見出し画像

蛍灯

夜回りに行った際、ご近所さんから、蛍が見られるとの情報をもらい、さっそく翌日、時計が8時をまわってから夜のお散歩へ。
お酒と、ポケットにお猪口を偲ばせて。

街道をまっすぐ、大通りを2つ越えたあたりの川で、だいたい10分くらい歩く…という情報を頼りに、歩いて行きました。
だんだんと街灯もなくなって、真っ暗な夜道を進む。畦道の草原、懐かしいにおい。雨の降らない梅雨入りでも、蛙の合唱はとても賑やか。
水の音をたよりに、田んぼの用水路を眺めると、ひとつ、ふたつと蛍の点滅を見つけて「あっ」と声をあげました。

近年、無農薬の田んぼが増えたことで、蛍が復活したのだとか。途中、近隣の旅館のマイクロバスがあり、旅館の浴衣姿の人たちとすれ違う。どうやら観光スポットにもなっているみたい。

その人たちが立ち去った場所に、大きな柳の影が見えて、川に沿って大きく育った木々が続いていました。近づくにつれ蛍灯がだんだんと増えていき、川を渡る道の上から、上流を眺めると、いっせいに点滅するたくさんの光が現れました。
柳の木の下に、親切に木のベンチまであったので、さっそく蛍酒。
少し肌寒いので、一杯だけ。

巫女をしていたとき、神主さんたちと蛍を眺めて、カワラケで蛍酒を楽しんだ記憶が懐かしい。

私が住まれ育った京都洛西でも、近所の川で蛍が見れました。
夕涼み、父と妹と一緒に見に行った蛍。
いま仕事場に飾っている父の絵と共に。

蛍は、平安時代から恋のうたに度々登場するけれど、幽玄な世界へと誘われる気がして、空恐ろしい気もする。

ひとの想いを宿して、はかなげに浮遊する蛍灯。

自宅からすぐの場所に、また美しい場所、守りたい場所を見つけた日。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?