家庭ってなんだろうー児童養護施設の実習を通して感じたことー
私は現在、養育里親登録の手続き中です。必須研修の中で、児童養護施設での、実習や見学がありました。
私にとっては生まれて初めて足を踏み入れる施設でした。
限られた場所でのとても短い時間ですが、そこで見たことや考えたことを通して、
家庭ってなんだろう
里親ってなんだろう
について、書きたいと思います。
前回の記事で最後に引用しましたが、
ある自治体にはこういう記載がありました。
このメッセージ、咀嚼しきれず私の中で消化不良になっています。
書き終わった時に、これを消化できればいいなと思っています。
児童養護施設での実習感想
私がお邪魔した施設は2箇所で、施設Aでは半日間子供達と過ごし、施設Bでは子供達のいない中で職員さんの話を聞くこと中心の見学をしました。
感想は、率直に、誤解を恐れずにいうと、
施設っていいところだなあ。
です。
栄養士さんが献立を考えた栄養バランスの良い食事が用意され
お菓子やジュース、Youtubeは特別な時だけに限られています。
共有の物であれ自分のものであれ、物を大切にする精神は必然的に身につく環境です。また、小さな頃から自分のことは自分でやる自立心も育まれていました。
なんて、慎ましくも健全な環境なんだろうと思いました。
設備に関しては、施設AとBで建物の古さが大きく違っていて、Aの方はかなり古い建物でした。一方、施設Bはびっくりするくらい綺麗でした。
どこに入るかは、保護された地域によって異なるのだそう。
例え施設が古くても、安心安全健康的な環境には違いありません。
実習後、私は
「里親、本当に必要なのかなって思っちゃいました」
と素直に職員さんに言いました。
そしたら、
「施設の子どもたちは何だかんだ言って大人に遠慮してます。施設の職員は交代制で、本当の親子ほどの信頼関係を築くことは難しいです。里親さんの元で、人との信頼関係の築き方や、家庭というものを経験することはとても大切だと考えてます。」
という意味のことを答えてくれました。
国としても、里親家庭を推進しているようです。
その裏にある政治的、行政的な事情は私にはわかりません。
ただ、現場の職員さんの「里親家庭で過ごすことは大切」とおっしゃったことは本当だと思います。
私自身、育児書を山ほど読んできて、「愛情」や「信頼関係」、親が子供の安全基地となることが、子供の成長の土台であり根本的に大切ということは頭に叩き込んであります。
それでいうと「里親、本当に必要なのかな」っていう私の質問は愚問かもしれません。
そもそも制度を否定したい気持ちは1ミリもありません。
だけど、「こどもの権利と利益を守るための制度」の意義を本当に理解するにあたっては必要な問と感じます。深掘りしたいと思います。
児童養護施設とは何か?
話は変わって、児童養護施設とか乳児院ってなんなのでしょうか?
歴史を辿ってみると、
戦争孤児救済のため、戦後間も無い1947年(昭和22)に児童福祉法が制定され、そのもとで始まったのが児童養護施設だったようです。
戦争で親を亡くした子供たちの保護が目的で始まった児童福祉法ですが
2024年の現在、保護される子ども達の7割以上が「虐待」という理由に変化しています。
また、日本では社会的に養護される必要がある子どもたちの90%が施設で、10%が里親等への委託は10%程度です。
里親委託の割合が増えない原因について、ウィキペディアにはこうありました。
そして、私が説明を受けた3自治体の児童相談所でも同じ話を聞きました。
戦争孤児のための福祉サービスが、虐待児童の保護に変化したことで、子どものための法律を掲げながらも、実親の意向との調整が難しい、という現状なんだなあ、と思いました。
親を亡くした子ども達であれば、里親が引き取れるなら里親へ、となると思うので、それに抵抗する力が働くことは、法律制定時は想定されていなかったのかもと思います。
(想定されてたとして何が変わるのかは分かりませんが。。。)
ウィキペディアの記載などからは、なんとなく、里親委託に抵抗する実親をちょっと非難するようなものを感じます。
でも、ですよ。
親が生きていて
子供を手放したくない、いつでも会いに行きたい
と言ってくれているなら、少なくとも小さい子どもにとっては、嬉しい話じゃないでしょうか。
親がどんな気持ちで言っているのかは分かりませんが
子供がこれを「親からの特別な愛情」と受け取れば、それは愛情ではないでしょうか。
もし子供が、「お父さんとお母さんは自分を大切に思ってくれている」と感じながら、施設で安全健康に生活するなら、
実親にとっても子供にとってもベストな場所が、施設、ってことになる気がします。
家庭とは何か?
施設Bでは、子ども達5〜6人が生活する1部屋ごとに担当の職員さんが2人いるそうで、職員は可能な限り男女で配置するそうです。
お父さん、お母さん、とは呼ばないですが、イメージとしてはそういう配置。
私が見学した部屋は、3歳から中学生までの男女混合で、中には実の兄弟もいるとのことでした。
(施設Aでは男女で完全に生活スペースが別だったので、性別に関しては施設によって考え方が異なるようです。)
そんな施設で、半日子ども達と遊んだり見学したりして、特に印象に残ったこととしては
施設と家庭の二項対立が存在するなあ、ということでした。
まあ、法律上そうなってるので、改めていうことでもないと言われたらそれまでですが。二項対立を肌で感じたのでした。
いずれの施設でも、同じ建物で生活しているからと言って、
血が繋がっていない子ども達を兄弟姉妹扱いしない、ということでした。
一緒に生活している子ども達は一人一人独立した個人として尊重する。
上の子が下の子の面倒を見るとか、
みんな兄弟姉妹みたいなもんなんだから助け合って行こうねとか、
そういう文化ではない。施設だから。
みんな仲良く共同生活は行うけれど、一人一人の自立を目指していく。
という意味のことを職員さんがおっしゃっていました。
あくまでもここは施設であって家庭ではないんだよ
多くの子ども達が育つ”家庭”っていうものがあるんだよ
職員さんはそういう自覚を持って子ども達と接していることが私には伝わってきました。
私に伝わってきたので、子ども達もそのように受け取っていると思います。
これはもちろん、プロとしての姿勢だと思います。
だけど一方で、
施設と対立する「多くの子ども達が育つ”家庭”」
って、なんなんだろう。という疑問が浮かびました。
そんなものマボロシなのでは・・・。
(誤解のないように添えると、私は施設の職員さん達のことを尊敬してやみません。)
冷静に考えると、
ただただ、いろんな家庭があります。
シングルマザーの家庭もあれば、3世代同居の家庭もあります。
”一般的な家庭”って、サザエさん?ドラえもん?ちびまる子ちゃん?
共働きもあり、専業主婦もあり、
これから、ますますいろいろな家庭の形が出てくると思います。
同性のカップルだってありますし
結婚してない事実婚だってあります。
水の代わりにジュースを飲む家があれば
オーガニック食品しか食べない家もあり
毎日何時間もYouTubeみる家もあると思います。
進学や進路指導の時に施設出身だと困るという話もありますが
じゃあ、家庭だったら適切な対応ができるのでしょうか?
経済的な状況、各家庭でどれほど差があるでしょうか。
里親の研修は、たった、丸3日間だけです。
研修で何か専門性が身につくわけじゃありません。
里親家庭だって、環境もバラバラ、それぞれ個性ある家庭です。
「家庭」と「施設」の二項対立はマボロシだよなあ、という気がします。
まとめ
答えのないテーマについて書き始めてしまったなあ・・・と若干後悔しつつ笑
あんまり「家庭とは」とか「里親家庭とは」とか考えないでいいんだな、と言うのが結論かもしれません。
施設と家庭というのは法律上わかれているけれど、ここまで書いて私の中ではボーダーレスになりました。「家庭としてあるべき姿」とか「施設にはないものを与えてあげよう」とかあんまり意識する必要はないんだなと思いました。
それで、冒頭のこれに戻ってみます。
なんで心に引っかかっていたか、ここまで書いてやっと分かりました。
里親の「子育てがしたい」「こどもがほしい」という希望、めっちゃ大事じゃない?
だって、本当に何が子どものためになるのかは誰にも分からないです。
本当にこれが子どものためなんだろうか?
私が育てるより施設の方が子どものためになるんじゃないか?
もっと他の里親のところに行った方がいいんじゃないか?
実親に戻してあげるのがこの子のためなのか?それとも違うのか?
こんなこと考え始めたら答えに辿り着かないし、里親登録なんて一生できない気がします。
私は、この言葉に真っ向から反発し、
私の「子育てがしたい」「こどもがほしい」という希望と「子どもが可愛い」と言う感情を原動力にして里親になろう
と思います。
色々な条件が整って、奇跡的に縁があった子どもに
「ようこそ!私のところに来てくれてありがとう!」ってハグしたら、幸せを感じるのは私自身だと思うんです。
児童福祉というと、暗くて重い気持ちになる話が多いです。
実際、色々あると思いますが、深掘りして考えに考えた結果、
一周回って、素朴に子育て楽しみたいなと思います。
なんだかすごく時間をかけて書いてしまいました。
ここまで読んでくださってありがとうございました!
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