kyotaro04

洋書仕入の仕事をしています。あまり売れそうにないけど、個人的におもしろそうと思った洋書…

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洋書仕入の仕事をしています。あまり売れそうにないけど、個人的におもしろそうと思った洋書を、日本語で紹介していきます。あくまで洋書新刊紹介文を読んだだけなので、本人未読です(^^ゞ

最近の記事

ニューロダイバーシティーからマイノリティーの問題を考える

Empire of Normality: Neurodiversity and Capitalism 「正常性の帝国:ニューロダイバーシティーと資本主義」 by Robert Chapman November 2023 (Pluto Press) ニューロダイバーシティーである。 新しい言葉だ。 新しい概念だ。 例によってググってみると、すでにカタカナ表記で「ニューロダイバーシティー」と出てくる。 新しい言葉というのは、英語で初めに表された場合、それが日本語としてカタカ

    • 台湾に住む24人の聞き書きから浮かびあがる、台湾の生活史

      Taiwan Lives: A Social and Political History 「台湾の生活:社会・政治史」 By Niki J. P. Alsford February 2024 (University of Washington Press) 岸政彦さんが監修した『東京の生活史』が読みたいのである。 しかし、あのぶあつさに、おもわず二の足をふんでしまった。 そしたら、『沖縄の生活史』も刊行されたのだ。うーん。気になるけど、まずは『東京の生活史』を読んでから

      • 日本発祥だが海外でポピュラーになった「手当て」によるヒーリングパワー

        Alternate Currents: Reiki's Circulation in the Twentieth-Century North Pacific 「20世紀北太平洋地域におけるレイキ(霊気)の流布」 Justin B. Stein September 2023 (University of Hawai'i Press) おっ。Reikiって「霊気」か。 なんかヤバいやつ?? さいしょにこの本の紹介文を読んで、Reikiという言葉にふれたとき、それが「霊気」のこ

        • 世界にはまだまだ知らない文学がある

          Needle at the Bottom of the Sea: Bengali Tales from the Land of the Eighteen Tides 「海の底の針:ベンガルの物語」 Translated by Tony K. Stewart March 2023 (University of California Press) 世界文学が元気だ。 いや、昔から世界文学はあった。 フランス文学だったらユーゴーの『レ・ミゼラブル』とか、ゾラの『居酒屋』とか、ド

        ニューロダイバーシティーからマイノリティーの問題を考える

          海外の日本食レストランはどこまでおいしくなるか

          The Global Japanese Restaurant: Mobilities, Imaginaries, and Politics 「世界の日本食レストラン」 Edited by James Farrer and David L. Wank May 2023 (University of Hawai'i Press) 海外滞在中、現地の日本食レストランに行ったことのある人は多いのだろうか。 私の場合は、ウン十年前、ロンドンでホームステイしているとき、丼もののテイク

          海外の日本食レストランはどこまでおいしくなるか

          アメリカの出版業界のめまぐるしい変遷と、それが文学に与えた影響とは?

          Big Fiction: How Conglomeration Changed the Publishing Industry and American Literature 「ビッグ・フィクション:コングロマリットはいかに出版業界とアメリカ文学界を変えたか」 Dan Sinykin October 2023 (Columbia University Press) 今回は、この本の紹介文をまずは見ていこう。 そうなのだ。 古き良き時代は去った。 編集者が、ウイスキー片手

          アメリカの出版業界のめまぐるしい変遷と、それが文学に与えた影響とは?

          加齢による向学心の低下にあらがいつつカーセラル・フェミニズムなるものにかじりつく

          Carceral Liberalism: Feminist Voices against State Violence 「カーセラル・リベラリズム」 Edited by Shreerekha Pillai August 2023 (University of Illinois Press) 年をとるといろんなことが衰えてくるが、さいきんはむずかしいことを理解しようという気がおきなくなっている。 一度読んだだけではよくわからないことを、じっくり読み返したり、わからない言葉や

          加齢による向学心の低下にあらがいつつカーセラル・フェミニズムなるものにかじりつく

          いろんなレシピ本が世にあふれている今、ジョージア・オキーフのレシピ本が地味に売れ続けている

          A Painter's Kitchen: Recipes from the Kitchen of Georgia O'Keeffe 「画家のキッチン:ジョージア・オキーフのレシピ」 by Margaret Wood September 2009 (Museum of New Mexico Press) そうなのである。 ジョージア・オキーフのレシピ本が、じみーに、ポツポツと、売れ続けているのだ。 刊行が2009年だから、もうかれこれ14年目。 ロングテールかと言われると、

          いろんなレシピ本が世にあふれている今、ジョージア・オキーフのレシピ本が地味に売れ続けている

          19世紀アメリカのフツーの人の手帳には何が書いてあったのか

          The Accidental Diarist: A History of the Daily Planner in America 「偶然の日記記述者」 by Molly A. McCarthy July 2013 (The University of Chicago Press) フツーの人の生活がいちばんおもしろい。 もともと偉い人の伝記にあまり興味がなかった。エライ人の子どものころからすごかった、というエピソードを読んでも、「ふーん」というかんじ。すごすぎて響いてこ

          19世紀アメリカのフツーの人の手帳には何が書いてあったのか

          英国Sunday Times紙の主任書評子によるベスト書評

          Sunday Best:80 Great Books from a Lifetime of Reviews 「サンデー・ベスト」 by John Carey November 2022 (Yale University Press) サンデー・タイムズ(Sunday Times)は、イギリスの保守系高級紙タイムズ(Times)の日曜版である。 イギリスには、高級紙=broadsheetと、タブロイド紙=tabloidという2種類の新聞がある。 高級紙というのは、日本で言う

          英国Sunday Times紙の主任書評子によるベスト書評

          行ってみたいアメリカ初のテーマパーク

          Holiday World & Splashin' Safari: 75 Years of America's First Theme Park 「ホリデーワールドとスプラッシン・サファリ:アメリカ初のテーマパーク75年史」 by Jim Futrell, Ron Gustafson, Dave Hahner, Nell Hedge and Leah Koch May 2022 (Indiana University Press) 外国を旅するのは楽しいが、もっとあこがれて

          行ってみたいアメリカ初のテーマパーク

          ”血塗られたドールハウス”を作成し「科学捜査の母」とよばれたアメリカのおばあちゃん

          The Nutshell Studies of Unexplained Death 「未解決の死の、ひとめでわかる研究」 by Corinne May Botz September 2004 (Monacelli Press) ミニチュアが好きだ。 たぶん前から好きだったのだが、はっきり自覚したのは、ミニチュア作家の田中達也さんの作品を見てからだ。 2017年NHK朝の連ドラ『ひよっこ』オープニングのタイトルバック。畳のへりが道路で、畳がたんぼだったり、コッペパンを新幹

          ”血塗られたドールハウス”を作成し「科学捜査の母」とよばれたアメリカのおばあちゃん

          100年前、戦争で破壊された図書館再建のために心温まる国際支援があった

          Japan's Book Donation to the University of Louvain: Japanese Cultural Identity and Modernity in the 1920s 「ルーヴァン大学へ寄贈された1920年代の日本の書物」 Edited by Jan Schmidt, Willy Vande Walle, and Eline Mennens October 2022 (Leuven University Press) 本を扱う仕事

          100年前、戦争で破壊された図書館再建のために心温まる国際支援があった

          シャーロック・ホームズ アメリカへ行く そしていきなり最後の事件

          Rafferty's Last Case: A Minnesota Mystery Featuring Sherlock Holmes 「ラファティ最後の事件:featuring シャーロック・ホームズ」 Larry Millett April 2022 (University of Minnesota Press) シャーロック・ホームズである。 うむ。シャーロキアンというほど熱心なファンではないが、ホームズとはそれなりのお付き合いになる。 たぶん、さいしょは子どもの

          シャーロック・ホームズ アメリカへ行く そしていきなり最後の事件

          ヴィーガン文学研究ってなに??

          The Edinburgh Companion to Vegan Literary Studies 「エディンバラ版ヴィーガン文学研究必携」 Edited by Laura Wright, Emelia Quinn September 2022 (Edinburgh University Press) ヴィーガンかー。 かんたんに説明すると、ベジタリアンが肉や魚を食べないのに対し、ヴィーガンは、乳製品なども食べない、いわゆる「完全菜食主義者」。 はじめに言ってしまうが、私

          ヴィーガン文学研究ってなに??

          ブロマンスに見る、だんだん境界があいまいになっていく関係性

          Reading the Bromance: Homosocial Relationships in Film and Television 「ブロマンスを読む:映画やテレビに見るホモソーシャルな関係」 Edited by Michael DeAngelis June 2014 (Wayne State University Press) 卵焼きは甘い派?甘くない派? まだ20代だった若いころ、会社でランチを食べる場所があって、だいたい決まった何人かがそこでランチを食べてい

          ブロマンスに見る、だんだん境界があいまいになっていく関係性