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『熱源』 川越宗一

「早く面白くなってくれないかな…」とじりじりしながら読み始めたら、最後までその気持ちは変わらなかった。結論から言えば、私にはグッと来なかった。なぜか。

ロシア人と和人が争うサハリン島。古くから住むウィルタ、ギリヤーク、そしてアイヌの暮らしと文化が、ロシアや和人に蔑ろにされていく。そこに言葉を奪われたポーランド人の流刑囚が関わって…というお話。

ひょんなことからアイヌ刺繍を習い、アイヌの工芸や考えの美しさに魅了され、『ゴールデンカムイ』をはじめ関連本を読み、展示をみてきた私。アイヌについての本が直木賞、本屋大賞に選ばれたと聞いて、これは面白いだろうと書店のレジに持って行ったのだった。

私が小説に求めるものは、「没入感」と「登場人物への肩入れ」。「没入感」は読んでいるうちに夢中になって電車を乗り過ごしそうになる、現実世界を忘れる、あれ。「登場人物への肩入れ」は登場人物についつい魅了されてしまうこと。突拍子もないことをしでかす“人たらし”、もしくはあまりに辛い環境で闇落ちするのも仕方ないよね、と思ってしまう悲しい人でもいい。

この本は、登場人物が多めで「そういう選択をするのも無理ないよね」と思わされるほどには一人一人が描かれていない。それに伴い、シーンもよく変わるので没入しにくい。私にはいろいろな人や出来事を盛り込みすぎでよくわからなかった。他の人は何を面白いと思っているのか、amazonのコメントや特設サイト、著者の川越さんのインタビューを読んでみた。どうやら他の人は「スケールの大きさ」「文化とは(テーマ)」といったところに感銘を受けているらしい。そうか、色々な人がいるな、求めているものが違うんだな、と思った。私が好きな小説について考えるきっかけとなった。

157.『熱源』 川越宗一

熱源 特設サイト
https://books.bunshun.jp/sp/netsugen

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