【イベント開催レポート】 シェアリングエコノミーとDAOの活用の可能性(シェアリングエコノミー協会九州支部)
2022年6月10日(金)、福岡で開催された九州支部主催イベント「シェアリングエコノミーとDAOの活用の可能性」。支部長 森戸裕一氏のファシリテートのもと、協会 代表理事 上田祐司氏による講演の後、ご参加いただいた皆様を交えたトークセッションを実施しました。
本記事では、上田氏の講演をもとに、現在の社会における課題、DAOの実現による社会の変化・実現に当たる課題・解決のためのヒントについてご紹介します。
登壇者プロフィール
ソーシャルメディア・シェアリングエコノミー、これまでの課題
冒頭で上田氏から紹介された、これまでのソーシャルメディア・シェアリングエコノミーの課題は、下記の2点。
創業者や役職者だけが企業価値向上のリターンを受け、ユーザーはリターンを十分に受けられなかった
例:民泊の提供者や、動画ポータルのクリエイターが受ける対価利用者が決定した方がより良くなる場も、運営者に決定権があった
例:シェアハウス、シェオフィスにおけるルール等
言い換えると、リターンや決定権が、運営者から利用者に移ることで、ソーシャルメディア・シェアリングエコノミーはサービスの向上が見込まれる、ということだ。
DAO(分散型自律組織)だとどうなるか?
続いて、そもそもDAOとは何かを理解するため、時代の変遷から解説がスタートした。
・「オフライン」「オンライン」「オンチェーン」
インターネットが普及する以前を「オフライン」、現在に至るまでを「オンライン(インターネット上)」とすると、これからは「オンチェーン」が加わってくると考えられている。
例えば、「オフライン」の時代における我々は、チラシやCMなどの広告・宣伝から得た情報を得て、銀行で現金を引き出して購買を行なっていた。「オンライン」の時代では、オンライン上に銀行があるので、銀行に足を運ぶことなく、ボタン一つで取引が可能になった。
・「オンチェーン」での取引はどうなる?
そもそも「オンチェーン」とは、ブロックチェーン上の取引を指す言葉。ブロックチェーンには、システムダウンが起きにくい・改ざんが困難、という特性がある。すべての取引履歴がチェーンのように記録され、さらに、それらは誰もが見ることができるデータとなるため、透明性や信頼性が非常に高いのだ。
具体例にもある通り、全ての取引がオンチェーンで行われると、管理者は不要となる。「オンライン」までは、ネット銀行の運営者が仲介していたのに対し、「オンチェーン」では、利用者同士が取引を行うからだ。
・「オンチェーン」と「オンライン」の違い。
「オンチェーン」と「オンライン」の違いは、管理者の有無だけではない。
「オンチェーン」において管理者がいないのは、全てがアルゴリズムで管理されているからだ。
言い換えると、「オンチェーン」では、「オフライン」や「オンライン」利用者や管理者の間に交わされてきた"契約書"がプログラミングされているのだ。さらに、プログラミングされた内容は、誰もが知ることができる。自動販売機のように、求める結果に応じた購買ができる。
これを、スマートコントラクトという。
「オフライン」や「オンライン」においては、その秩序を保つ契約書は、絶対的な存在だ。そのため運営者には、契約違反や、契約書の解釈の違いへの対処が求められる。一方、「オンチェーン」は、自動販売機のように、特定のボタンを押せば特定のイベントが起きるような環境だ。個人による解釈の違いは生まれず、契約違反を対処する運営者は必要ない。
・「オンチェーン」で生まれた組織「DAO」
ここまで見てきたように、「オンチェーン」で完結する取引には、運営者がいない。この運営者不在の環境下で生まれた組織を「DAO(Decentralized Autonomous Organization)(分散型自律組織)」という。
これまでの中央集権型の組織においては、運営者やリーダーが、決定権やリターンを手にしてきた。一方、DAOになると、みんなで所有しみんなで意思決定しみんなでリターンを得ることになる。
冒頭で挙げた、ソーシャルメディアやシェアリングエコノミーのこれまでの課題も、DAOであれば解決できる可能性が高い。
DAO実現に向けた課題
DAOは、利用者がコアバリューとなるソーシャルメディアやシェアリングエコノミーに向いている。
しかし、課題もある。それは、「オンチェーン」と「オフライン」「オンライン」を繋ぐこと。
現在、私たちが使用しているほとんどは「オンライン」のサービスで、「オンチェーン」だけで成り立っている取引は、未だ数が限られている。そのような状況下で、上で紹介された「スマートコントラクト」を実現するには、「オフライン」「オンライン」からの情報が不可欠。ただし、「オンチェーン」では、この情報をもとに組まれたプログラムが絶対的な存在となるため、この情報の信用度が非常に重要になる。これを、オラクル問題という。
DAOを実現していくには?
ここまで見てきたように、DAOを実現するには、下記いずれかを実践していく必要がある。
我々が行なっているビジネスや、利用しているサービスは、ほとんどが「オンライン」もしくは「オフライン」であるため、前者のように、全てを「オンチェーン」で行うことはそう容易ではない。
一方、オラクル問題を考慮しないのであれば、後者の「オフライン」「オンライン」と「オンチェーン」を繋ぐ方法は比較的実現しやすい。
実際に、米ワイオミング州では2021年、DAO法人が設立された。そこにおけるDAO法人と株式会社の違いは、「代表者が決定するのではなく、アルゴリズムが決める」ということだけ。定款には、発起人の代わりにアルゴリズムが記載されたアドレスが記載されている。
それ以外には、株式会社との違いがほぼないとすると、DAO法人という新しい法人の形は、より広く浸透していくと考えられる。
・日本でDAO法人を立ち上げる場合、具体的にはどうすれば?
日本ではまだ、DAO法人という法人格は認められていない。しかし、DAO的な組織を作ることは可能である。
例えば、DAOと同時に合同会社を設立し、定款に「すべての決定は別途定めるDAOで行う投票による意思決定に依存する」といった記載をする。箱を合同会社で作っておいて、実質的にはDAOが全てを行う、というイメージだ。
・ガイアックスが取り組むDAO
上田祐司氏が代表執行役社長を務める株式会社ガイアックスでは、ブロックチェーンを学び、新しいことをサービスを作りたい人が集まるコミュニティー「Blockchain Biz Community」の運営に加え、現在、シェアハウスDAO・シェアオフィスDAO・不動産投資DAOなどに取り組んでいる。
おわりに
本記事では、6月10日に福岡にて開催されたシェアリングエコノミー・DAOの活用に関する、上田祐司氏の講演を紹介しました。
リモートワークが普及し、働き方・雇用形態も多様化している今、上田氏の言葉を借りると「DAOにインスパイアされた組織」は、確実に増えていくのではないでしょうか?
今後もシェアリングエコノミー協会では、会員企業様・シェアリングシティ推進協議会参加自治体の職員様向けのオンライン勉強会や情報提供、マッチングに加え、全国にある支部を中心にリアルでの勉強会&交流会を実施して参ります。
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