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三郎 丸
2021年4月14日 16:48
吐き、飽きが違えて鳴く空の夏季、呼気が途絶えて明く空の絞り絞れて千切れるほどに筋は違えど血の色深し新緑もまた新緑の溶けぬ声こそぼとりと落ちて不格好な手足をバタバタさせて、目がくらくらするほど若い山。絶え絶えなる息をするほどばらばらと、結びの管は解かれて汗と脂と糞の流れ出たる、からだ、体が溶け出して指の先、足の先、一つ一つの管が窒息で泣いて、破れて割れて流れ出す。ひっ
2018年11月26日 22:54
20平米もない小さな居間に一人分の布団を敷いて高くはない天井をじっと見つめるように二人の体が横たわる雨戸越しに、虫の声が聞こえてくる絡み合う指先の柔らかな冷たさにただ二人当てもない静かな夜の海を板戸の上で漂っているかのような底のない心細さを思わされるオレンジ色の暗い明かりが四方の壁を鈍い灰色に照らすのを見ると誰もいなくなった暗い暗い夜の海を二人箱舟で彷徨っているかの
2018年11月28日 08:23
テーブルクロスを庭先で払うとき、白、緑、白、灰、と視界の色が互い違いに変わる。明るい灰色の霧に覆われた山間の村で、年の瀬の気配を感じる冷たく湿気った週末。昼食の後の気だるい体を霙を吐き出す冷気が纏い、背中に感じる部屋の暖気に思わず身震いする。視界の端には、白く愛くるしい姿のミヌ、犬のことだが、が落ち着かなく縦に横に揺れるテーブルクロスの端を、興味深げに眺めていた。---
2019年11月26日 08:47
深く差し込んだ橙色の光が、濃い群青の砂漠の空を執拗に照らしている。西の丘はその背後に背負った橙色の光に焼かれて、真っ黒な影を砂漠に落とす。群青色と橙色とが争って、濃厚な卵白のごとく浮かぶ雲を一つ二つと染め上げる。暗い暗い夜がやってくるのを知りながら、今一時はその迫り来る孤独を忘れて回り続ける地球を見ている。シンとした、うるさいほどの沈黙。騒がしいほど無口な黄昏の色。その手
2019年11月26日 08:49
何を食べても満たされない空腹が怖い空いた胃袋はそのままわたしの脳みその空白になるどんなものを食べても本質的に満たされない***蛍光灯が埃っぽさを殊の外引き立てる改札を抜ける。我が家は歩いて1分の至近にあるアパート。ひとしきり一人で飲んで、食べて、六千円払って帰ってきたのだ。居酒屋のメニューを前菜からメイン、シメまで一通りなめて、まあ大したことない味だからそのままかきこむように
2021年1月2日 00:16
暗い橋の下に、いつも河童がいた。他府県から流れてくる支流が合流して、海へと流れていく大きな大きな河。いくつもの鉄橋が横たわり、時には鉄道を、ときには自動車を、右へ左へと流していく。その橋の下。葦やススキが鬱蒼と生い茂り、年がら年中乾くことのないケチな湿地。河童は、迷い込んでくるウミネコや百合鴎を日がな一日見つめていたり、天気のいい日にはコンクリートの堤防に物を干している時もあっ
2018年11月28日 19:05
5月の風が、高いところを過ぎて行く。目の前の水面に照りつける、お天道様の煌めき。その下をタガメが泳いで行く。気楽なもんだなぁ…セツは痛くなった首を少し上に向けた。水の煌めき、泥、タガメ、カエル、そして、恐ろしいほど澄んだ青。セツの視線に映るものはずっと変わらない。ここは静かだ、家族の声も蛙の声もすごく喧しいのに、ここはとても静かだ、と思った。指先を泥の中に突っ込んで、