月すら遠く - 1(中編)
「入って、どうぞ」
「遊びに来たぜっ!」
肩を並べるようにして入って来た二人を見て、僕の意識は再び沈没した。
流石に二度目であるから意識が寸断されただとかそういう事は無い。視界がぼやけたり聴覚がくぐもったり、意識と現実の間に水中と陸上のような隔たりができた程度である。だがら、沈没というのは文字通りの意味だ。
「お、出迎えありがとうな。遠野」
立ち尽くす僕の様子に気づいた風も無く、先輩がニカリと微笑みかける。だがその先輩の笑顔すらも朦朧としたのっぺらぼうに見えた。むしろこ