として
DHA:抗酸化作用として(炎症抑制としても)
〔食物繊維〕
食事で摂ると…
食物と腸壁のあいだにゼラチン質のバリアができ、腸がブドウ糖、果糖、脂肪を吸収する速さが緩やかになる
ブドウ糖の吸収が緩やかになる=血糖値の上昇緩やかに
血糖値上昇緩やか=膵臓の反応を弱める(インスリン量↓)
→インスリン量↓
〔ビタミン〕
エネルギー産生として…
B1:(糖質)
B2:(脂質)
ナイアシン(B3):(脂質・糖質)
パントテン酸(B5):(タンパク質・脂質・糖質)
タンパク質合成の材料として…
B6
神経の保護として…
B12
糖代謝(エネルギー代謝)にはビタミン&ミネラルが大量に必要
〔ミネラル〕
・鉄
過剰:ROS(活性酸素種)産生
欠乏:貧血
※過度の貧血にならない程度の鉄摂取制限によって生体内鉄量を減少させることで糖尿病の病態改善、糖尿病発症リスク軽減につながる可能性がある
・クロム
正常血糖維持に必要な微量元素
欠乏:インスリン抵抗性、高血糖など
・マグネシウム
多くの酵素反応やエネルギー産生(ATP)に関与
欠乏:インスリン分泌障害やインスリン抵抗性を惹起
※糖尿病患者は血清マグネシウム低値を示す
・亜鉛
インスリンの活性と安定性に関与
※2型糖尿病患者においては血中亜鉛濃度が低下していることが示されている
〔銅〕
抗酸化酵素…Super Oxide Dismutase(SOD)合成に必要
過剰:ROS 産生を触媒する
欠乏:糖尿病の病体を増悪させる
※銅補充→是正されるとの報告も
積極的摂取:クロム・マグネシウム・亜鉛
過剰摂取注意:鉄・銅
糖尿病と食事由来金属元素
〔抗酸化物質〕
高血糖の場合、合併症対策として抗酸化物質を通常より摂取する必要がある
ビタミン…C、E
カロチノイド…緑黄色野菜
ポリフェノール…赤ワイン、ゴマ、緑茶(カテキン)
〔アルコール〕
25g/日(ビール500ml、日本酒1合程度)
ビールよりは焼酎orウィスキー推奨
※発泡酒やノンアルコール飲料(糖類、人工甘味料などが添加されているため)などに注意
運動は糖取り込みを促す
〔運動療法〕
・運動(筋収縮)は糖取り込みを亢進させる
(インスリンを分泌しなくとも糖を取り込むため膵臓の負担軽減)
・歩行程度の低強度運動でも血糖↓や糖取り込み亢進効果がみられる
・運動は筋のインスリン感受性を高める
(運動終了2~3時間後…たくさんの糖輸送担体が細胞膜へ移動)
・糖尿病の予防・治療に有効な運動強度
乳酸閾値強度(50~70%VO2max)×30~90分/日
全力運動(100%VO2max)×短時間/週3日
参照記事↓
運動と骨格筋GLUT4
運動しよう!身体活動量を上げよう!と言われても、これまでに運動習慣がない方にはハードルが高く、なかなか急には行動に移せません。
そこで、日常のちょっとしたことに変化をつけてみては?
〔日常生活に運動を組み込む〕
・電車(一駅まえに降りる)
・エスカレーター⇒階段
・自動車⇒自転車⇒徒歩(※徒歩だと荷物を持つため、カロリー消費と筋力トレーニングとなる)
多くの研究によると…
慣れてきたら…
30~60分の有酸素運動(50~60%VO2max)/週5~6回
「カネの流れを追えば世の中が見えてくる」という例①
「カネの流れを追えば世の中が見えてくる」という例②
【まとめ】
・糖尿病の予防は可能である
・血糖値のコントロール(服薬、注射なしで)は可能である
・肥満は糖尿病と相関しているが因果はない(内臓脂肪+糖代謝異常)
・インスリン注射は負(肥満の)のループになる
・糖尿病を治療できると、高血圧、高脂血症も改善可能である
【ヤスタの見解】
血圧やコレステロール同様、内服やインスリン注射を打ち続けているという状態は治ったとは言えません。以前の私は、糖質中毒といっても過言ではないくらい糖質過剰でした。
糖質過剰の副産物が…
・絶え間ない疲労感
・いくら食べても決まって空腹を覚える
・睡眠不良
・食後の眠気(血糖値の乱高下、おそらくは血糖値スパイク)
適量糖質に変えるまで、上記のようなことが異常だということに氣づきませんでした。なぜならば、それがずっと続く定常状態であったからです。多くの糖質過剰な方が当てはまるのではないかと思われます。
誰しもが、「自分は、自分だけは病気にならない」と思っている節があります。それは、他人の会話と食行動に散見されます。
重要なのはイメージすること、イメージできること。
自戒を込めて…
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