愛すべき不格好なピーマン
子どもの頃嫌いだった食べ物は納豆とセロリ、ピーマン。
納豆は、彼と付き合い始めてやっと食べられるようになった。理由は彼が作る納豆オムレツ。最初作ってもらったときは「…うえぇ、本当においしいの?」と内心思ったが、食べたらびっくり。熱を通すとネバネバがなくなって味がまろやかになる。これを機に、納豆が以前よりは食べられるようになった。好き好んでは食べないけど。
セロリを食べられるようになったきっかけは、思いつき。小学校3年くらいの時だ。ある朝、ものもらいでもないのに片目が腫れていた。
その時だ。お告げというかなんというか、頭にふと思い浮かんだ。
「セロリを食べれば目が治る」と。
なぜと思うだろうが、降ってきたのだから仕方ない。早速、キッチンで朝食の支度をする母に「セロリが食べたい」と言った。朝からどうしたの?と驚くも母は素早く切って塩をかけたセロリを出してくれた。それを無心にバリバリ食べた。あれ、意外においしいかも。これを機にセロリが好きになった。
さて、残りのピーマンはというと、納豆やセロリのようなエピソードはない。好きになったのは母が作ったピーマンの肉詰め。挽肉から溢れる肉汁が絡んだピーマンは苦味が緩和されて食べやすく、あっという間にたいらげた。今では苦味も含めてピーマンが好き。生でもバリバリ食べられるようになった。
先日、西友で青々としたピーマンを買った。小島よしおが頭に浮かんだからだ。
最近の小島よしおは、子ども向けの笑いに精力的だと情熱大陸で知った。NHKの教育番組みたいに歌って踊って勉強になるパフォーマンスをしていて、それが子どもに大ウケ。商業施設のイベントには引っ張りだこで、YouTubeも人気らしい。
野菜についても歌ったりして、その中にはピーマンの歌があった。それによると、ピーマンを3個?5個?食べたら1日分のビタミンCを摂取できるとのこと。
これが妙に頭に残っていて、ピーマンを見た瞬間すぐに手に取った。
ピーマンといえばもうひとつ。
それはお尻だ。
昨年の11月からずっと仕事の繁忙期が続いている。ちょっとやそっとじゃ無理をしても体を壊さない私だが、さすがにデスクワークのしすぎでおしりが痛くなってきた。座っているだけでも不愉快で、どうしようかと調べていると、お尻のストレッチが目についた。
なになに、
お尻が痛い人はストレッチをしましょうだと。
記事によると、デスクワーカーはお尻が硬くなっているので筋肉を伸ばすことが大切とのこと。ただでさえライターで座りっぱなしなのに、11月以降は椅子とくっつくくらい座っている。これはやるしかない。
ストレッチを調べるついでに、理想とするお尻や、みっともないお尻についての記事が出てきた。
そこにあったのがピーマン尻だ。
ピーマン尻とは、脂肪が垂れて横に広がった四角いお尻のこと。理想のお尻は太ももとお尻の間に線がなく、ぷりっとした桃尻らしい。
いやいや待って。
私、線あるし。
昔からだし。
私は割と小顔のほうだが、生まれつき下半身デブでお尻も大きい。ずっとコンプレックスで見て見ぬふりをしてきたけど、太ももとお尻の間に線があるのはみんな同じだと思っていた。でも違うらしい。
そっか、このお尻は垂れているのか。
私、ピーマン尻なのか。
大きいことは百も承知だったが、みっともないお尻代表に自分が該当しているとは思わなかった。
ショックだった。
ハードワーク、運動嫌い。
多分このまま放っておいたら、ピーマンどころかカバになってしまう。
さすがにこれ以上大きくなりたくない。
こうなったらお尻も痛いし、これを機にストレッチを習慣化して、桃尻まではいかなくてももう少しマシなお尻を目指そう。
それからというもの、今は毎日「脱ピーマン」を目指してお尻ストレッチに精を出している。
「このままじゃカバになるからお尻ストレッチすることにしたの」
会話の流れで彼に話すと、彼は爆笑。
「ちょっと、真剣に悩んでるんだから笑わないでよ!」
「いやいや、冗談だよ!いいじゃん、カバさん」
彼は大して私のお尻を気にしていないよう。ましてや好きなようだ。通りすがるときには必ずと言っていいほど触ってくる。不格好なピーマン尻でも、愛でてくれる。愛すべきピーマンというところか。
彼が受け入れてくれるなら、このピーマン尻でも良いかというのが本音。自分のコンプレックスでも受け入れてくれる人がいると、不格好なピーマンでもいいかと思える。
とはいえ、やっぱりかっこいいお尻になりたいので、今日も私はお尻ストレッチに励む。
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