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『ののはな通信』三浦しをん

授業中に手紙を回す、というコミュニケーションを今の女子中高生はするのだろうか。全然想像がつかない。スマートフォンでLINEをこっそり送るほうが簡便な気がする。私の時はルーズリーフなんかにどうでもいいことを書き連ねて、六角形とかハート型にかわいく折って回していたっけ。この話の主人公「のの」と「はな」は女子校に通い、授業中に手紙を回し、それでも足らずに郵便で手紙を送りあう。

頭がよくて庶民的な育ちの「のの」と外交官の家に生まれ天真爛漫な「はな」。二人は手紙を通じて交流を深めていく。そこには10代女子ならではのテンションで、好きな漫画の話や、男性教師が生徒に手を出すなんてけしからん!なんて話が綴られる。そこには恋の始まりと昂り、そして終わりも含まれる。やがて彼女たちは学校を卒業し、空白期間を経て、また連絡を取り合うようになる。

この話は二人の手紙だけで構成されているので「地」の文章がない。二人の生活の変化や心の動きをひたすら手紙で追っていくのだが、二人の人間がしっかり書き分けられているのはもちろん、書き手が同じ人間でも年齢や関係性の変化で文体が変わっていく。10代の「はな」も、40代になると、文章が大人っぽくなる。一方で、彼女の天真爛漫なところは変わらず、むしろ個性が強くなっているのを感じる。

手紙を読みながら、「この先どうなるの、無事でいて!」と不安な気持ちになったり、「あなた、見ない間にそんなことしていたの!」と予想外のことに驚いたり。ハラハラドキドキしているうちに、そばにいなくても思いあう愛の形が浮かび上がってくる。生涯でこのような相手に巡り合うことは、胸が裂けるように辛い思いをするだろう。でも喜びや人生の味わいはさぞかし深いだろう。

150『ののはな通信』三浦しをん

【刊行記念インタビュー】三浦しをん『ののはな通信』 横浜の女子高に通い互いに友達以上の気持ちを抱くふたりは、運命の恋を経て大人になってゆく。

(色々、なるほどー!だった。聖フランチェスカ、ちゃんとしろw)

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