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続・ほろよい歳時記

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京都と滋賀の二拠点から、酒蔵のある風景を旅して呑んで。四季折々に好きなものを愛で、酔いしれる暮らし。毎日新聞に連載していた「すみれのほろ酔い歳時記」の続編。
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#日記

秋日、湖国の酒旅。―2.忍びの里へ―

秋日、湖国の酒旅。―2.忍びの里へ―

前回の「秋日、湖国の酒旅。―1.青に浮かぶ町― 」より、ずいぶんと時間が経ってしまいました。
続編を綴る――。

さて、旅の続きは道中の車窓より。

高島のマキノを後にして、近江今津の「西友」さんで鰻ランチなどを楽しみ、近所の「琵琶の長寿」醸造元・池本酒造さんへ立ち寄ったのだった。先の車窓に写る、おもちゃの酒レプリカは、そのお蔵さんで購入したもの。店頭では、親切な女将さんが試飲を進めてくださり、

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秋日、湖国の酒旅。―1.青に浮かぶ町―

秋日、湖国の酒旅。―1.青に浮かぶ町―

晴れやかな秋晴れの日、湖国を北から南へぐるりと半周する酒旅へと出かけた。

この日、京都の日本酒バーの女将さんにお誘い頂き、2軒の酒蔵を訪ねることに。

まずは、滋賀県高島市にある吉田酒造さんを訪ねた。

私が滋賀の拠点として住んでいる木之本からは、JR琵琶湖線に乗り、湖北のてっぺんにある駅「近江塩津」で湖西線に乗り換えて「マキノ駅」まで。乗り換えの接続さえうまくいけば、電車で約20分少しの距離だ

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湖北、観音の里は春

湖北、観音の里は春

早くも、桜吹雪に包まれた京都を離れ、JR琵琶湖線で湖北へと向かう。車窓の景色は湖北にだんだんと近づくにつれ、まるで季節が逆戻りしていくよう。京都に比べて、湖北はおよそ1週間程桜の開花が遅いとのこと。
季節を行ったり来たりする生活も、桜を2倍楽しめると思うと、悪くないものです。

伊吹山の山頂付近には、今朝もうっすらと雪。
近所の日吉神社の桜も満開を迎えていた。

ふと思い立って、隣町へ“観音の里”

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“ルポ&イラストレーター”のしごと。

“ルポ&イラストレーター”のしごと。



秋色から冬色に変わるとき。日々、季節の色を確かめるように、仕事場の窓からじっくりと山々を眺めています。ひんやり、しぐれと共に色を深めていく―。

夏越しの祓から、早いもので年の瀬を迎えます。
春には京都に新たな拠点を持ち、滋賀と京都、大阪を往復する日が続いて、せわしないようで、でもしっかり休むときは休んで、湖北の静かな生活にも、ずいぶん癒されました。

気が付けば、“ルポ&イラストレーター”の

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祭りと共に過ぎ去った春の日々。

祭りと共に過ぎ去った春の日々。

あの白銀の景色から、季節は巡って、窓から、溢れんばかりの眩しい緑が迫っている。
日々、刻々と移り変わる季節の色を、この山の装いに眺めている。

中でも愛する山色は、桜の咲くころ。
もくもくと湧き立つような山の色を、脳裏に焼き付けようと必死。
自然の織りなす色々を、絵の具にのせていくことが何よりの喜びです。

今年も描いた、唐招提寺のうちわまきへの奉納画二対も、
萌えいづる春の色。
神々の宿る〝山笑

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湖北、冬色の日々

湖北、冬色の日々

ほぅ――と、言葉を無くして、今朝も、我が家の窓から雪景色を見つめていました。
木之本は、今が一番美しい季節かもしれない。
この街のどこにいても、清廉な白のベールをまとった山並みが見える。

新年早々から、京都や神戸へ、仕事で泊りがけで往復する日々が続いていた。せわしない出張から帰る度に、白銀の山々に迎えられ、心が静かに震えた。

雪がすべてを覆い隠した街道の景色は、歴史の武将たちが眺めていたものと

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秋色に染まる北国街道 ―「 街道まつり」

秋色に染まる北国街道 ―「 街道まつり」

今年の紅葉シーズンの到来は早いらしいけれど、湖北の紅葉はそれよりももっと早いようで。
街道から眺める山並みも、すっかり秋の装い。

夕刻、秋色をまとう、木之本のお地蔵さま。

我が家の玄関先に迷い込んでいた銀杏の葉は、どうやら近所の神社からやってきたみたい。
お参りがてら行ってみると、眩しい程の黄色が、秋空に映えていました。

ちょうど、秋の連休中には、木之本の街道まつりが催されていたので、お昼ど

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いのちの水が湧く―。安井酒造場の“井戸替え”を訪ねて

いのちの水が湧く―。安井酒造場の“井戸替え”を訪ねて

秋分の日の朝。今日は大安の日。

早朝の電車に揺られて、滋賀県甲賀市にある安井酒造場さんへ。
“笑顔こぼれるうまい酒”「初桜」を醸す蔵です。

この日は、酒造りの前の恒例行事「井戸替え」をされるとのこと。

そんな貴重な日に、初めて訪れることが叶いました。

貴生川駅からバスで20分ほど、最寄りの場所に到着。東海道のゆるやかな道沿いに見えた、レンガ造りの煙突。
宿場町だったという、のどかな街並み。

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ぼくは、美味しいお酒になるために生まれた。

ぼくは、美味しいお酒になるために生まれた。

朝7時―。
雲一つない青空が広がっていた。まだ昨夜のお月様が、ぼんやり青空に浮かぶ。

今日は、酒蔵の蔵人さんに引率してもらって、無農薬栽培の酒米の農家さんの元を訪ねることに。

酒蔵から小さな車ミゼットを借りて、夫婦ふたりでぎゅうぎゅうに座って運転する。ところどころ刈り取られた田んぼと、頭を重たげに実らせた稲穂。黄金色の田んぼ道を、軽やかに疾走する軽トラについていく。

木之本から高月を過ぎて、

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ひょっこり竹生島

ひょっこり竹生島

琵琶湖のてっぺんにぽっかりと浮かぶ、竹生島。
7月のおついたち、長浜港から出るフェリーに乗って、初めて島へと渡った。
その前日、6月30日といえば、茅の輪をくぐって半年間の穢れを祓う、大祓えの日。毎年この時期に、生まれ故郷の氏神さん、松尾大社で茅の輪をくぐる習慣でしたが、今年はそれも叶わず。
もやもやとしながら、7月を迎えてしまったので、ここでえいやぁと竹生島に渡ってみたくなったのでした。

でっ

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にょろりんの綱渡りを見た。(怖いもん見たさ)

にょろりんの綱渡りを見た。(怖いもん見たさ)

昼下がり、我が家自慢の庭を眺めながら、主人と一緒にお昼ご飯。
「あ”―っ!」
と、主人が指さす先に、にょろりんが…

気持ち悪さに、ぞっとしながら、怖いもの見たさでシャッターを切ってみる。この自然全てを受け入れるのだと言い聞かせて…。

でもやっぱり、ぞっとする…苦手だわ、にょろりん。
なんとか苦手を克服するべく、しばし観察。

身体を波打たせながら、松の木から電線を綱渡りして行く、にょろりん。

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蛍灯

蛍灯

夜回りに行った際、ご近所さんから、蛍が見られるとの情報をもらい、さっそく翌日、時計が8時をまわってから夜のお散歩へ。
お酒と、ポケットにお猪口を偲ばせて。

街道をまっすぐ、大通りを2つ越えたあたりの川で、だいたい10分くらい歩く…という情報を頼りに、歩いて行きました。
だんだんと街灯もなくなって、真っ暗な夜道を進む。畦道の草原、懐かしいにおい。雨の降らない梅雨入りでも、蛙の合唱はとても賑やか。

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蔵の女将さん直伝の桑酒モヒート

蔵の女将さん直伝の桑酒モヒート

木之本の元気なお母さんたちが集まって、こんど地元で開催する日本酒会のための試食会におよばれして来ました。
皆さん家事をすませられてから、夜になって、近所の酒蔵にいそいそと集合。北国街道沿いの老舗酒蔵、山路酒造さんで、女将さんのご厚意で趣ある店内の一角をお借りしての和やかな試食会が始まりました。

お母さんたちの持参した籠から、次々と食材が出てきて、机に素敵なお料理がひろげられてゆきます。お酒も、山

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