黒占

淫夢動画を作っています。 それに関連するお話をこちらにアップします。 その為、閲覧要注…

黒占

淫夢動画を作っています。 それに関連するお話をこちらにアップします。 その為、閲覧要注意です。

マガジン

  • 文車妖妃

    夏のホラー淫クリレー'22における30日目の投稿作、『目目連の緒』のサイドストーリーです。 動画本編中には登場しなかったSZ姉貴の視点で綴られる物語になっています。

最近の記事

月すら遠く - 1(中編)

「入って、どうぞ」 「遊びに来たぜっ!」  肩を並べるようにして入って来た二人を見て、僕の意識は再び沈没した。  流石に二度目であるから意識が寸断されただとかそういう事は無い。視界がぼやけたり聴覚がくぐもったり、意識と現実の間に水中と陸上のような隔たりができた程度である。だがら、沈没というのは文字通りの意味だ。 「お、出迎えありがとうな。遠野」  立ち尽くす僕の様子に気づいた風も無く、先輩がニカリと微笑みかける。だがその先輩の笑顔すらも朦朧としたのっぺらぼうに見えた。むしろこ

    • 冬リレー没案のお焚き上げ②

       はい、第二弾です。  こちらは思いついて即刻没にしたアイデアになります。理由は簡単、色々カブるからです。そう、陰鬱なヤジュUDです。  淫ク☆投稿者のさけるチーズことヤジュUD。  引き裂けば引き裂くほど旨味が出ると言われてるヤジュUD。  不幸にすればお酒が進むとでも思われてそうなヤジュUDであります。  ……今更そんなの増やしてどうするんだ、と直ぐに思い直して没にしました。企画側の私は早期の段階で、参加者全員から制作中の動画のあらましを聞いていました。日程を作る上で参考

      • 冬リレー没案のお焚き上げ①

         お久しぶりです。淫夢投稿者の黒占です。  昨年九月より冬の恋バナ淫ク☆リレーの企画者として非常に多忙な日々を送っておりました。本当に疲れました。なんか五キロ太りました。  ……さて、サムネイルをご覧になって皆さんご存知の通り私の冬リレー提出作は激ハメ爺ちゃんと77歳の肛門モロ感の親爺という合計140歳超の二人が繰り広げるお話でした。「恋バナ」というにはいくぶん老成されたテイストにはなりましたが、「男が好きなのに仕事を続けた末他人に踏み込めなくなっていた老ゲイビ男優が、ボケ

        • 大童・二

           ───濁っている。  遠野は厭な顔をして、足元を見つめた。  轟轟と、水が流れている。  泥を巻き込み、土気色に汚れ、底はおろか水面すら見通せない。  ───これでは駄目だ。  共感には程遠い。  濁流に乗って流れ去ってゆく漂流物を眺めながら、遠野は溜息を吐いた。  何がいけなかったのか。  やはり安直であったのであろうか。  ───だがどうしても、共感したかった。  常人の論理では到底理解も及ばぬ、人道を外れた行いを働く者の感情を、理解したかった。それが困難であればある程

        月すら遠く - 1(中編)

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        • 文車妖妃
          9本

        記事

          大童・一

           海の青に、憧れる。  あの大らかな青のような、深みに至りたい。  そう思いながら生きている。  海は広い。  とてつもなく、広い。  凡百生物をその内に受け容れながら、尚その色が青であり続ける程に───広い。  仮令幾立もの墨汁をそこへ零したとして、海は相変わらず青いだろう。  そこらの水溜まり等とは規模が違う。自身は一切変わらぬまま、幾つもの内包物を泰然と受け止めているのだ。  だからこそ、憧れた。そのようになりたいと思った。  陸の生き物ですらその中に溶かしてしまえる

          大童・一

          文車妖鬼

           気がつくと私は、林の中に立っていた。  風に木の葉が擦れる音と蜩の啼き声だけが、身体を包んでいる。  昏く深い緑が、さわさわと揺れている。  ───ここは、何処だろう。  陽はまだ、完全に落ちてはいないようだ。  少し遠くに目を遣ると、木立の間に小豆色の空が開けている。  目算でおよそ数十米ほどの距離である。彼処からならば、景色が見渡せるかもしれない。少なくとも手掛かりくらいにはなるはずだ。  そう考えて其方へ歩いてみると、目下に街並みが望めた。  見覚えのある景観で

          文車妖鬼

          文車妖妃・八

           思う、という行為は心の領分だ。  情報を受容して、そこに意味を感じ、味わう。  考えるのは、脳の領分だ。  情報を整理して、その中に理屈を見出し、飲み込む。  そうして人は味わったものを飲み込み、吸収してゆく。  心の喉元を過ぎれば、如何なる美味も単なる栄養である。脳はただそれらの成分を分類し、消化するだけなのだ。  恋もまた、味わうものであるらしい。  その甘味や苦味に、私の心はずっと酔っていたのだ。一方で私の脳は、腸の奥から手を伸ばし、それを取り上げようと躍起になった。

          文車妖妃・八

          文車妖妃・七

           私は膨張を続けている。  ひと時の悲しみが胸を裂こうとも、脳はただそれを整理し、解体する。  つい先刻までの私の心に渦巻いていた激しい感情も、ここへ帰り着いた頃にはすっかり理性によって水平化され、鎮静していた。  ただ、執着だけが、ここに残っている。  つい一時間ほど前。終業式が終わった後の事である。  高校最後の一学期を終えた私は、二年前の春と同じように夕方まで学校に居残っていた。特に理由も思い当たらない。曖昧な分析を施すとするならば、それは名残惜しさのためであったので

          文車妖妃・七

          文車妖妃・六

           心が内へ閉じこもったまま膨らみ始めて、二年が経った。  それだけの時間が経てば、流石に情報も増える。あの日教室で私が見たあの子は、水橋譲花という名前らしい。手紙を書き始めた時はあんなにも知りたかった事だというのに、不気味なほど感情が動かなかった。ただ、綺麗な名前だな───とだけ考えた。  彼女───水橋は、文芸部に所属していた。あの夏休みに一緒に居た二人の男もその一員であったようだ。  私が入学した当初、文芸部は上級生が皆卒業してしまったために水橋以外一人も部員が居なかった

          文車妖妃・六

          2022/9/5現在の制作予定(動画編)

           またお会いしましたね。  黒占です。  今回は小説編に引き続き、債務もとい制作予定の動画について紹介していこうと思います。  では早速─── ①目競の鏡  リレー企画での拙作『目目連の緒』の正当続編です。  前作で発生した事件をキモオタ平野、GO、そしてもう一人の視点で描いたのち、事の顛末や真相にも触れていきます。  主人公はキモオタ平野です。この事件を皮切りに彼は、“目”に関係する新旧様々な怪異にまつわる事件に巻き込まれていく───という予定になっています。  そ

          2022/9/5現在の制作予定(動画編)

          2022/9/5現在の制作予定(小説編)

           こんにちは黒占です。  リレー企画が終了し、着々と参加者の方々から舞台裏のお話が明かされていく昨今。筆者には非常に困った事があります。  あとがきが、書けないのです。  せっかく夏のリレーを終えて自由の身になったかと思いきや、普通に今後出したいものが多すぎてマジ狂いの淫獣になっています。  そういうことで……  こちらに今後制作する小説および動画のアイデアをまとめ、筆者自身の頭を整理すると共に小規模ながら読者視聴者の方々への予告とさせていただきたく思います。  それで

          2022/9/5現在の制作予定(小説編)

          文車妖妃・五

           手紙を外に持ち歩いたその日。  私は夕方になって、ようやくあの子を見に行った。  日が傾くまで、どうにも事を起こせなかった。何となくそれは、無粋な事であるように思えた。なるべくあの時と同じ状況が良い。夕陽の下で、もう一度彼女の麗しい顔を垣間見たかったのである。  あの時ほどでは無いにしても、また夕焼けが赤く教室を覆っていた。  私はつい先週と同じように、素知らぬ顔を装って一年B組に這入った。  彼女は、居なかった。  私は、少し動揺した。  勿論そういう可能性も考えなかっ

          文車妖妃・五

          文車妖妃・四

           空虚が満たされた日の夜。  ひとしきり恋の余韻に酔い痴れた私は彼女に手紙を書いた。文字通りの恋文である。  心という器に満ちるどころか溢れ出んとするそれを、ただ何処かに吐き出さなければならないと思ったのだ。  便箋を引っ張り出し、亡き祖母の遺品であるこの文机に向かい。思いつく言葉を何とか繋がるように並べて、一つの文章にしてゆく。  幼い頃に亡くなった私の祖母は筆忠実な人で、たくさんの人と文通をしていた。当時はそれほどすごい事には思えなかったが、いざ実際に書いてみるとこれが中

          文車妖妃・四

          文車妖妃・三

           私の中の空虚は、程なくして埋まった。  ある土曜日のことである。  平日はいつもすぐに学校を出る私だが、土曜だけは夕方まで帰宅しない。  土曜は午前で放課となるので、昼食を食べに帰宅する者がほとんどだ。  外には人が多いから、あまり帰りたいという気持ちが湧かない。逆に校内は人が少なくなるので、気に入っている。私にとって休日とはもはや外界の者達と顔を合わせずに済む時間───という意味の言葉になっていた。  だから土曜は購買の惣菜パンで適当に昼を済ませ、夕方まで居座る。  空

          文車妖妃・三

          文車妖妃・二

           初めに、空虚があった。  鑑みるに執着とは、空虚から生じるのだろう。  私が学生生活そのものに魅力を感じられなくなったのは、高校入学から間も無い頃の事である。以来現在に至るまで、私はずっと帰宅部のままだ。  何故そのような事になったのか。自分自身の心の動きには、今も合点が行っていない。  入学前。  私は、これから始まる高校生活の放課後をどんな風に送ろうかと夢想しては、浮き立つような悩みに耽っていた。  そんな心持ちが続くままに入学式を終えると、響きに惹かれたものから順に

          文車妖妃・二

          文車妖妃・一

           それはきっと、執着なのだ。  私───葵鈴は、そう考えた。  愛とか恋とか、そういうものとは違う。  それらはあくまで執着の一種に過ぎない。  私はただ、胸中に宿った呼称を知らぬ別種の執着を、恋愛感情と見誤ったに過ぎなかったのだろう。  狭いながらも不自由の無かった、四畳半の自室に私は居る。  文机に両肘をつき、上半身の重みを預ける。天板と胸の間に、湿気を濃く帯びた不快な空気がべたりと滞留する。ひどく鬱陶しいが、動く気にもなれない。どうせこの季節は、何処に居てもそうなるの

          文車妖妃・一