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冬リレー没案のお焚き上げ②

 はい、第二弾です。
 こちらは思いついて即刻没にしたアイデアになります。理由は簡単、色々カブるからです。そう、陰鬱なヤジュUDです。
 淫ク☆投稿者のさけるチーズことヤジュUD。
 引き裂けば引き裂くほど旨味が出ると言われてるヤジュUD。
 不幸にすればお酒が進むとでも思われてそうなヤジュUDであります。
 ……今更そんなの増やしてどうするんだ、と直ぐに思い直して没にしました。企画側の私は早期の段階で、参加者全員から制作中の動画のあらましを聞いていました。日程を作る上で参考にするからです。そこでもう、いっぱいそういうの見たんです。
 ここで念のため誤解を避けるため言っておきます。一人一人には個性があっても、一度全員一箇所に集めてしまうとどうしても似たり寄ったりに見えてくるもんなんです。ましてそれらを順番に並べるとなると尚更です。そうです、けして投稿者の方々が悲恋趣味な人ばかりだとかそういう問題ではありません……
 実際筆者自身もこうして、そういうアイデアがあった訳です。機会があったからこそ、皆そういうものを作りたかったんだと思います。淫クで切ない恋愛モノなんて、滅多に作れるような話じゃないですから。いや、別に悲恋に限った話でもなく、きっと皆さん機に乗じてやりたいことをやっただけなんでしょうね。

 ではこれ以下、本題である没案の詳細について触れていきます。

没案『ノケモノ』について

 サムネイルは真っ黒の背景に野獣先輩の顔をアップにしますかね。右半分は普通の先輩で、左半分が今田耕司先輩になります。右側の先輩は涙を流しているのに対し左の今田はいつもの鉄面皮です。

 次回予告BGMはいきものがかりの『くちづけ』の前奏部分がいいかな。昼ドラ感凄いんですよねあの曲。普段CMとかで使われてる曲とは全然雰囲気違うので面白いですよ。今はもう脱退してしまいましたが、山下穂尊が作詞を担当した曲はかなり普段のイメージと毛色が変わるんです。

 そしていよいよストーリーについて。一言で言うと、「DV男が迎える、当然ながら救いのない結末」の話です。
 この話では、残念ながら野獣は恋人のUDKに常態的に暴力を振るいます。何故かと言うと怖いからです。虚栄心が強いぶん自己肯定感が低く、UDKから見放される事をずっと怖れているんです。そのため、ほんの些細なことからUDKの心が離れていく可能性を疑い、彼女に手を上げる事でその不安を解消しようとします。まぁ典型的な人間の屑です。しかしながら、この話を野獣視点で進めることで彼の不安や後悔はたまた自嘲などをなるべく伝わりやすいように描いていきます。
 職場では後輩の遠野が相談相手になります。悩みをかなり深い所まで打ち明け、どうにか自分の悪癖を治そうとします。しかしそう決意する度にあっさりと気分が変調し、失敗に終わります。悪循環です。
 ここまでが序盤です。そこから事態は急変します。まぁ当たり前と言っちゃ当たり前の展開ではありますが、UDKの心が限界を迎える訳です。言動が変わり始め、外出が増えます。問いただしても不気味な笑みを浮かべるだけ。訝しんだ野獣はある日、わざと職場を早退して帰宅します。幸か不幸かその日は───遠野が休暇をとっていた日でした。
 家に帰ると男性用の靴が一つ。既視感のある見た目に胸騒ぎを覚え、物音のする寝室の方へ行くと……裸体をゆらゆらと蠢かす男女二人の影がありました。下に居たのは遠野。UDKは彼の上に跨り、夢中で動いています(たぶんここデバイス規制ポイント)。暗がりに目が慣れ始め、UDKの表情が少しづつくっきり見えてくる感じを描写します。彼女は蕩けた笑みをずっと浮かべていました。その顔を見た野獣は思わず大きな物音を出してしまい、二人に気づかれます。ですが二人の動きは止まりません。
 こっからが割と性癖ポイントです。
「先輩がUDKさんを愛してるのは分かってます……でも人を不幸にする愛なんて無い方がマシだ」
 そう詰る遠野に対して、UDKは一向に野獣の事を意に介さぬまま、
「うん、そんなのいらないからもっとうごいて。きもちよくして?」
 と遠野を誘惑します。
 UDKも野獣が自分を愛してくれている事など知っていました。だからこそ、苦痛を伴う愛よりも快楽の方がよっぽど彼女の心を満たしてくれるのです。
 野獣は逆流を起こす喉元を何とか抑えながらその場を立ち去り、職場からも姿を消します。
 で、終盤です。はい、引き裂かれた後が問題なんです。野獣はボロアパートに転がり込み頽廃的な一人暮らしを始めますがすぐに限界を迎え、麻縄の用意を始めます。縄を結び、椅子を置き、解放までもう間もなくという所に来て人生を振り返ります。 
「もし、ああなる前に自分が変われていたら……」
 後悔ばかりが胸を去来し、いつしか追想は妄想となります。
 UDKと共に送るはずだった未来。
 もう決して叶わぬ幸福なひととき。
 過去の美しい思い出たちのリフレイン。 
 それはあまりにも尊く眩しく、たとえ現実に有り得ぬものだとしても───いや、だからこそ荒廃した野獣の心に幸福感をもたらしていきます。そして現実に立ち返った時、野獣はこう思います。
「まだ死にたくない。たとえ空想でもこんなに幸せな気持ちになれるなら生き続けたい」
 野獣はたった一人でも幸福に生きる方法を考えつきました。……というよりそもそも彼に恋人など必要無かったのです。誰かと一緒に暮らしてその人を傷つけるより、何もかも自分の頭の中で完結して勝手に幸せを味わう方が誰にも迷惑をかけなくて済むんですから。
 彼は、自分は孤独になるべくしてなった「ノケモノ」だったのだと気づき、誰も居ない部屋で哄笑を上げます。
 そしていよいよラストシーン。ここは結構ふざけてます。
 バットマンのマスクを被った男が、面接に向かいます。ホモビのモデルを募集していたためです。バットマンが部屋に入ると、紺のTシャツに白の半ズボンを着たラフな格好で眉間にイボのある色黒の青年が腰掛けています。
「じゃあまず、年齢を教えてくれるかな?」
 青年はあっけらかんとした態度で次々質問に答えていきます。しかし、ある質問をした瞬間、彼に異変が起きます。
「彼女とかいるの?」
「……今はいないです」
「いつまでいない?」
「こ───」
 彼、野獣は言い淀みます。今日の日付を忘れていたのです。
 今はもう夏。でなきゃこんな寒そうな服着ません。思い出と妄想に浸るような頽落的な日々を送るうち、いつの間にか冬も春も終わっていたのです。そう、彼女───UDKが彼から離れていったのは。
「───去年ですね」
 野獣は小さく照れ臭そうな笑みを浮かべました。その笑顔にはもう、後悔も自嘲もありませんでした。

 ……以上です。悪趣味でしょう。
 結局何をしたかったのかというとですね。

 「恋」は一人でも成り立つ。が、
 「愛」は二人いなきゃ成り立たない。
 一人よがりの「恋」を比翼連理の「愛」へ育むのが「恋愛」なんだ。
 それができなきゃ、ずっと自己完結の「恋」でいいだろ。

 というテーマをだったんですね。
 やっぱりなんかちょっと酷い気がする。 
 もう少しなんというかこう……手心というか、たどころというか。
 何にせよ作らなくて良かったなぁと思います。

 ここまで長々とした妄想にお付き合いいただき、ありがとうございました。
 それではまた。

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