チェイサーは王道少年漫画である!

チェイサーという漫画をご存じだろうか?

僕がいまもっとも好きな漫画である。
ざっくり言うと「マンガの神様・手塚治虫と同時代を生きた架空の漫画家が、手塚を追跡(チェイス)するようにライバル視してマンガ黎明期時代を生き抜く」というようなもの。
その独特の設定から、「手塚治虫をライバル視する漫画家」という部分だけが取り上げられて、ニッチな作品だと思われがちだけど……。

実はそうではない。
このマンガは、ビックコミックスペリオール連載の青年漫画だけど、実はその奥にはとても純粋な王道ストーリーが隠れているのだ。

友情・努力・勝利

よく少年漫画(特にジャンプ)で言われるのは、「友情・努力・勝利」が読者の心をつかむという話である。
チェイサーは実はこの3要素が全て揃っている。

まず、友情。
主人公の海徳光市には素晴らしい仲間がいる。
編集者・アシスタント・奥さん・子供。
海徳の素晴らしいところは、その編集者への義理だったり、奥さんを守ろうとする姿勢だったり、アシスタントの力を認めてくれる器量だったりする。
皆、彼についていきたいと思うからこそ、仲間が集うのだろう。
まさしく少年漫画の主人公のようではないか。

それから努力。
海徳光市は手塚治虫を追跡(チェイス)している。
これはまさに不断の努力ではないだろうか。
海徳は他人から見たらバカとも思えるようなことをやってしまう。
手塚が編集者から逃げるということを聞いたら、自分もやってみようと思い、わざわざ旅館を借りてまで逃げるという手段を取ってしまう。
それから手塚がアニメーションを学ぶために動画会社でわざわざ働いてると聞いたら、海徳も同じく動画屋の一員として働いてみたりする。
愚直とも言えるぐらいにまっすぐな海徳の手塚を追う「努力」は、少年漫画でライバルと追いつき追い越せを繰り広げる主人公そのものである。

そして勝利。
海徳は漫画家として決して落ちぶれてはいない。
どちらかと言えば成功者の部類に入り、着実に勝利を掴んでいく。
漫画の連載を勝ち取り、週刊連載でも最初は乗り遅れるがきちんと後で結果を出す。
そのおかげで家のローンまで払いきってしまったほどだ。
ただし、成功ばかりではなく落ち込みもするし、運に見放される時もある。
そんなときでも海徳は諦めず、勝利をもぎ取ろうと必死に食らいついていくのだ。
それはつまり、上記の努力と友情があってこそのもの。
全てに繋がりがあるからこそ、素晴らしい「勝利」に導かれる。

みんな『チェイサー』を読もうよ

以上のことから、チェイサーは素晴らしい王道少年漫画でもあると僕は位置付けている。
コージィ城倉先生の意図は分からないけど、僕としては海徳光市にぜひとも今後も頑張ってもらいたいし、いつか手塚さんを追跡するだけでなく、追い付いてほしい。
まあ、たとえ追いつかなくても(いや、そもそも追い付くとか追い付かないとかいう次元の話ではないのか)、海徳光市が素晴らしい主人公であることには変わりはない。

とにかく。

『チェイサー』6巻の発売、楽しみに待っています!

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