小説「仇討ちのブラッドフラワーズ②」~ジョジョの奇妙な冒険より

 こんばんは。私です。たいへん遅くなりましたが、ジョジョの二次創作のその②を。最後まで書き溜めて、定期的に記事をあげようと思っていたのですが、だいぶ書きあぐねていました。自転車操業です。あと2回、もしくは3回で終わらせる予定ではありますが……。なんとか頑張ります。

                                                           Ⅱ
 当座の入院費を医者にたたきつけた後、ディマイヤは「アニキ」の家に急ぎながら、彼と出会ってからのこれまでの3年間を途切れ途切れに思い出していた。

 出会ったその日から、再び「アニキ」の名前をちゃんとは聞くことはなかった。ラバー・なんとかだということだけは覚えている。これまで出会ってきた、一応は目上の悪党に呼びかけたように、アニキと呼んだら「気持ち悪い」とは言ったものの、やめろとは言わなかったので、「アニキ」と呼んだり、「アンタ」と呼んだりした。「アニキ」は、ダウンタウンを根城にする犯罪者だった。徒党を組むわけではなく、一人で悪事を働いていたのは、アニキの能力が強大だったからだ。それでどの悪党たちからも恐れられ、どの悪党たちからも恨まれていた。
「あいつらはカスだ。どいつもこいつも返り討ちにしてやった。それを見込まれてよ、どこぞの金持ちに頼まれて、暗殺の仕事をしたこともあるんだぜ」と自慢していたのを覚えている。
 
「アニキ」はイヤな奴だった。性格のいい悪党、などいるわけはないのだが、ディマイヤがこれまで出会ってきた悪党のなかでも、性悪さは頭一つ抜き出ていた。常に尊大で、意地悪で、自信過剰で、おまけにケチだった。だが、自信過剰ゆえの間抜けさを発揮することもあって、そこにつけこんで、ディマイヤは自分の能力を活かしてアニキから金品を奪ったりしていた。

 イヤな性格の「アニキ」だったが、ディマイヤの能力が自分のそれとは全く違う点には大きな関心を抱いていた。
アルファベットではなく、絵を書いて見せろ、男女に見せた時の違いはあるのか、今からお前をぶん殴る、なに、軽くだ。ぶん殴られた後に書いた文字と、元気な時に書いた文字の違いが知りたい……まるで、スパルタ教師のような熱心さだった。だが、その執着のおかげで、ディマイヤは、自分の能力について熟知し、その力を向上させることができた。ディマイヤとアニキの「研究」によって知ったその能力は、以下のようなものだった。

①  ペンで書いた文字は、見る側に意味が分からなくても、見せるだけでいい。効果を発揮するのは、見て6秒以上から。
② 見せる相手の性別は関係ない。ある程度の知能があれば、動物に見せても効果を発揮する。魚や昆虫には効き目がない。
③ 正確には、ディマイヤがこれまでに目にしたことのある「文字」を書くことによって効果が出る。絵や、意味のない線では効果が出ない。また、48時間経つと、その文字は消えてしまう。修正液などでは消せないが、48時間以内なら、ディマイヤがもう一度ペンで触れると、その文字を消すことが出来る。
④ やる気を奪い、自己嫌悪感を与える時間は最長で約5分間。アニキと出会った当初は、1分ほどが限界だったが、色々試すことにより、5倍に伸ばせた。ディマイヤの殺意や、線の強弱によって、効果時間を30秒から5分までの間、自在に操れる。
 
 「研究」を重ねる中で、ある日、ディマイヤは新たな5つ目の特徴を偶然発見した。

 その日、ディマイヤは晩飯を作っていた時にテレビに気を取られ、包丁で左手の指を切った。思いのほか深く切れた傷口から、イヤな量の血がまな板に流れ落ちる。反射的に、指を右手でかばって、右手の指に血がついた。その血を見た瞬間、ディマイヤの心に、強烈な倦怠感と自己嫌悪感が爆ぜた。出した覚えのない見えないペンが、手の中にあった。左手で包丁をつかみ、自分の首筋に押し当てようとして、なんとか思いとどまる。
 なぜ、僕がペンを出してもいないのに、ペンが勝手に出ていたんだ?混乱する自分の頭に、まず水をぶっかけた。正気を取り戻して血を極力見ないようにし、部屋を漁って包帯をみつけ、指をぐるぐる巻きにした。なんだったんだ、今のは?見えないペンで書いた文字は、ディマイヤ自身には効果を発揮しなかった。しかし、さっきの血は違った。まさか?ペンが血に反応したとでもいうのか? 

 痛いのはイヤだったが、少し時間が経ってから、見えないペンを手に出し、包帯をほどいた指に近づけて、ペン先に血をつける。そして、数字の1を書くつもりで、ペン先を紙に近づけた。しかし血のインクが紙に触れるやいなや、先ほどと同じ、強い倦怠感と自己嫌悪感が襲ってきた。まだ書き終わってないのに!ディマイヤは、慌てて見えないペンを心の中にしまった。
 どうやら、自分の血をインク代わりに使うと、効果が強化されるようだった。その強さを恐れて、ディマイヤは、「血のインク」は、自分一人の時に、数回しか試せなかった。血のインクで書くと、書かれたものは1分後には消えてしまうが、ホクロのような点だけでも効果が出てしまう。絵を描いても同じだった。5つ目の特徴。これは切り札だ。アニキには内緒にしておこう。見えないペンの、血のインクの力。ディマイヤは、それに「ブラッドフラワーズ」と名付けた。

 (続く)

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