【エッセイ】やっぱりこれよ。
今日は彼の帰りが遅い。
ここ最近仕事が忙しいとは聞いているが、それにしても今日は遅い。どんなに遅くたって20時に帰ってくるのに、20時半を過ぎても帰ってこない。
いつもなら、元気よく「ただいま〜」と帰ってきて、すぐさま近くのスーパーで買ってきたお酒を冷蔵庫に入れて、リビングに颯爽と登場してソファに直行、そして一服。その場でスーツを脱ぎ、部屋着に着替えたらソファにドサっと座り込む。
落ち着いたかと思いきや、始まるのが会社の愚痴。まぁスピーカーのように止まることなく不満が流れ出てくる。それを聞き流しながら私はパソコンをカタカタ。聞き流していることは100%わかっているだろうに、彼はひたすら話してくる。その傍らで愛猫はベランダとリビングを出たり入ったりとやんちゃに駆け回る。
愛猫を横目で見ながら晩御飯を食べ始め、テレビを見ながらまったり過ごす。晩御飯を食べ終わると彼の晩酌がスタート。私も仕事がなければ一緒に呑む。彼はオンラインゲームをしながらテレビを見て、私はテレビをBGMにスマホをいじる。
その間もずっと愛猫は夜風に当たったり、いつの間にかキャットタワーで寝ていたり。時折興奮してダッシュするときもある。
これがいつもの私たち。
だけど、今日はこれがない。
愛猫は多分私のことよりも彼が好きで、彼がいなくて寂しいのか、ふて寝している。
連絡がこないので先に私もひとりで食事。
あー、寂しいもんだなぁ。
いつもなら、スピーカーの如く話す彼を「あーうるさい」と思うのに、いないと我が家は静か。ひとりだとテレビをつける気にもならない。
いつもなら、彼と離れてひとりの時間が欲しいと思うのに、いざそんな時間ができると、やりたいことをやろうという気持ちにもならない。
騒がしくて落ち着かない空間でも、私にとっては無くてはならないもの。いつの間にかそんなふうになっていた。
当たり前がなくなると寂しくなるというが、これがそうなのか。
と考えていると、彼からLINE。「やっと帰れる」と一言。それから1時間後、クタクタになって帰ってきた。
リビングに来るないなやすぐにスーツを脱ぎ、晩御飯を3分でたいらげ、最近ハマっているタコサワーで晩酌開始。ついさっきまでふて寝していた愛猫も起き上がり、彼にすり寄っていった。
今日は呑む気がなかったけど、なんとなく私も彼に付き合うために日本酒を呑み始めた。
いつも望んでいたひとり時間は、いざできたら別に楽しくもなかった。なんだかんだ、毎日のルーティーンが一番落ち着くし、賑やかなリビングで何かするのが一番捗る。
なんの変哲もない毎日。いつもと変わらない時間。結局、これが落ち着いて幸せなんだな。
やっぱりこれよ。
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