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『三体』 劉慈欣

私は、いまだかつて、こんなにデカい話を読んだことがない。この話は時間、空間ともにとてつもなくデカい。SFで最も権威があるとされるヒューゴー賞受賞、オバマ大統領やマーク・ザッカーバーグが愛読した中国のSF小説。

相次ぐ科学者の自殺、文革時代に行われた関係者隔離の極秘プロジェクト、特殊なスーツを着ることにより体感までをも味わうことができるゲーム、そしてタイトルの「三体」とは。

ゲームデザイナーの小島秀夫さんが勧めていて、図書館の予約をしていた本がついに届いた。読み始めた私は、文字がぎっしり詰まっていて、馴染みのない外国語の名前に不安を覚える。でもその数ページ後の衝撃的な出来事に引き込まれる。そして残虐なシーンでありながら、目の前に浮かび上がるような細やかで美しい表現に心を奪われる。

十五歳の少女の胸は、なんと柔らかいことか。小銃の銃弾はほとんど減速もせずに貫通し、少女の背後でかん高い音を発した。うら若き紅衛兵は、旗とともに屋上から転落した。少女の軽い体は、空に止まるとする小鳥さながら、旗よりもゆっくりと、はらはら落ちていった。

こうした繊細な表現は作品の魅力のほんの一部でしかない。もちろん架空で、壮大な設定を、しらけさせずに読者に読ませるための仕掛けが大小様々、随所に、綿密に仕込まれている。最先端の科学についてもストーリーの鍵になっているが、決して読者を置いてけぼりにはしない。(私は科学がわからないので、真偽はわからないが)ニュートンなど著名な科学者たちが登場するゲームの設定と隠された意図、重要なシステムが存在する場所で人だけを瞬時に殺す方法など、それだけで1冊短編がかけてしまいそうな謎がてんこ盛り。だから、最後まで読み終えることができる。

この荒唐無稽な世界を作り出せるのは本ならではだと本と文章の強さを感じ、人の想像力の大きさやときめきを感じさせてくれた劉さんに感謝する。彼は発電所のエンジニアをしながらSF小説を書いていたそう。『三体』の世界はこの1冊では終わらない。『三体』は三部作の一冊目。残る二作品は2020年、2021年に刊行予定だという。その頃にはすっかりあらすじを忘れているだろうけれど、絶対に読む。

159.『三体』 劉慈欣

中国発の本格SF「三体」劉慈欣さんインタビュー 科学の力、人類の英知を信じて執筆

▼小島監督の本


2020年読んだ本(更新中)
2020年読んだマンガ(更新中)
2019年読んだ本:77冊
2019年読んだマンガ:86冊
2018年読んだ本:77冊
2018年読んだマンガ:158冊

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